■地元の名家であり、代々病院を経営する御手洗家が全焼するという不幸な事件があった。原因は妻の火の不始末とされ、彼女は燃え盛る家の前で土下座して謝罪し、家族は離散した。13年後、山内しずかと名乗る女が家事代行として御手洗家で働きはじめる。彼女を出迎えたのは御手洗家の後妻・御手洗真希子。完璧な仕事ぶりで契約にこぎつけた山内しずかだが、彼女が御手洗家に潜入したことには真の目的があった……。嫉妬、羨望、野心、憎悪……すべてが絡まり、もつれ合う、本格ホームサスペンス!!





 つい最近2巻が発売されました。KISSで連載されている、ホームサスペンスです。あらすじは冒頭にだいぶ詳しく書かれていますので、特に補足は必要なさそうですね。最後に書かれている「真の目的」とは、山内しずかが御手洗家の前妻の娘であり、一家離散の原因となった火事の原因を、後妻によるものではないかと疑っているため、彼女に近づき真実を探る……というもの。その執念に満ちた彼女の奮闘を、サスペンス要素満載に描いていきます。


 割とありそうな題材ながら、意外と思いつく作品って少ないんですよね。昼ドラとかと相性良さそうな、ドロドロのホームサスペンス。いやこれが面白かった。作者の藤沢もやし先生、どこかで名前を聞いたことがあると思ったら『17歳の塔』の作者さんだったのですね。あちらも色々な思いがドロドロと渦巻く読み応えある作品でしたが、そこからの系譜だと考えるとこの物語にも納得です。



後妻の真希子はいわゆる一般人ながら、その裕福でハイセンスな暮らしぶりから”カリスマ主婦”的な扱いを受けており、SNSでのフォロワーは非常に多く、雑誌を中心としたメディア露出もあるという、ちょっとした有名人。表では家事や育児を完璧にこなしているように見せているのですが、家事に関してはハウスキーパーに丸投げで、育児に関しても息子の一人が引きこもりと、叩けばホコリが出てくるような状況。いわゆる羨望の声を欲する見栄っ張りであり、いかにも信用のおけない「悪い女」という印象です。またそれだけでなく、しずかの母とは友人であり、その時からその座を狙っているような言動が垣間見られたり、母のモノを盗んでいる疑いがあったり、火事の時も現場に居合わせていたりと、何かと疑いがあるという、あからさまに怪しい人物。


 こういう人って、その分だけ疑り深いというか、かなりガードは堅めなんですよね。なのでいざ近付こうとしても、なかなか懐に入っていくことが難しい。そこでしずかは、ハウスキーパーとして完璧な仕事をこなし、着実に信頼を勝ち取っていきます。家の中に入れれば、色々と情報も仕入れられる。バレないように、仕事をこなしつつ、証拠を探すシーンはかなりスリリングで、読んでいて手に汗握る瞬間です。



信頼を勝ち取りつつ、自らの目的のために裏切りの行動をしなければならない。油断ならない相手なので、そのさじ加減が実に難しく、常に緊張。高度な心理戦の体を成してきます。


 またもう一つ面白いのが、家には引きこもりの男の子がおり、しずかは当然ながらその子ともかつて知り合いだったという。真希子もそうですが、見知らぬ人を騙すのではなく、知られている相手に対して騙しを仕掛けるというところもまた、ドキドキをアップさせるポイント。「真実を明らかにする」という明確なゴールに進んでいく気持ちよさに加えて、現在の御手洗家が抱える問題も絡んでくることで、物語に幅を与えより面白くなっています。


 明るい雰囲気は一切無いのですが、テンポよく物語が展開していくので、重苦しくて読んでいて疲れるみたいなことは全くないです。2巻終えて結構劇的に物語が動いているので、たぶんそんなに長期連載にはならないんじゃないですかねぇ。変に間延びせず、今のテンションを保ったまま最後まで突っ走ってもらいたいところです。



【感想まとめ】
タイトルの炎上するってのはダブルミーニングですね。離散の原因となった物理的な「炎上」と、しずかの復讐による世間的な「炎上」。さて物語がどのような展開を見せていくのか、続きの気になる一作の登場です。オススメ。



作品DATA
■著者:藤沢もやし
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊2巻



ためし読み