■王女・アルナは政略のため他国へ嫁ぐことを命じられる。次女カミラと入れ替わり、護衛の騎士として同伴したアルナが目にしたのは、自分以外の5人の王妃たち。ここでは正妃の座争奪戦が繰り広げられていて……!?





 『女王の花』の和泉かねよし先生の、待望の新連載です。前作は古代中国がモチーフとなっている作品でしたが、今度は中近世ヨーロッパがモチーフの作品となっています。


 物語の主人公は、B国の王女であるアルナ。許嫁がいたものの、政略のために急遽E国の王子の元へ嫁ぐことを命ぜられます。その命を受け、E国へと向かってみると、そこには自分以外に5人の王妃の姿が。聞くところによると、E国では王妃として認められるには教会の認可が必要となるものの、いずれの王妃も許可を得られず仮の状態であるとのこと。正式に認められるため、骨肉の争いを繰り広げる、とんでもない場所へと、アルナは送り込まれてしまったのでした。



どの王妃候補も、食えない性格で全く信用できない。気を緩めれば、一瞬で陥れられる怖さがある。


 B国だE国だと表されていますが、物語を読んでいると、『金の国水の国』のような記号的意図で付けられたものではなく、明確にモデルが存在するがためのイニシャル表記になっていることに気付かされます。E国はイギリス、そしてB国はベルギー。他にも幾つか国が登場します。この時点で、何かしらモデルが存在することが伺えるのですが、私は所詮世界史未履修の身なので、全くもって見当つかず。もしかしたら、読んだ瞬間に分かる方もいるのかもしれません。


 王妃の座を巡る地獄の争いということで、ドロドロの展開になることは容易に想像が付きます。日本でも『大奥』をはじめとして、このような作品は枚挙に暇がありません。また欧風モチーフで現在連載中の作品で言えば、例えばびっけ先生の『王国の子』であったり、磯谷友紀先生の『王女の条件』であったりと、どれもハズレ無し。本作についても、和泉かねよし先生ですし、題材も合わせてまず外れることがないであろう安心感があります。そして実際、1巻を読んでの感想は「これは重いが面白いぞ……」というものでした。


 表紙に描かれているのがアルナですが、短髪で剣を携えるなど、一見するとお姫様には見えません。それもそのはず、E国の良からぬ噂を事前にキャッチしていた彼女は、大胆にも従者をアルナに仕立て上げ、自分自身は付き人に扮して様子を伺うという策を講じるのでした。これによって、ある程度自由に動き回ることが出来ると共に、様々な裏事情を垣間見ることが出来るようになるという。四方八方敵だらけで、誰を信頼したら良いのか一切わからない中での行動は、常に緊張感に満ちており、この騙し合い感がたまらなくスリリングで面白い。



入れ替わって行動するアルナ。影武者ではなく、急遽入れ替わったため、色々とサポートしてあげないとボロが出てしまう。


 また不吉なのは、物語の導入で、王妃が次々死んでいくという歌が記されていると共に、必死の形相で逃げ出すアルナの姿が描かれていること。どう考えてもヤバイ方向に転がるのは明白で、先は地獄という前提の元物語を読み進めるのはなかなかしんどいうというか、エネルギー使うんですよねぇ(面白いからめくっちゃうんですけどね)。正直1巻は土台作りだけかと思いきや、いきなり命のやり取りが発生するなど、初っ端からエンジン全開で展開。そういえば『女王の花』の時も1巻からめちゃめちゃ引っ張り込まれたのでした。今回もものすごく骨太で重苦しい物語となること請け合いです。


 もちろん恋愛もこれから描かれるのでしょうが、1巻はとにかく女同士のドロドロとしたやりとりがメインで描かれており、もう少し時間がかかるかな、と。そもそも従者という立場では、恋愛する機会もなかなか限られるでしょうし、この辺りどう展開するのかも要注目です。ベツコミで追いかけている作品もだいぶ少なくなりましたが、和泉かねよし先生の作品はいつもながら読み応えがあり、良いですね。2巻の発売が待ち遠しいです。



【感想まとめ】
さすがの重厚感。これがベツコミで受けるのかはわかりませんが、作風云々関係なく純粋に読み応えがある作品で、オススメしないわけにはいきません。是非読みましょう。



作品DATA
■著者:和泉かねよし
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■既刊1巻



ためし読み