■人は眠れば、時折「夢」を見る。その「夢」が彼にとっては「世界」だとしたら。とても美しい「宝物」だとしたら……。きっと眠るだけで、なにかが変わる……。二人と一匹が贈る、心に響くセンシティブストーリー。





 意識高そうな話です。意識高そうな表紙してますよね。というわけで、『おやすみエトランゼ』のご紹介です。


 物語には、一風変わった存在が登場します。それが、夢ペンギン。夢を旅するという夢ペンギンは、普段夢の世界に暮らしています。ところが夢ペンギンのムッシュは、夢の世界ではなく現実の世界に居着いた変わり者。悲しい夢に潜り込み、そこから生成される「結晶」をコレクションしています。しばらく姿を見せていなかった彼が、数年ぶりに馴染みの喫茶店に戻ってくるところから物語はスタート。亡くなった祖父のあとを継ぎ、若くしてひとり店を守る奏多との、こころをめぐるお話が繰り広げられます。



奏多とムッシュ。奏多はこのジトっとした目がいいんですよね。一方のムッシュはシルエットのみで、その表情を絵から窺うことは出来ません。


 夢ペンギンのムッシュは、その年齢はわからないものの、口調やその落ち着きからかなり年を重ねているような感じがします。ペンギンなのにおじさんっぽさがプンプンするし、言動にはダンディズムが感じられるという。その彼が通う喫茶店の店主をしているのが、表紙にも描かれている奏多。まだ20代前半ぐらいの若い子ですが、唯一の肉親である祖父の意思を継ぐようにして、店を守り続けています。その性格はクール……というか、暗い。非常に物憂げで、そしてそれをなかなか吐き出そうとせずに溜め込んでいる感じ。見るからにひ弱そうな見た目も相まって、病弱な美少年系の男の子がお好きな方にとってはヨダレ出てくるような感じかもしれません。

 夢ペンギンというか、ムッシュは悲しい夢に入り込んでそれを結晶化するわけですが、そうすることでその悲しみや悩みというものが多少なりとも解消されるようで、メンタル的な処方箋になるのです。なので、悩める人が都度登場して、ムッシュが解決していくようなストーリー展開になるのかと思いきや、意外にも悩める登場人物は2人だけ。もちろん一人は奏多。そしてもうひとりは、偶然ムッシュと出会う、美大に通う女の子・桜。



この桜もまた、奏多と同じく悲しい夢を見る=大きな悩みを抱えている女の子。そして同じく、それを外に吐き出せないまま、ずっと中に溜め込んでいます。ぱっと見とても明るそうなのですが、無理しちゃう系の女の子で、そしてそれがわかりやすく表情や仕草に出るものだから、放っておけないという。


 要するに物語は、悩みを抱える2人がなかなか踏ん切りつかずに、誰にも相談できずにモヤモヤしているっていう話。1巻時点で夢ペンギンが何か劇的に活躍するわけでも、状況が好転するわけでもないんですけど、妙に好きな雰囲気なんですよねぇ。まずこのひ弱そうな男の子がウダウダ悩んでるっていうのが個人的にストライクで。で、もう一方の女の子の方も、こう切なげで自分のツボを刺激するんですよねぇ。正直ストーリー的に面白いのかはよくわからないんですが、キャラでハマればどツボって感じの雰囲気はビシビシ感じており、試し読みで「あ、この子好き」ってなったらもう購入して大丈夫ってぐらいの勢いです。


 恐らくですが、ムッシュの本領発揮はたぶん2巻から。というか1巻ラストで次活躍するであろう感がめちゃめちゃあるので、たぶんこれで2人(というか桜)の悩みも解消するのでしょう。そうするともう、悲しい夢の実弾が無くなるため、作品的にどう続けるのかという問題が。元々長期連載は狙っているように見えないので、次あたりで完結という感もありますが、そのぐらいでちょうどよいのです。よいのです。



【感想まとめ】
先述のとおり、ストーリー的に面白いのかはよく分かりませんが、キャラクターの属性がドハマリできる要素で満たされており、読まずにはいられないという感じの作品。めちゃめちゃ気に入りました。



作品DATA
■著者:穂坂きなみ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:ビーズログコミックス
■掲載誌:ビーズログ(pixiv)
■既刊1巻



ためし読み