■十二年前に起きた、大規模な火災事故。その事故で生き残った女子中学生が、ある宗教団体でご神体にされているという噂があった。噂の真相を暴こうと週刊誌記者の渡辺は宗教団体を調べていくうちに、信者からどんな願いも叶えてくれる”神様”の話を聞く。「神様にお願いしたんです、婚約者を殺してやりたいって……。」信者の妄想だとあざ笑う渡辺。しかし彼の運命の歯車は、すでに”神様”によって狂い始めていた……。”神様”とは一体……?





 なかなか男臭い表紙ですが、一応扱いとしては女性向けレーベルとします(it comicsなので)。もはやあんまり男性向け女性向けってのも関係ない時代になってきていますが、一応ブログの名目上便宜的に区分けは意識していきます。とのっけから全く関係の無い話になりましたが、「やわらかな鋭角」のご紹介です。


 物語のあらましは冒頭にある通り。主人公は、週刊誌記者の渡辺です。とある大物俳優が新興宗教に入信しているというスクープをとるために、宗教施設に潜入した先で目にしたのは、ご神体として崇められる一人の少女・谷角真の姿だった。十二年前に発生した大規模な火災事故の唯一の生き残りである彼女が、宗教団体に飼われているという噂……。より大きなスクープになると睨んだ渡辺は、その真相を取材しはじめるのだが、その過程で”神様”の話を聞くのだった。願いが叶ったと話す信者たちを見て、哀れみの気持ち半分で耳を傾ける渡辺であったが、調べてみると本当にその通りの事実があることを知り、渡辺は深みにはまっていく……というストーリー。



興味本位で足を突っ込んでしまったがために、抜け出せなくなる。


 1巻では正直なところ、物語の全貌は見えておらず、どのような展開になり、そしてどのように着地するのか全く読めません。軸となるものが複数あり、それらがどう絡み合っていくのか。一つは12年前に起きた、ホテルでの火災事故と、その生き残りである谷角真を巡る物語。背後にある宗教団体の全貌にもつながる、物語の大きな枠組みになります。


 もう一つが、主人公である渡辺のプライベートで抱える悩みと、ジャーナリズムのあり方に対する葛藤。渡辺の妻は精神を病んでおり、先が全く見えない状況。そしてそんな中、センセーショナルさを優先せんとする彼のやり方では、どうにも通用するような代物でない事件を前に、彼自身のメンタルもだんだんと変調をきたすようになります。一種の幻覚のように、宗教のモチーフキャラが彼の目の前に現れるわけですが、それが幻覚なのか、本当に見せられているものなのかもよくわからない。



元となった事件についてよく知る先輩記者に話を聞くが、忠告ばかり。この時は聞く耳ももたないような態度であったが、やがて渡辺自身が思い知ることとなる。


 なんというか、地に足付いた現実ベースの物語の風体をしていながら、ちょこちょことファンタジーやオカルトの影を感じさせる気持ち悪さみたいなものがあるんですよ。下手したらとんでもない駄作にも成りえそうで、面白そうではあるのですが、全幅の信頼を置くことは出来ないという、なんとも不思議な感覚です。とりあえず明るくはないですし、もしかしたら救いもないかもしれないのですが、とりあえず期待感は高め。しばらく追い続けてみたいと思います。



【感想まとめ】
面白いんだけど、得体の知れない不気味さが何重にもなっており、大手を振ってオススメしづらい感。いや、続き買うんですけど、とりあえず試し読みしてから決めてもらえれば良いかと思います。



作品DATA
■著者:多田基生
■出版社:KADOKAWA
■レーベル:it comics
■掲載誌:コミックit
■既刊1巻



ためし読み