■深い森の奥の奥『死神の森』を訪ねた少女の願い。それは「死神に自分を殺してもらうこと」。けれど、彼女の祈りに、死神の青年は答えた。「結婚して、子供を産み、その子を育て終えるまでは殺さない」。それなら、と少女は言った。「ならわたしを、あなたのお嫁さんにして……あなたに殺されるために」。椿カヲリが紡ぐ、死にたがりな少女と死神の、小さな恋物語。





 椿カヲリ先生の新連載です。森の奥に住む「死神」と呼ばれる男。何処から来たのかも、いつから居るのかもわからず、人とは一切関わらないで、ただひたすら「棺」を作っているらしい。人の形はしているけれど、その瞳は人ならざる者の目をしている。そんな男のもとに、ある日一人の少女がやってきます。母と父を失い、次は自分だから、私のために棺を作ってほしいという彼女の瞳は、絶望に打ちひしがれたように生気がありません。しかし男は彼女に、「誰かの嫁さんになって子供を生んで、立派に育て終えたころでないと死ねない」と告げ、追い払おうとします。しかし食い下がる少女は、「今からわたし、あなたのお嫁さんになってもいいですか?」と提案をして……というお話。



「死ぬために生きる」ことを決め、死神に求婚。ベタ目がとっても特徴的な幼女です。


 以来、このひとの寄り付かない森に、少女は毎日通い、男の家に入り浸るようになります。まだ満足に字も書けないような幼い少女ですが、男の嫁になり、そして棺を作ってもらうという決意は固く、一切揺らぐことはありません。懐かれた側の男からしたら仕事にも集中できず非常に鬱陶しいという様子なのですが、その頑なな思いを前に、段々とその心を許していきます。死にたがりの少女と、死神と呼ばれる男という、なんとも暗い雰囲気のカップリングですが、丸めると年の差カップルを見守るというニヤニヤ度の高い組合せなんですよね。ちょいちょいとそういった描写があり、微笑ましくその様子を楽しむことができます。



自作の婚姻届。子供ゆえの純粋さと勢いについつい気圧されてしまい、いつも彼女のペースに。こういったやりとりが頻発して、なかなかニヤニヤできるシーンが多いという。


 男の職業はその通り棺職人で、「葬儀屋」と呼ばれる男の依頼によって、その人(故人)に最適な棺を作り上げます。「人ならざる者」という表現がありましたがその通りで、男には特殊な力があり、いわゆるファンタジー作品に分類されるでしょう。全体的に説明が省かれており、全容は明らかでないのですが、細やかな設定はそこまで必要でなく、男の出自や少女との関係に関連があるようなものが、今後小出しで出てくるのではないでしょうか。


 1巻では出会いから心の通わせ合いが描かれ、1巻ラストでは少女が成長し、中学生ぐらいに。物語の設定からも、恐らく少女が成長し、死ぬまで(もしくは真に生きることを決めるか)の過程が描かれるのではないかと思いますが、その中で男がどう思い行動していくのか。このマウント取ってるように見えて、結果少女に振り回されまくっちゃう歳上の男の可愛さみたいなものが、さり気なく、けれども確かに凝縮されていて、個人的にポイント高いです。あと何より少女が可愛い(結局それか)。



【感想まとめ】
説明も少なく、色々と察しながら読まないといけない部分は多いのですが、このカップリング・雰囲気は好きです。表紙の絵柄と良い質感と良い、オススメは出来ずともお気に入りになりそうな一作です。気になる方は手にとってみてはいかがでしょうか?



作品DATA
■著者:椿カヲリ
■出版社:KADOKAWA
■レーベル:シルフコミックス
■掲載誌:シルフ
■既刊1巻



ためし読み