■伊沢ゆりあ、50歳。自宅で刺繍教室の先生をやっている。ある日、ダンナが渋谷のホテルで昏倒し、救急搬送される。緊急手術の結果、一命はとりとめたものの意識不明の状態に……。そんなある日、ダンナに愛人がいたことが発覚!しかも相手は白皙の美青年で……?





 基本的に面白かった新作などがあればコミスペ!の日替わりレビューで取り上げるようにしているのですが、一応「青春・恋愛」という縛りがあるので、面白くてもそのテーマに合っていないと、ピックアップを見送ることがあります。そういうのはブログで取り上げなきゃなあ……なんて思っていたのですが、なかなか重い腰は上がらず、今日に至るというわけ。で、今回ご紹介する『ゆりあ先生の赤い糸』も、そんな「面白かったけど、コミスペ!的に合わなそう」ということで、レビユーを見送った作品でございます。


 作者は『たそがれたかこ』の入江喜和先生。『このマンガがすごい!2019』でも16位にランクインしていましたね。『たそがれたかこ』が結構上でランクインしていたので、本作ももっと上位に食い込んでくるかな、なんて思っていたのですが、案外伸び悩み。ただ個人的には『たそがれたかこ』よりもこちらの方が面白いな、と感じました。まあそこは人それぞれの好みなのでしょう。


 物語の主人公は、表紙にも描かれているなかなか顔力が強い女性・ゆりあ先生。先生というのは、別に教師をしているわけではなくて、刺繍教室をやっているから。女らしい姉に対して、太眉でどうにも男っぽく育ったゆりあですが、擦れずひねくれずまっすぐ育ち、30歳で結婚。以来子供には恵まれなかったものの、ダンナと2人幸せに過ごしてきました。そんな平穏な日々が突然終わりを迎えることに。ダンナが渋谷のホテルで倒れ、命は助かったものの、意識不明の状態となってしまったのでした。救急車を呼んでくれたのは、20代の美青年。「どうやってダンナが倒れたのか」とその青年に尋ねると、彼がダンナの愛人であったことを告白してきて……というお話。



迫ったのは青年の方ってのがまた、事態をややこしくさせる。


 ダンナが倒れてショックを受けている中、突然美青年から「僕はダンナさんの愛人でした」とか言われたら、もう脳の処理が追いつかないかと思うのですが、意外にもゆりあ先生は冷静でいました。というか、想像の範疇を飛び越えすぎていて、逆に冷静になれるような感じか。そして、純粋な興味から、二人の成り行きを聞き始めるのでした。



ショックというよりも、突き抜けすぎてて実感が沸かないというやつです。


 長年夫婦をしていても、相手の知らないことというのは、意図的に隠されているものやそうでないものも含めて、それはもうたくさんある訳で。自分も、結婚したら相手のことを完全に知ることができるぐらいにイメージしていたのですが、むしろ知らないことだらけで、未だに「え、そんな趣味あったの?」とか「何その交友関係?」みたいなことがポンポンと飛び出してきたりして新鮮に感じられる今日このごろ。そういったことを、本人の口からではなく、全く別の人から聞くというのもまた興味深い出来事なわけで、1巻ではそんな面白さを噛み締めながら、読み進めることができました。まあもちろん、話題によるんですが、今回の場合は一見悪そうなお話ではあるものの、圧倒的な意外性があるので、聞いちゃうっていう。


 2巻では更に状況が動き、1巻とはまた違った様相に。意識が戻っても、戻らなくとも面白い展開ですし、そもそも突拍子もない設定のお話なので、派手な動きをせずとも、会話をしているだけで読み物として成り立ってしまう秀逸さがあるんですよね。



【感想まとめ】
平凡だと思っていた人生が、実は裏ではこんなにも数奇だったのかと、ページを追うごとに明らかになっていくその感覚が、この上なく面白かったです。オススメです。



作品DATA
■著者:入江喜和
■出版社:講談社
■レーベル:KC BELOVE
■掲載誌:BELOVE
■既刊2巻



ためし読み