今年もやります、毎年恒例のまとめ記事。いつも通り、完結作編と、継続作編の2記事をお届け。まずは完結編からです。うだうだと前置きをするのも面倒なので、早速いきましょう。


ではではどうぞ……




1.田村由美『7SEEDS』(全35巻)

……「このマンガがすごい!」「それどこマンガ大賞」では散々『スタンドバイミー・ラブレター』を推したわけですが、こっちでは『7SEEDS』という、知っている人からするとツッコミが来そうなピックですが、いや、ああいう年単位の企画はどうしても巻数の多い作品はプッシュしづらい側面がありまして……。10年以上の連載を終え、ついに7SEEDSが完結を迎えました。途中で緩むことなど一切なく、最初から最後まで全速力で駆け抜けました。傑作中の傑作、SF少女マンガの金字塔と言っても過言ではないでしょう。クセのある絵柄とこの巻数に、未読の方は一瞬読むのをためらうかもしれません。でも大丈夫、ひとたびページをめくれば、たぶん「次も……次も……!」と、あっという間に全巻読みきってしまうことでしょう。退屈な正月特番で時間を浪費するぐらいなら、『7SEEDS』を読みましょう!




2.増田里穂『スタンドバイミー・ラブレター』(全1巻)

……「このマンガがすごい!」「それどこマンガ大賞」でも推させて頂きました。2017年に読んだ少女マンガの中で、一番爽やかで、一番青春の匂いを感じた作品がこちら。そこかしこでプッシュする文面を書いているので、こちらでは多くは語りませんが、表紙といい、物語中に詰め込まれているイベントといい、そこで描かれるドキドキ感(高揚感)といい、そのどれもがツボりまくりでした。ものすごく純粋な気持ちで心ときめいたのですが、この感覚はあれだ。『耳をすませば』を観た時の感覚に近いかもしれません。この表現で私が伝えんとするニュアンスが分かる方は、是非に手にとって頂きたい一作です。

断った瞬間、恋に落ちるなんて。 -増田里穂「スタンドバイミー・ラブレター」



3.森野萌「おはよう、いばら姫」(全6巻)

……継続作編で1位に挙げたのも、もう2年前なんですね。私の想いとは裏腹に、誌上では思いのほか爆発した印象のなかった本作ですが、コツコツと物語を積み重ね、描くべきことを描き切り、6巻で無事完結を迎えました。男子高校生・哲が、家政夫のアルバイト中に病気療養中だというお嬢様・志津と出会うことではじまる物語。男主人公かつ、多重人格的なファンタジー設定を持ち込んでいる、デザート(掲載紙)のイメージからはかけ離れているような内容の作品でした。悪人が登場することはなく、その誰もが相手を思いやるような、優しい世界の上で、物語は繰り広げられます。恋愛一辺倒になりがちな女性向けマンガの中で、「家族愛」や「人間愛」「友情」みたいなものまで含んだ、愛に溢れた物語が紡がれました。読んだあとは、心洗われたような感覚になる、万人にオススメできる一作です。

互いに救われ、救い合う、素晴らしい物語でした。 -森野萌「おはよう、いばら姫」6巻



4.中村明日美子「君曜日」(全3巻)

……全4巻なのか、3巻なのか悩むところですね。『君曜日3 鉄道少女漫画4』という数え方になっているのは、鉄道をテーマにした短編集『鉄道少女漫画』から生まれた作品だから。鉄道が好きで内気で静かな女の子・アコちゃんと、そんな彼女が好きな元気一杯な男の子・小平という、凸凹コンビが送る鉄道恋物語。実にゆっくりとした刊行ペースで初登場から7年、ようやく2017年、完結を迎えました。最終巻は、内気なアコちゃんが自分の気持ちを自覚し、勇気を持って想いを伝えることが見所となるわけですが、そこに至るまでの脇役の女性たちのアシストが素晴らしすぎです。特にライバルの持田さんは、最初から最後まで報われない様子が切なすぎて、毎回泣かされてしまいます。

2人の恋の終着駅は…? -中村明日美子「君曜日3 -鉄道少女漫画4-」



5.池辺葵「ねぇ、ママ」(全1巻)

……『雑草たちよ 大志を抱け』の方が、「このマンガがすごい!」でランクインしていましたが、個人的にはこちらの方が俄然良かったです。”母”をテーマに描く読み切り集。一口に”母”と言っても、その捉え方や描き方は様々で、本作でも色々な”母”を目の当たりにすることができます。母親をまさに真っ当している者、母親を卒業した者、また母親に思いを馳せる子供……。そんな様々な母親像を、これまた明るいものから静かなものまで、幅広く描いていきます。どの物語も味わい深くて、ハズレが一つたりとも無い。どれも悲しみや切なさ、やるせなさの奥にほんのりと希望が見える味わい深いストーリーで、池辺葵の奥深さを存分に堪能することが出来ます。

6人の母親たちの孤独と幸せを描く芳醇な物語 -池辺葵「ねぇ、ママ」



6.勝田文「マリーマリーマリー」(全6巻)

……思い切りの良さが素敵な鍼灸師のリタが、往診先で出会った自由気ままなミュージシャン・森田と奏でる結婚狂想曲。喜劇調で転がり続けるドタバタラブコメディで、とにかくそのテンポの良さと、溢れんばかりの幸せっぷりが愉快痛快。結婚というテーマを扱った作品は数多くあれど、ここまで明るく楽しく幸せな、まるでミュージカルのように読者を魅了する作品は他にはないでしょう。勝田文先生の作品はどれも面白く素敵である一方、世間での認知度はあまり高くない印象なのですが、この人の作品を知らずにいるというのは絶対に損だと私は思っていますので、『マリーマリーマリー』じゃなくてもいいから、とりあえず一冊何か手にとってみて頂きたいところです。




7.縞あさと「魔女くんと私」(全1巻)

……今年出会った新人漫画家さんで一番印象的だったのが、縞あさと先生でした。女の人が苦手な転校生・真白くんが魔女であることを偶然知ってしまった、明るく人懐っこい性格の女の子・凪との関係を描いた、ファンタジーラブストーリー。この物語のポイントは、男の魔女は女の子に触れないと魔法が使えず、しかも女子アレルギーな真白くんは、女の子に触れられるとその力が暴発してしまうという、厄介な体質の持ち主であるというところ。自ずと身体的接触が増える設定で、かつ互いが触れる(触れられる)時の反応が可愛いのなんの。自然とニヤニヤがこぼれてくるような作品です。なんならこの物語の続きを見たいところではあったのですが、1巻完結。で、次に投入してきたのがこれまた圧倒的コンセプト勝ちな『君は春に目を醒ます』ってんですから、素晴らしい。こちらは継続作編でご紹介しますので、お楽しみに。

◆触れられないけど、君に触れたい… -縞あさと「魔女くんと私」



8.芝生かや「わかばのテーブル」(全2巻)

……1巻は巻数表記がなかったのですが、昨年継続作編でピックしていました。希望通り続刊が出てくれたので嬉しかったですね。傷心の青年と、親と離れて暮らす寂しい幼稚園児の男の子との、食事を通じたふれあいを描くハートフルストーリー。1巻で登場した、幼稚園児の女の子や別れた彼女といった素敵な脇役たちが、2巻ではしっかりと話に絡み、一層ハートフルで温かい物語になっていました。『食男』という色モノな掲載媒体(食事する男性を愛でるというコンセプトの雑誌)ながら、こういった良作が眠っていたりするので侮れません。料理モノが好きな方に、是非ともおすすめしたい一作です。

誰かと一緒に食べるごはんが、なによりの”ごちそう” -芝生かや「わかばのテーブル」



9.たらちねジョン「グッドナイトアイラブユー」(全4巻)

……一人で母を看取った大学生の大空は、母の遺言に従い、ロンドンへ渡ることに。遺言にある通り、ロンドンの母の友達へ母が死んだことを伝えると、今度は違う行き先が書かれた遺言を渡される……。こうして始まった、ヨーロッパを巡る旅も3巻にして完結。最初は自意識ばかりが過剰で何もできなかった頼りない男の子が、立派に世界を回る青年へと成長していました。4巻では舞台を日本に移し、亡くなった母、そしてバラバラになった家族との繋がりを再構築する過程が描かれます。過去2年、期待作としてピックしていた本作ですが、旅をしていた3巻までに比べるとちょっと4巻は少しパンチ力が落ちた印象は拭えず(なので順位は低め)。とはいえ物語を終わらせる上で、この過程は絶対に必要なものでもあり、物語全体で捉えたときの良さは健在。読むと旅に出たくなる、不思議な力を与えてもらえる良作です。

母の遺言から始まる俺の異国での旅 -たらちねジョン「グッドナイト、アイラブユー」1巻



10. 倉月忍「ひとくち、ふたくち」(全2巻)

……委員長的お弁当男子と、偏食ギャル系女子高生という凸凹コンビを、お弁当でつなぐラブコメディ。メガネ男子とギャルというその組合せだけでご飯何杯もイケそうですが、期待に違わぬケミストリーで、ニヤニヤの数々を生み出してくれました。ヒロインの佐伯さんのツンツンっぷりからの、デレが本当に絵に描いたようなツンデレちゃんで、本当に可愛い。一生懸命料理を作ってみたり、美味しそうにご飯を食べたりする姿って、それだけで素敵ですけれど、それがギャルっぽい子だと余計にポイントが上がるから不思議(単に私の好みです、すみません)。倉月先生の次回作にも是非とも期待したいところです。

メガネ男子とツンツンギャルの幸せランチタイム -倉月忍「ひとくち、ふたくち」1巻



以上、10作品でした。
このマンガがすごい!のランキングとの乖離を年々感じるようになってきました……。今年は完結作は不作という印象だったのですが、振り返ってみれば結構選ぶのに悩みました。順位こそつけてはいますが、10作はどれを1位にしても自分的には違和感の無い素敵な作品ばかりです。『7SEEDS』を除けば、どれも10巻未満の手に取りやすい巻数かと思いますので、興味がありましたら是非読んでみてください。

例年通り、継続作編も後日アップ予定です。こちらも是非ともよろしくお願いします。