■非合法な探偵事務所を営む鏡キズナと御堂眞矢。そこには法に則った探偵たちでは引き受けることが出来ないワケありな依頼者たちが日々訪れていた。鏡は「エンパス」という、人の感情に極めて強く共感する能力を駆使しながら依頼者たちの光と闇に触れていく……。





 『少年王女』や『魔界王子』の(この2作品ってタイトル似てるからごっちゃになるんですよね)、雪広うたこ先生による初オリジナル連載作です。確かに雪広うたこ先生って原作付いてるイメージあったんですが、初オリジナルってのは意外でした。というわけで、『彼に依頼してはいけません』のご紹介です。


 物語の主人公は何やら怪しげな風貌で表紙に描かれている男の子・鏡キズナ。なんとも普通でない印象を受けるわけですが、その職業もなかなかアブノーマル。生業としているのは、モグリの探偵業。彼が元々持っている特性である、人の心と共鳴する力=エンパスを駆使して、ぶっきらぼうな相方・御堂眞矢と、日々舞い込む厄介な案件に立ち向かっていくというお話。





 エンパスというのは、他人の気持ちを感じる能力のことで、実際に持っている人も多い特性だそうです。日本人にも多いとかなんとか。そのエンパスの能力が、極めて強く発現しているという設定なので、いわゆるファンタジーという括りではありません。キズナの場合、エンパスの力が強すぎるため、その人格ごとコピーしたような感じになるというのがちょっと変わったところ。とはいえ相手になりきれるわけではないので、あくまで思考や行動を真似て推測の確度を上げることは出来ても、直接真実にたどり着けるワケではないのです。またエンパスは自分自身でコントロールできるわけではなく、不意に誰かの感情に共鳴してしまうなど、良いところばかりではないのが、この物語を面白くするポイントとなっています。


 モグリの探偵業ということで、やってくる案件は普通の探偵事務所では扱ってくれないようなものたち。具体的には、未成年者による依頼であったり、別れさせ屋だったり。ゆえに厄介な案件も多く、ちょこちょことトラブルに巻き込まれてしまうという。


 キズナ自身は表紙の印象とは異なり、かなり心優しく、どちらかというとひょろっと穏やかなイメージ。一方彼の相方である眞矢は、ちょっと不良っぽい風貌で、喧嘩っ早い武闘派。要するに正反対の性格の持ち主であり、互いに足りない部分を補い合いながら、息の合ったコンビネーションを見せてくれます。





これが眞矢。




 物語全体の印象としては、ものすごいアクションがあるわけでも無く、かといって理論で犯人を追い詰めるような感じでもなく(そもそもそういう感じの依頼事項ではないので)、ややどっちつかずな印象もあるのですが、これはあれだ、ちょっと変わったキャラクター達の掛け合いを楽しむ的な、コメディ混じりの作品なんだ。そして突然シリアスに変調して、しっかり感動も持ってくるという。そもそも見所がバディの活躍であるので、ゼロサムらしいキャラ特化型の作品で、親しみやすい作りでございます。


 絵柄の良さは今更言う話でもないですが、さすがきれい。物語構成もちょいとガチャガチャした印象はあるものの、元々こんな感じだった気もするのでさほど気にならず。また個別の案件を解決してちょっとハラハラ、結果明るく感動していくサイクルを進める一方で、主人公の出自に関する明かされていない大きな物語がありそうで、飽きさせない仕掛けがしっかりとされています。加えて眞矢自身にも物語がありそうで、読み進める面白さもありそうですね。



【感想まとめ】
もっと尖っても良さそうな気もしたのですが、いい感じに力が抜けているところが逆に良いのかもしれません。トータルで見てもさすがの安定感といったところで、オススメです。



作品DATA
■著者:雪広うたこ
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサムコミックス
■掲載誌:ゼロサム
■既刊1巻



ためし読み(pixiv)