毎年恒例のまとめ記事です。今年どんな作品を読んでいたのか毎年ブログのエントリを見て振り返ってるんですが、今年に関して言うと「少ねえ……」という感想しかありませんでした。読む量自体はここ数年でさほど変わってはいないのですが、アウトプットとしては完全にコミスペ!の日替わりレビューにシフトしてしまったので、余計にブログ更新が滞るという。


 また子供も2人目が生まれたということもあり、イクメンというにはまったくもっておこがましいレベルではあるのですが、家族の方にどうしても時間が取られてしまいがちなんですよね。……と、のっけから言い訳がましくなりましたが、相変わらずマンガ自体はそれなりに読んでますので、このまとめ記事は例年通りの内容にはなってるんじゃないかと思います(あくまで当社比)。

今年はかなり候補が多く、絞りきれなかったというのが正直なところで、非常に迷いました。ということで、どうぞ……




1.吉田秋生『海街Diary』(全9巻)

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 1位をどれにしようかまず迷ったんですが、見返したときに「うん、やっぱりこれだよね」と自分の中で一番納得感があるのがこれかな、と。マンガ大賞も受賞し、映画化もされた、吉田秋生による鎌倉に暮らす4姉妹の物語。連載開始から12年も経っているらしいのですが、もうそんなに経っているんですね。

 この作品の何がすごいか、一言で表すのはなかなか難しいのですが、「人が生きるとは何か」とか「家族とは何か」といった漠然とした、明確な答えのないテーマに対して、丁寧に真摯に向き合い、この物語なりの答えを見出していくその過程が、この上なく温かく血が通っている感じがするんですよね。読んでいて大笑いすることも、涙をボロボロ流すこともないのですが、一番心の深いところに届く、極上のヒューマンドラマでした。この先何度でも読み返したい、自分にとって大切な一作になるであろう物語です。




2.吉田ばな『矢野くんに推し変はできない!』(全2巻)

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 『海街Diary』からの落差ヤバイ。でも今年自分の中で一番読むのが楽しみだった作品の一つということで、こちらをピックアップさせていただきます。たぶん知らない人も多いと思うのであらすじを説明しますと、ドルヲタのヒロインが、ある日ライブ会場でクラスメイトの男子とばったり出会い、彼もまた筋金入りのドルヲタだということが判明して、仲良くなるという、ドルヲタあるあるコメディ。

 廃課金だの、推し被りだの、推しが突然人気出て戸惑うだの、次から次へと投入されるネタは実体験から来るものなのか何なのか……私自身はアイドルのファンをしたことがないので完全に門外漢なのですが、そんな人間でも余裕で楽しめるだけの濃密さと面白さ。これをドルヲタの人が見たらどう感じるのかは分かりませんが、とりあえずエンターテイメント作品として秀逸なので万事OK。こう、好きなものに全力でなりふり構わず刹那的に打ち込める人って、どこか狂ってて見てて面白いですよね。

あるある満載ドルオタJKコメディ -吉田ばな「矢野くんに推し変はできない!」



3.麻生みこと『そこをなんとか』(全15巻)

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 コミュニケーション力に長けたお気楽新人弁護士・改世楽子が、様々な事件で奮闘する弁護士コメディ。こちらも長期連載を終え、この度15巻で完結しました。

 麻生みこと先生の面白さって、ときに打算的でときに所帯じみた、人間臭い小気味良いキャラクター同士の会話にあると思うんですが、それが犯罪や揉め事といった法的事案とものすごく相性が良いんですよね。毎巻「おお、分厚いな」と感じさせるページ数量なんですが、その軽妙な語り口であっという間に読み終えることができるからすごい。訴訟とともにもう一つの見どころであった、登場人物同士の恋愛については、最後「雑すぎだろ」と苦笑するぐらいにぶん投げだったのですが、それもまたこの作品らしいところと言えるのかも知れません。




4.松崎夏未『ララバイ・フォー・ガール』(全1巻)

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フィール・ヤングは毎年毎年どうしてこうすごいニューフェイスがポンポンと登場するのでしょうか。「このマンガがすごい!2019」でも票を投じたのですが、2018年で一番印象に残った短編集は、この1冊でした。というか、圧倒的でした。

 短編集ながら全ての物語を通して「女性」について描かれており、主要な登場人物もそのほとんどが女性。こういうのって恋愛を描きがちなんですが、本作の場合中心となるのは女の友情や嫉妬といった、女同士の関係性。ポジティブな感情もネガティブな感情も、むき出しにして落とし込んでおり、どのお話を読んでも「女ってのは強い。すごい。」といった感想になってしまう男(私)の情けなさよ。女性の強さ、醜さ、愚かさ、そして美しさに圧倒されてください。

女の醜さ愚かさ美しさ、そして強さに圧倒されろ -松崎夏未「ララバイ・フォー・ガール」



5.ともすえ葵『YOU MY BABY』(全1巻)

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 昨年、増田里穂『スタンドバイミー・ラブレター』という1巻完結の、青春ど直球な少女漫画をピックアップしたのですが、今年のその枠は本作『YOU MY BABY』になるでしょうか。

 背が小さくてちんちくりんなことがコンプレックスなヒロインと、背が高くて気が利く優しい男の子との恋模様を描いた青春初恋物語。

 設定やストーリーはありふれたなんてことない少女漫画なのですが、そのほとばしる90年代感がたまらなく私の心を射抜いてきました。描き込みすぎない絵柄だったり、弱みを見せようとしない強がりなヒロインだったり、自覚しきれない恋心と共に溢れ出る嫉妬心だったり、相手役の男の子との凸凹っぷりだったり、短い言葉でつなぐわざとらしくない台詞回しだったり、そのどれもが「90年代に読んだ、あの日のすばらしき少女漫画」のそれで、この物語はもちろん、その向こう側にこれまで読んできた少女漫画の数々が目に浮かんでは消えていきました。個人的に平成最後を締めくくるに相応しい少女漫画と言ってしまっても良いかも知れません。でもこの位置にしてるのは、この感覚が分かる人がたぶん限られるんじゃなかろうかという弱気から。

【日替わりレビュー:金曜日】『YOU MY BABY』ともすえ葵



6.KUJIRA『さくちゃんとのぞみくん』(全2巻)

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 振り返ってKUJIRA先生の作品をことあるごとに上位にしてることに気づいたのですが、私KUJIRA作品、自分で思っている以上に大好きなんだ(今更自覚)。

 KUJIRA先生の作品の魅力と言ったら、色々な形の「叶わぬ恋」から来る悲恋要素と、少年少女が第二次性徴期を経て今までのままではいられなくなる「変化への戸惑い」の合わせ技だと思うのですが、本作『さくちゃんとのぞみくん』は、まさにそれをガッツリと詰め込んだような内容。小学生時代に出会った男の子への思いを抱えながら成長し、中学へと上がって2人の姿も変わったけれど、それでもまだ彼のことを好きで……という、どうしようもない思いを心に大事に抱えながら過ごすヒロインの姿が切なすぎて、読むと胸がキュッとなるのです。

第二次性徴期を迎える少年少女の甘酸っぱい恋と成長 -KUJIRA「さくちゃんとのぞみくん」1巻



7.びっけ『王国の子』(全9巻)

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 ITANを長年引っ張ってきた『王国の子』も完結。1度たりとも緩むことなく、最後まで緊張感たっぷりに走り抜けました。

 王女の影武者に平民の男の子が登用され、2人支え合いながら陰謀渦巻く王宮で懸命に生きていく重厚な物語。

 本物が死ぬと、影武者も死ななければならないという絶対的な掟がある中で、どのような結末を迎えることになるのか注目していたのですが、最後は劇的な幕切れとなりました。もっともっと幸せな展開もあったのではないかと夢想しつつも、このぐらいの覚悟や心意気がないと、一国のトップとして国民を引っ張っていくことはできないのだなと、内容には十二分に納得。王宮のドロドロとした人間関係を描く作品は、中だるみや、後半尻すぼみになるものが多い中、本作は恐らく最初に描こうとしていたであろう構成でキレイに着地しており、この上ない完成度の、読み応え抜群の物語となっています。びっけ先生の底力を感じさせられた一作です。




8.慎本真『SSB―超青春姉弟s―』(全11巻)

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 アニメ化もされた『SSB』も完結しました。とある仲良しな2組の姉弟の日常を描いたコメディ。
 
 マオとチコがラヴい感じなってから恋愛恋愛恋愛という感じになっていましたが、そんな中にふと落とし込まれる、マコちゃんの変化に対する恐怖や戸惑いの感情が、味わい深いんですよ。特に恋愛ではなく、友情の方面が。
ポジティブな姉弟だけいても全く深みが生まれないわけで、やはりこの作品の肝になっていたのは、斉藤姉弟のネガティブで臆病な感情だったんだなと改めて実感。マオくんに関しては想いが成就してから完全に牙抜けた感あったので、ラストマコちゃんの孤軍奮闘感があって読んでてもしんどさを感じる瞬間もあったのですが、紆余曲折ありつつも大団円で良かった良かった。特に友情方面でボロボロと剥がれ落ちて溢れる感情が、泣けるんですよねぇ。恋愛だけじゃなくて、友情も青春なんだぞ、と。そっち方面もおろそかにしないところがこの作品の好きなところです。

恋と友情、どっちを選ぶ? -慎本真「SSB―超青春姉弟s―」7巻



9.ひのなつ海『あかいろ交差点』(全3巻)

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 こちらも3巻で完結。赤い糸が見えてしまうというツンツン女子と、誰とでも仲良くできちゃう可愛く人懐っこい男子との、赤い糸が結ぶボーイミーツガールなラブコメディ。

 カテゴリ的には男性向けになるんですって。でも普通にブログで紹介しちゃったので普通にここでもピックアップします。この作品、何が良いかって、奇をてらわないシンプルな設定を、それ以上でもそれ以下でもなく使い切って話を回すところ。変に重苦しくしたり、突拍子もない展開にする必要なんてないんです。手の届く範囲で、身の丈にあったラブストーリーを展開するからこそ、ニヤニヤできるし、ドキドキできるし、最後はとっても爽やかな気持ちで読み終えることができる。今回取り上げる10作品の中では、最も爽やかで読みやすい一作と言えるでしょう。

もしも”赤い糸”が見えてしまったら…? -ひのなつ海「あかいろ交差点」1巻



10.椎名軽穂『君に届け』(全30巻)

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 ついに完結したわけですが、すみません、ここ5巻ぐらい積読してます。正直後半惰性で読んでる感がすごかったのですが、やはり初めて読んだ時の衝撃は凄まじく、ここで挙げないわけにはいかないな、と。この年末年始で一気に読み終えたいと思います、はい。30巻という、その積み重ねた巻数に敬意を評してのピックアップです。









 以上、10作品をピックアップしました。まあ10位はあれなんですけれども、さすがにスルーするわけにもいかないな、と。


 なお今回泣く泣くピックアップを見送った作品としては、『町田くんの世界』『恋とヒミツの学生寮』『真昼のポルボロン』『理想的ボーイフレンド』などなど……。『結婚したいアラサー漫画家が婚活前に女子力向上させてみた話』とかいう、婚活エッセイ以前の、婚活すらしないエッセイとかいう無茶苦茶で、けれどもべらぼうに面白い作品もあったりしたのですけれどね。


 例年通り、この後は継続作編をアップする予定です。ではでは、引き続きよろしくお願いします。