■魔法使い・カイルの弟子・アリシアは、いいかげんな師匠にふりまわされつつも日々修行中の身。そんなある日、魔女の呪いで師匠・カイルが自分の影になってしまった!とばっちりを受けた王宮の使者・ジンノも弟子・シュウの影に!!”影”の呪いを解くすべとは……!?





 『輪るピングドラム』や『身代わり伯爵の冒険』のコミカライズを手がけた柴田五十鈴先生のオリジナル新連載になります。見習い魔法使いによる、師匠の呪いを解くための、ゆるふわファンタジックアドベンチャーです。


 物語の主人公は魔法使いの弟子であるアリシア。まだまだ修行中の見習いです。そんな彼女が仕えるのが、チャラいイケメン魔法使い・カイル。魔法使いとしての腕は確かなのですが、とにかく軟派な遊び人で、 お相手の女性はとっかえひっかえ。そんなある日、別れた彼女から届いた手紙に仕掛けられた呪いによって、カイルはアリシアの影になってしまいます。さらに丁度そこに訪れた、カイルの知り合いで王宮の使者であるジンノも、弟子・シュウの影に。呪いを解くため、手紙に書かれた場所へと向かうことにするのですが……というお話。





影になるといっても、ビタッと地面に張り付くわけではなく、こんな風に実体を持って現れることができる。もちろん影の中に身を隠すことはできるし、影の主と離れられないという制約を除けばむしろ結構便利だったりするのかもしれない。




 ちょっとしたトラブルに巻き込まれ、手紙に書かれている先に、ちょっとした遠出に向かうぐらいの気持ちでいたら、行った先でさらなる司令があり別の場所へ……と、当事者たちのゆるい心持ちとは裏腹に、さながらRPGめいた物語になっていきます。ただ「冒険」かというとそういう感じではなく、なんというかとにかく緩い。ベースはコメディといって差し支えないでしょう。


 そもそも事の起こりが痴情のもつれみたいなところを出発点としていることや、ヒロインのアリシアと師匠のカイルがわりとのほほんとした性格であるために、シリアスな空気感にならないというところも一つ。もう一組のジンノは唯一シリアスに倒れそうな雰囲気を醸し出しているものの、根はアホっぽいのでダメ。弟子のシュウはとにかく寡黙と、シリアス方面に引っ張る人が誰もいないという。事件も大怪我をしたりとか、生き死にするようなものでもないので、児童書の魔法使いものを読んでいるような安心感があります。でもキャラクターがそれぞれ個性的で味があり、会話劇でちゃんと読ませる内容になっているので、全然物足りないなんてことはないし、むしろその緩さが心地よいです。


 気になるのは恋愛方面。イケメン3人に囲まれている逆ハーレムシチュエーションですが、その気配がありそうなのは師匠のカイルと、ジンノの弟子・シュウでしょうか。カイルは女性好きのプレイボーイなので、アリシアに対しても非常に紳士的で好意を隠さないのですが、「師弟の誓い」というものを交わしており、手を出そうとすると天罰が下るようになっているので、そもそも物理的な障壁があるという状況。


 そうするともうひとりのシュウの方が本線っぽい感じでしょうか。年齢も近く、同じく弟子という立場で、アリシアとは話が合います。何よりイケメンですし、仕事もできるし、結構気遣いもできる優しさがあったりと、どこをとっても素敵な好物件。この子を好きにならないわけがないというレベル。しかし当のアリシアは、そもそも恋愛に興味が無さそうで、どちらに行くにせよそこが一番の障壁になるのかもしれません。



とっても素直でいい子オーラあふれるアリシア。可愛いです。


 柴田先生は人気作のコミカライズを複数手がけていたということもあり、作画が安定して上手いなぁと(良さを伝える表現が見つからない)。カイルやシュウはイケメンという設定があるものの、絵で見るとやっぱりイケメンだなぁと思わされるし、ヒロインのアリシアもめちゃめちゃ可愛い。あとちょい役とかも結構キレイだったり可愛かったりするんですよね。泉の女神さまとか結婚してほしいぐらいに好きなタイプでした。


 物語の今後の展開ですが、結局のところ呪いをかけた魔女の意向次第なので、すぐにキレイに完結させることもできるし、人気が出れば幾らでも引き伸ばせそうな要素もあり。アリシアの出自に関する伏線が描かれていたり、いろいろと話しを広げる材料は揃っており、是非とも人気が出て、長期で続いてほしいものです。

 


【感想まとめ】
こんなに緩やかな気持ちで読むことの出来るファンタジー・アドベンチャーって、そこまで多くないので、とても癒やされました。オススメです。



作品DATA
■著者:柴田五十鈴
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス
■既刊1巻