■付き合い10年、同棲5年の夫婦みたいなカップルが結婚することになりました。でも、そこからが大変!!式場確保に披露宴、招待客……。思い描いてた穏やかな結婚生活はいったいどこへ!?笑って、泣いて、時にはケンカして……。室たたが贈る4組の恋人たちの物語。





 プチコミの室たた先生の新刊です。プチコミの作品をご紹介するのはだいぶ久しぶりな気がするのですが、別媒体で名前を出さずに作品紹介をしており、そちらでは結構取り上げていたりします。学生時代などはプチコミの作品を読んでもそんなに面白いと感じていなかったのですが(失礼)、社会人となり、付き合って別れてを経て、結婚なんてものを意識したりするようになると、俄然作品に面白みが生まれてくるから不思議。なんとなくですが、プチコミの作品は全般的に、読者の人生経験や恋愛観みたいなものが、作品の面白さにプラスされる構造になっているんじゃないかと感じています。そんな中でも個人的にお気に入りなのが、室たた先生のお話。読み切りメインなのですが、とにかくその幸福度が高い!


 本作は、表題作をはじめとして計4話が収録されています。それぞれ少しずつあらすじをご紹介しましょう。
 デパートの催事企画部の所属は2人だけ。社内一やる気のない部長と、最近配属されてきたこれまた変わり者な若手女子社員が、まさかの朝チュン!?というところからはじまる「社内恋愛(仮)」。付き合い10年、同棲5年の夫婦みたいな熟年カップルが、いよいよ結婚しようと決意するも、結婚準備のドタバタは想像以上で…という「ウェディング戦記」。父から引き継いだ実家のカフェに雇い入れたのは、かつての憧れの彼で……という「くすり指に愛の歌」。母が死に、天涯孤独になるはずが、政略により親子ほども歳の離れた人と夫婦になることになる「罪と性戯」。


 個人的なお気に入りは表題作の「ウェディング戦記」。熟年カップルがいよいよ結婚するとなり、色々と結婚の準備を進めるのですが、あれやこれやと口出しをしてくる親や親戚の存在であったり、互いに仕事をしている中で、準備に追われてイライラしたり、準備に協力的でない相手に当ってしまったり、いわゆる“結婚式あるある”を題材にしたような作品です。





仕事をしながらの結婚式準備というのは本当にストレスフルなようで、私の周りの既婚者の話を聞いても、「大変だなぁ」と。まずやる・やらないで揉めて、どこでやるか揉めて、幾ら出すか揉めて、何をやるか揉めて、誰を呼ぶか揉めて、準備で揉めて……揉め事の嵐です。でもそれらを全部吹き飛ばすぐらい、結婚式ってのは素敵なものなんですよね。そんなすれ違いや、その先にある幸福感が短い中にギュッと詰まった良作です。なんて分かったように語っている私は、そういう諸々が煩わしすぎたので、海外婚で済ませました。




 もう一作のお気に入りは、「社内恋愛(仮)」。やはり室たた先生は、職場恋愛ものが良いです。37歳、やる気のない独身部長・佐渡と、ひょんなことから一夜を共にしてしまった、部下の24歳・印藤。二人が所属する催事企画部は、他に誰も所属をしておらず、気まずいったらありません。けれどもいつもやる気が無くダウナー系な佐渡と、無表情で落ち着いている印藤の二人、意外にも場が乱れることも無く、不思議な関係を保ったままに日々が流れていきます。互いに内面を見せないままに、なんとなく寄り添う二人の距離感の心地よさと、最後に一転感情をガッと出すムズ痒さが印象的なお話でした。





この脱力した感じが魅力的。歳上男性との恋愛的な何かが続きます。




 「くすり指に愛の歌」はちょっとベタすぎてって感じなのですが、こちらも幸福度が高い作品で、最後はなんだかんだニヤニヤしているという。「罪と性戯」は、タイトルとは裏腹に、そんなにエロい内容は無いです。ごくごく普通の女子高生が、母の死を機に、茶道の家元の一人息子である22歳も歳上の男性と夫婦になるという内容なのですが、妻らしく振る舞おうと無理をする女子高生に対して、そんなことは望んでいないととにかく優しく接する相手役の優しが沁みる物語。包容力だとか、大人の余裕だとか、その合間に見せる照れや慌てる様子の可愛らしさだとか、流行りの枯れ専の流れを汲む作品と言えるでしょう。



【感想まとめ】
驚くような急展開や一発は無くとも、高め安定で幸せなお話を供給し続けるというような漫画家さんで、本作もきっちり期待通りの内容でございました。



作品DATA
■著者:室たた
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:プチコミ
■全1巻



ためし読み