■”はじめて”が宝物なんだってきみと恋してはじめて知った……。
近づきたい……校舎裏、話題の先輩とナイショの待ち合わせ。触れたい……片想いのあの人と、ふたりきりのプール掃除。いいたい……部活中の外階段、今日こそアイツに…!会いたい……あの日触れた、彼の声が、熱が消えなくて。様々な想い溶け込む、はじめてのキス。





 最近デザートは甘い系統の作品が多いような気がするのですが、気のせいでしょうか。『放課後、恋した。』とか、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』とか、読んでいて思わず「甘いなぁ…」とか呟いちゃうことが増えた感があるんですよね、年ですかね。さて、真偽のほどは置いておくとして、また新たに甘めな作品が登場してきました。それが本作『はじめてのキス』です。


 実にストレートなタイトルが印象的ですが、その名の通りファーストキスに絡んだ恋物語を描いた作品です。1話完結型のオムニバス形式で、それぞれにキスにまつわる甘酸っぱい恋模様が描かれます。それでは少しずつあらすじをご紹介しましょう。


 高校に入学したての恵那は、ちょっとしたハプニングから、兄と同じクラスで女子から人気の巽先輩と仲良くなり…という『はじめてのキス』。内気な宮橋さんが密かに想いを寄せるのは、クラスの人気者……の隣にいる優しい男の子・真柴くん。ある日、真柴くんとプールの掃除を一緒にすることになって……という『告白プールサイド』。部活中、いつも他愛もない話をして楽しい時間を過ごす桐島さんと西宮くん。近づきそうで近づかない2人の関係はある日……という『君待ちキャンディ』。そして、修学旅行先で出会い、一緒に過ごした男の子が、自分の学校へ転校してきて……という『はじめてを、もう一度。』。



「はじめてのキス」より。流れでキスまで行くため、こう雰囲気とか勢いで手を繋いじゃったりとか、青春だとか若者だとか、そういう匂いを強く感じ取れるシーンが多数あります。


 あらすじを見てもらうと分かるかと思うのですが、何か特殊な設定やキャラを用いているようなことはなく、なんなら現実でもありそうな設定・シチュエーションが結構あります。読んでいても印象的なのが、その純度100パーセントな恋心。友情だ勉強だ部活だと、恋愛意外にも青春を構成する要素はたくさんありますが、そんなものは一切含ませず(流れ上描くことはあるけれど大切ではない)、恋愛に全振り。その清々しさたるや、素晴らしい。そしてそれが、完全にプラスに作用しています。


 タイトルからも分かる通り、作中でキスをさせなければいけないワケですが、1話完結なのでページ数は限られています。とにかく最短ルートでそこに辿り着くためには、恋愛にフォーカスする必要があるわけで。で、普通であれば結構無理矢理感のある展開が生まれたりするのですが、本作の場合はあまり無理矢理感無いんですよね。それは、短いページ数の中でヒロインの心情の変化や、積み重ねてきた想いを緻密に丁寧に描いているからではないかと思います。想いが溢れてキスしてしまう……みたいな展開がメインになるのですが、溢れさせるための準備が、序盤~中盤にかけてしっかりとされているので、納得感があるという。



「告白プールサイド」より。こういう引きの絵だとか、敢えて本人たちの表情を描かないカットがあり、そこが良い余韻を与えて短い話の中にしっかりと抑揚を付けてくれるんですよね。この辺りの見せ方も上手いなぁと、読み返していて思いました。


 久しぶりにこんなに恋愛の純度の高い作品読んだな、という感覚で、個人的にはめちゃめちゃ気に入りました。キスをコンセプトにした作品では、満井春香先生の『あたし、キスした。』などもあったりしましたが、それが好きだった人は間違いなくこれもいけると思います。イメージ的にはこちらの方が精神的にピュアでプラトニックという感じでしょうか。少女漫画以上でも少女漫画以下でもない、これこそが少女漫画だというような一作です。2巻も楽しみですね。



【感想まとめ】
ただ恋してキスしてるだけと言えばそれだけなんですが、今年の新作では1~2を争うぐらいに好きかもしれません。オススメです。



作品DATA
■著者:赤池うらら
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:デザート
■既刊1巻



ためし読み