■もがき、傷つけ合い、慈しみあう、女たちの青春は美しい。
親は学校に反抗する同級生を冷めた目で見ていた優等生・かな。かなを変えたのは、ギャルのゆきなとの出逢い。「メイクも勉強も120%でやらないと気が済まない」というゆきなの考え方に触れ、いつのまにか夢見ることを諦めていた自分に気づいて……。表題作を含む全4編を収録した、著者渾身の極上ガールズ青春譜。





 結構前に書いていたのですがアップしてなかったので掲載します。「このマンガがすごい!2019」でもランクインしており嬉しい限り(てか自分でも票入れたんですけれども)。というわけで、どうぞ……


 毎年フィーヤンは煌めくニューフェイスの極上短編集を1作打ち込んでくるイメージがあるんですが、今年も登場しました。松崎夏未『ララバイ・フォー・ガール』です。ちょっとこれはけっこうな名作なんじゃなかろうかと感じております。


 タイトルからも分かる通り、「女子」や「女子同士」といったものにフォーカスを当てた短編集。全4編が収録されています。それでは収録作を少しずつご紹介しましょう。


 冒頭のあらすじ紹介にもある、優等生の女子と、オシャレに勉強に一生懸命なギャルとが出会うことで、自分の中で変化が生まれる『ララバイ・フォー・ガール』。自分が一番可愛いと思っている女子が、ぱっとしない学級委員長に対する見下しの気持ちをぶつける『今夜、ヴォーグのフロアで』。サッカー選手を引退して故郷に戻った先で出会ったのは、小学生時代に結婚を約束したお寺の女の子で…という『お寺の道子ちゃん』。そして、無神経さが玉に瑕のヒロインが、仲良しの友達の抱えるヒミツを知る『EVER GREEn UTOPIA』。


 うーん、こうして中身を書き出してみたのですが、これだとなんだかよくわからんって感じですね。帯の紹介なんかはもっとアッサリで、これでも結構書いたほうって感じなんですが、それにしても自分の説明力の低さに愕然とするばかりです。『お寺の道子ちゃん』を除くと、残りの3作は全て女子同士の関係を描いたもので、また4編の共通しているのが、恋愛メインじゃないっていうこと。恋愛以外の部分で、読ませる物語を描くのって結構大変じゃないですか。もちろんセオリーが無いわけではないですが、ファンタジックな飛び道具を用いることもなく、ミステリーやサスペンスのような激しい展開も避けるとすれば、かなり引き出しは少なくなります。でも本作は、それをあっけなくやってしまっている。現実ベースの人間関係に、対話中心の構成で、どうしてなのか不思議なくらい引き込まれるんですよ、これが。



汚い感情もガッツリ描きます。女子の明るい部分も暗い部分も、ありのままにむき出しで描く感じ。


 なんとなく共通しているような部分があるようでいて、描かれる関係や感情は全然別物なんですよね。例えば『ララバイ・フォー・ガール』は、衝撃的な人との出会いからの感化と、一方的な幻滅、そして再会からの救いがそこに。それに対して『今夜、ヴォーグのフロアで』は、相手を見下す醜悪な自尊心と、他人への攻撃性。そして復讐と、それを受けての諦め。女の子同士、ぶつかり合うシーンはありつつも、それを構成する要素は全く別物。前者はどちらかというとポジティブな雰囲気で、後者は明確にネガティブでドロドロ。でも結局のところ、そこから導かれる感想は「女子ってのは強い」というもの。もういい意味でも悪い意味でも、もうこれに尽きます。たぶんどの男性が読んだとしても、この感想になるという確信があるんですが、これを女性が読むともうちょっと広く深い感想が出てくるんですかね。



印象として強く残るのはネガティブな方面での感情なのですが、しっかりとポジティブな感情や関係性というものも描かれます。というか、こうして最後しっかり救われるから、前半でのネガティブな感情が活きるという。


 『お寺の道子ちゃん』も唯一男女を描く物語になっているのですが、やっぱり最後は「女子ってのはすごい」って感想だし(これは私の語彙が貧困というのもありますが、そもそもそういう物語になってる)。『EVER GREEN UTOPIA』は唯一「女子すごい」では無く「こういう女子同士の関係っていいな」って感想になるんですけれども、その友情を生み出している根底にあるのは、そのキャラが持つ強さみたいなものだと思うので、結局そこに帰結するんかい、と。もうとにかく、全編通して女性の偉大さを味わい続けることになる1冊です。


 こういうの、どこかで味わったなと思ったら、ヤマシタトモコの『HER』だ。もはやあんまり中身も覚えていないのですが、女性をメインテーマに据えて展開する物語の数々は、きれいなところも汚いところも余すこと無く落とし込まれていて、その作品のマッシブさに圧倒されたのを覚えています。今回は、それに似た感覚があり、だとしたら(だとしなくても)それって結構すごい作品なんじゃないかな、と。



【感想まとめ】
良かったです。フィールヤングは定期的にこういう良い短編を送り込んでくるのですごいですよね。オススメです。



作品DATA
■著者:松崎夏未
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻



ためし読み