■へんな人と暮らしはじめた。
少女小説家の高代慎生(35)は姉夫婦の葬式で遺児の朝(15)が親戚間をたらい回しにされているのを見過ごせず、勢いで引き取ることにした。しかし姪を連れ帰ったものの、翌日には我に返り、持ち前の人見知りが発動。慎生は、誰かと暮らすのには不向きな自分の性格を忘れていた……。対する朝は、人見知りもなく”大人らしくない大人”・慎生との暮らしをもの珍しくも素直に受け止めていく。不器用人間と仔犬のような姪がおくる、年の差同居譚、手さぐり暮らしの第1巻!





 ヤマシタトモコ先生のフィーヤン新連載になります。35歳の少女小説家と、15歳の姪の同居物語。少女小説家をしている高代慎生の姉が事故で亡くなったとの連絡があり、向かってみるとそこには一人遺された娘・朝の姿が。悲しむ様子も無く、ただただ実感が湧かない様子の彼女に対し、自分なりの言葉をかける慎生。その後葬儀の場で、親戚達から敬遠される様子を見て、勢いのままに朝を引き取ることに決めた慎生でしたが、人付き合いがそこまで得意でなく人見知りな性格が災いし、すぐには距離が縮まりません。それでも他に行くあてもない2人の風変わりな同居がはじまるのですが……というお話。



急にはじまった同居生活。慎生は朝に対して耳障りの良い言葉はかけないし、なんなら「あなたを愛せるかどうかはわからない」とまでハッキリ言う。けれどだからこそ、信頼できるとも言えるのかもしれません。


 おばの慎生は、少女小説家というメルヘンな仕事をしているものの、その風貌は男性のようでいて、生活も大雑把。人付き合いも得意な雰囲気はありません。一方で発する言葉は一本芯が通っていて、綺麗事で取り繕うようなこと無く、彼女なりの哲学によって形成されており、それが姪・朝の心に響いている様子。その佇まいも相まって、強くカッコよく映るのですが、その生活力の無さと人付き合いの苦手っぷりが可愛らしくもあるという、素敵な人です。


 姪の朝は慎生とは対照的に、コミュニケーション能力に長けた女の子。初対面の人でもすんなりと話せてしまう、他人に対してバリアを張らない脱力系のキャラクターです。親を亡くしたものの今ひとつ実感が湧かないまま、時折言いようのない孤独と虚無感に襲われるという。生活力は慎生よりもあり、掃除が好き。この子はこの子で慎生とは違った面白い性格をしており、タイプが異なれど良いコンビだなぁという印象があります。


 淡々と日々を描くタイプの物語で、何か大きな事件や出来事が起きたりはしません。そもそも動きが少ないのですが、その中で交わされる会話や思考の一つ一つにしっかりと輪郭と質量がある印象で、めちゃめちゃ面白いんですよ。会話も細切れだったり、完璧に噛み合っているわけではないのですが、その噛み合わなさとか間の合わない感じが実にリアル。独特の台詞回しであったり、言葉足らずで詰まったり、そのスムーズでない感じも含めて全て巧妙にデザインされている感がすごいです(褒めてます)。


 会話と同時に、物語の中で重要な役割を担うのが料理と食事。恐らく意図的に入れてるんですかね、各話必ず登場するような気もします。それも必ず温かい食べ物であるというのも、恐らく意図してのこと。一緒に料理を作ることで距離を縮めたり、相手のことを思って料理をしたり、会話はなくとも食は進んだり、料理は作れなくとも温めることで慮っていることが伝わったり……。言葉にならない部分を、これによって補っている印象です。先述の”会話”とともに、”温かい料理”に見所ありです。



料理をしながらおしゃべり。他愛のない会話でも相手のことを知れるし、会話が積み重なるほどに互いの距離が縮まるといいますか。


 この2人だけでは物語も味気ないので、何人か脇役が登場するのですが、それぞれ良いキャラでいい味出してます。いずれも慎生の知り合いなのですが、友達の醍醐奈々はテンション高く相手のパーソナルスペースに入っていけるコミュ力の塊みたいな人で、一緒に暮らしはじめてまもない2人の距離を縮めることに一役買います。また慎生の元恋人である笠町信吾は、いじりがいのあるいい人といった感じで、慎生との喫茶店での一幕は軽妙でありながら重みもありと、1巻の中でもお気に入りのシーンでした。どちらも、朝の前では保護者然としてしまう慎生の本音や弱音を引き出すのに一役買っています。


 物語は割と飛び飛びで進んでいくので、そこまで長期連載という感じにはならないのではないでしょうか。冒頭のお話がラストというかゴール地点のような描かれ方をしており、ある程度後ろが見えており、そこから考えても……というところです。ともあれ非常に面白い作品だと思いますので、オススメです。



【感想まとめ】
すごく無防備な感想ですが、面白かったです。今年読んだ新作でも結構上位に来る感触。おすすめです。



作品DATA
■著者:ヤマシタトモコ
■出版社:祥伝社
■レーベル:FC Swing
■掲載誌:フィールヤング
■既刊1巻



ためし読み