■かつて大きな賑わいを見せていた、老舗呉服店「三つ星」。その三男・星乃虎三郎が、三年ぶりに英国から帰国した。新しい「三つ星」を作ろうと意気込むものの、店の者からはまったく歓迎されず、変わらず優しいのは、長兄の存寅だけ。一方、虎三郎を知っているらしき、謎の男・鷹頭も、「三つ星」再建のため、独自に動いており……。時は明治末。さびれた老舗呉服店に新風を巻き起こす、男たちの物語……。





 日高ショーコ先生によるYOU連載作です。舞台は明治の末期、日本橋。老舗呉服店・三つ星の三男坊である虎三郎が、3年の海外渡航から帰国したところから物語は始まります。日本にも西洋文化が勢いをまして流入する中、呉服店の三つ星は岐路に立たされていました。国内景気は不況で、店は以前とは打って変わって重苦しい雰囲気。海外での経験を活かして、新しい「三つ星」作りに着手しようと意気込んで帰国したものの、聞いていた新店舗の開店はお流れになっており、それどころか虎三郎の居場所すらないような状況でした。そんな彼に手を差し伸べてくれたのは、昔から優しかった兄・存寅と、共に海外で過ごしたお坊ちゃま・鷹頭で、、、というお話。


 西洋文化が流れ込む明治期において、海外帰りの青年が低迷する呉服店で新たな時代を切り開いていくというお話。色々としがらみや制約も多い中、前を向いて逞しく立ち向かっていく姿を楽しむという作品です。なんとなくTBSの日曜21時のドラマ枠と相性が良さそうな雰囲気と言えば、なんとなく方向性は掴んで頂けるのではないかと思います。女性誌での連載作ながら、恋愛ではなく仕事がメイン。BL作品も多く手がけている先生ですから、別に恋愛に倒さずとも、麗しい男性たちが一生懸命であればOKという感じなのかも。



虎三郎。信念を持って、真っ直ぐ前を見据えて、新しい三つ星を作るために邁進する。


 主人公の虎三郎は呉服店の三男坊ということで、勝手ワガママなお坊ちゃんでしたが、3年に渡る英国生活で見違えるように真面目に生まれ変わりました。生意気さは抜けないものの、しっかりと先を考えて行動出来る、バイタリティに溢れる青年です。従業員からは疎まれつつも「新しい三つ星を作る」という信念は曲げず、這いつくばりながら日本での仕事に従事するのでした。


 三つ星は経営的に良い状況では無く、経営権のある兄・存寅も居て居ないようなもの。実質的に、番頭の五百雀が取り仕切っているといった状況です。そんな状況で、店の資金を使い海外遊説していた虎三郎への風当たりも当然強く、経営一族でありながら、虎三郎とはのっけから対決姿勢という感じ。一方の存寅は3年の間にひどく人が変わったようで、全く経営に携わらないどころか、何やらたくさんの借金をして本や色々なものを買い漁っている様子。前と変わらず優しいものの、その裏には何か重大な隠し事があるような、不穏さが感じられます。


 そんなボロボロな三つ星の内部事情とは切り離されたところで、一人勝手に行動しているのが、虎三郎と共に海外暮らしをしていた、謎の男・鷹頭。外国人のような長身で、身に付けている服はどれも超一級品というお金持ち。その彼が、どういうわけか勝手に新たな「三つ星」の店舗を借り、着々と開店の準備をしているという。その意図や背景は1巻時点で一切の謎。とはいえ彼と組まないと改革は出来ず、また切り替えの早い虎三郎はすぐに状況を呑み込み、彼と共に新店の出店に向かっていきます。



女性も登場しますよ。新店の従業員としてスカウトされた、傘屋の娘・時子。彼女もまた、今後の物語の中で重要な役割を担いそう。なお1巻では恋愛のれの字も登場しません。


 なんというか、色々と虎三郎の視点からは見えていないことがあり、彼の考えが及ばないところで色々と物事が進んでいるという状況が1巻では非常に多い。やがてそれらの背景が明らかになり、点が線でつながっていくのかもしれませんが、そこら辺を気にせずに読み進められる人でないと結構詰まってしまうかも。とはいえ色々と練られていそうであり、また明かされない時点でも相応に読み応えがあり、続きが非常に気になるところです。見せ方が圧倒的に上手いというか、惹き込まれるものがあります。



【感想まとめ】
どこまで骨太な物語になるのか気になる所ですが、期待感は高いです。おすすめ。



作品DATA
■著者:日高ショーコ
■出版社:集英社
■レーベル:愛蔵版
■掲載誌:YOU
■既刊1巻



ためし読み