■35歳の爽は、夫とふたり暮らし。結婚して10年経つが子作りをしようとしない夫に、爽は「子供が欲しい」という本心を打ち明けられずにいた。そんな爽の気持ちを晴らしてくれるのは、年下の友人・瑠衣と行きつけのバーで語りながら飲む時間。瑠衣の勧めで、夫に本音を打ち明けた爽は……。





 のっけから全然関係ない話するんですけど、『ホリデイラブ』のドラマ観ました?ドロッドロの不倫ものというか、登場人物が軒並みクレイジーで、特に松本まりかさん演じる脇役がとんでもなくぶっ飛んでて、ラブサスペンスとかラブロマンスだったはずが、ただのホラーになってたという。で、これにうちの妻がめちゃめちゃハマってたんですよね。というか、これに限らず『昼顔』だの『あなたのことはそれほど』だの『不機嫌な果実』のリメイク版だの、ことごとく不倫ものにハマる妻に危機感を覚えなくもない今日このごろ。で、そんな妻に勧めたい作品が登場しました。はい、こちら『ギルティ』です。


 「ギルティ」ってラーメン二郎のコピペぐらいでしか聞いたことなかったのですけれど(実際にGoogleで”ギルティ”って入力するとサジェストで”二郎”って出てくる)、英語で「有罪」って意味らしいです。いきなり有罪判決受けてるんですけれども、サブタイトルもまた「鳴かぬ蛍が身を焦がす」と、意味ありげで全く意味のわからない文字列にやたら興味惹かれます。加えて帯での講談社の推し方も「炎上系ラブストーリーフェア」っていう、どういうジャンルだよっていう。というわけで、のっけからバリバリ気持ち奪われる表紙になってるんですけれども、読んでみたらたしかにこれは有罪で炎上でしたとも。


 物語の主人公は35歳の爽。女性ファッション誌の編集部に勤めており、仕事に非常にやりがいを感じています。そして10年連れ添った夫は、広告代理店勤務で、とても優しく素敵な夫。絵に描いたような「公私共に順調」という感じの結婚生活ですが、最近気になりだしたのは、子供のこと。これまでは仕事を優先したいからと子供を作らない約束をしてきた爽でしたが、年齢的にもそろそろ……。仲の良い飲み友達・瑠衣の後押しもあり、夫に思い切って打ち明けてみるも、夫からの返事はまさかの「No」で……。そこから徐々に2人の関係は崩れていき、さらには……というジェットコースターラブサスペンス。





雑誌編集と広告代理店勤務というキラッキラの夫婦。夫は疲れた妻にちゃちゃっとカルパッチョ作っちゃうような出来た旦那です。カルパッチョってどうやって作るんですか?




 「全員裏切り者」っていう、アウトレイジチックな謳い文句があるんですけれども、どういうことか話しておいたほうがよいかな、と。めちゃめちゃネタバレになりますけど、たぶん知ったほうが読みたくなるはず。まず優しくて完璧な夫・カズくんですが、めちゃめちゃ良い人っぽく見せておいて、めちゃめちゃ浮気してます。しかもスマートに「遊び」と割り切ってするっていう器用さがまた小憎らしい。そしてその相手というのが、爽の飲み友達である瑠衣っていう。この瑠衣ってのがまた悪い奴で、明らかにカズくんが爽の旦那だと知って敢えて手を出しに行っているという(そしてカズくんは瑠衣と爽が知り合いであることを知らないのです)。見せる表情はあきらかに悪意にまみれており、爽に個人的な恨みがありそうな感じ。物語を大きく動かす原動力となります。


 さて、かくして瑠衣の悪意によって爽はどんどんと疑心暗鬼に陥っていくわけですけれども、このまま彼女が身ぎれいなままでいるわけがありません。だって「全員裏切り者」ですから。これで完全に1巻のあらすじをなぞることになるのですが、夫の浮気を疑い、会社の仲間も失い、心が疲弊しているところに、忘れられないほど好きだった元カレが登場。なんかそれまでめちゃめちゃ可哀想な感じでいたのに、「これまで結婚指輪をつけていなかったのは、夫のためでもなく、お母さんみたいになりたくないからでもなく、いつか彼と再会するかもしれないから」と、あんためちゃめちゃ浮気する気やったやないかーい!と突っ込みたくなるような前向きさを見せての幕切れ。まあまだ邂逅したのみで、一言も交わしてないのでどう転ぶのかわからないんですけれども、流れ的に心も体もくっつかないワケがありません。





積み重なる疑念。こういうシーンが度々登場するのです。




 かくして全員悪者…じゃない、裏切り者になるわけですが、こうなるともうどう収集つけるのか。そしてどういったオチになるのか。誰も救われなくても納得できるし、誰かが救われても、それはそれでまあ……という、俄然気になる展開に。いや、ほんとこれどうするつもりなんだろ……。1巻にして既に救いようが無いわけですが、だからこそ面白いし、個人的には誰にも感情移入せずにただただ楽しめる。あと子供がいないってのが、結構自由度を高めてますよね。子供がいたらいたで色々な障壁だったり、時にはかすがいになってくれたりもするわけですが、サスペンス的にはいないほうが身軽にあれこれできるわけで、よりアクロバティックな応酬を見せつけて欲しいものです。あと倫理的に微妙な発言ですが、物語的に「期せずして浮気相手の子供を身ごもる」という手も使えるわけで。さて2巻以降何が飛び出してくるのか、見ものです。



【感想まとめ】
伏線はあれどよく練られてるとも思わないですしどちらかというとパワープレイなんですけれども、ソッコーでクラクラしてくるぐらいにパンチ力があって素晴らしい。とにかく味が濃いな、と。



作品DATA
■著者:丘上あい
■出版社:講談社
■レーベル:KCBeLOVE
■掲載誌:ビーラブ
■既刊1巻



ためし読み