やばいです。去年ピックアップした作品のうち、1位と2位に据えた作品、2018年に1冊も続刊が出ませんでした。

というわけで、なかなか続刊が出ない作品が好きな管理人がお送りしている年末年始のまとめ記事。ブログは半死状態ですが、媒体を変えて少しだけレビュー記事は書き続けております。アウトプットするためにはインプットが無いとダメなので、一応読んではいるんですよ。けれどもだんだん自分の中での好みのレンジが狭まっているなぁという感覚はあり、今年はピックアップに結構苦慮しました。というか、気を抜いてポイポイ選んでいると「あれ、これ去年と一緒じゃね?」みたいなことになるんですよね。というわけで、昨年とはこの辺変えてきてるな……みたいなところで、管理人の心の中での盛り上がりみたいなものを感じ取っていただければ幸いです。





1.水野美波『恋を知らない僕たちは』(既刊4巻)

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 前回3番目にピックしていて、1位と2位が続刊でなかったのでスライドで……というわけではないんですけれども、とにかくめちゃめちゃ期待していて、期待通りどころか、それを大きく上回る充実っぷりでした。水野先生本当にありがとうございます。

 中学時代の恋なんかを引きずりながら高校生になり、ちょっとスペック高めな男女数人が、互いに思い思われつつ、ハッキリと想いを告げられずにみんなでモニョモニョするという、青春ならではの繊細さと臆病さ、ウダウダっぷりが際立つ、爽やか&ジメジメMAXの青春物語。登場人物みんな揃って遠慮がちというか、少女漫画にいがちな積極的にアプローチに打って出れるタイプがいないので、互いに防御しつつせいぜい弱パンチするぐらいでターン消費していくような歯がゆさが最高です。それを変な奴らがやっててもイライラするだけなんですけれども、男の子もみんな水野作品らしくヘタレてて魅力的だし、女の子も揃いも揃ってヒロイン張れるぐらい魅力的(かつタイプがみんな違う)ので、全然イライラしないし、むしろこの上なく切なくて、ニヤニヤできるんですよ。『虹色デイズ』が映画化されましたが、こっちこそ映画化してほしいし、されるべき。臆病だったりヘタレだったり、爽やかに見せてじめついた恋模様がお好きという方に、全力でオススメしたい一作です。

恋して感情溢れ出す、男女6人クロス・ラブストーリー -水野美波「恋を知らない僕たちは」
泉の圧倒的ヒロイン感 -水野美波「恋を知らない僕たちは」3巻



2.咲坂伊緒『思い、思われ、ふり、ふられ』(既刊10巻)

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 例年上位に挙げている気もするのですが、昨年は12番目のピックアップだったんですね。2018年は充実していました。夢みがちな由奈と、現実的に恋する朱里、正反対な性格の二人が友達になり、朱里の義弟・理央と、由奈の幼馴染・和臣を交えての四角関係を形成するという青春ストーリー。

 同じような進み具合で行くかと思いきや、全くもって対照的な歩みを見せることになった、由奈と朱里。早々にカップルとなり、安定したラブラブ模様を見せた由奈。圧倒的な幸せの絶頂感と言いますか、幸せオーラが出過ぎてて、一瞬「これ理央死ぬんじゃね?」と不安になるぐらいでした。それに対して朱里は「お前らどんだけ引っ張るんだよ」という感じで、付かず離れず、互いに想い合っているのは明らかなのに、臆病さによって未だに想いは成就せず。個人的に大好きな、「明らかに沸点超えてるのに付き合うに至らない」というヤツなんですが、そろそろいい加減我慢が出来なくなってきたので、2019年はさらに一歩進んだところで思い思われしてほしいところです。

女子ふたり、恋ふたつ。 -咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」1巻
恋がもたらした変化とご褒美の”照れ” -咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」3巻
恋心募り、想い溢れる。 -咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」5巻
これは壮大な前振りなんじゃないかと勘ぐった話 -咲坂伊緒「思い、思われ、ふり、ふられ」8巻



3.ねむようこ『ボンクラボンボンハウス』(既刊3巻)

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 親に黙って勝手に大学を中退したカズキ。親から残りの学費200万円を渡され「大学じゃない有意義な使い方というものがあるなら見せてみろ」と突き放される中、目をつけたのは、祖母がかつて営んでいた美容院。今は空き家となっているそこを改装して、一生ゴロゴロできる家を作ることを決意するのですが……というボンクラ女子のDIYラブストーリー。

 連載が始まったときは「DIYをテーマに据えたお話か。ねむようこ先生のワンテーマものってのも面白そう。」と思っていたのですが、蓋を開けてみたらゴリッゴリのラブストーリーでしたよ。美容院を借りてくれることになったイケメン美容師と、DIYを手伝ってくれるぶっきらぼう男子との三角関係。世間知らずで惚れっぽいヒロインが、DIYでの共同作業を通して胸キュンし、2人の男の子の間で揺れる心……はい、ねむようこ先生との相性バツグンという舞台設定ではないですか。これまでも安定してヒットを放っていたねむようこ先生ですが、個人的には久々の長打の感触でございます。(なんて4巻で完結らしいんですが……)

ボンクラ娘のDIYライフと恋 -ねむようこ「ボンクラボンボンハウス」



4.ヤマシタトモコ『違国日記』(既刊3巻)

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 「このマンガがすごい!2019」でも上位にランクインしていました。1位じゃなかったのはフレッシュさの部分があったのかもしれませんね。

 35歳の少女小説家が、姉の15歳の遺児をひょんなことから引き取り、一緒に暮らしはじめるというお話。互いによく出来た人間というわけではなく、色々と欠けたところのある二人が、共に暮らし、ご飯を一緒に食べたり、会話を重ねることで、徐々に信頼を寄せていくようになる過程が描かれます。

 徐々に家族として、距離が近づいていく2人ですが、ちょっと一緒に暮らしたからといってすぐに互いのことを理解できるようになるわけではありませんし、受け入れられるようになるわけでもありません。信頼感に裏打ちされた温かい空気感というものが流れている中、ふと心の奥の方にあった不安やトラウマが頭をもたげ、不協和音を巻き起こす……そして、それに対して一つ一つ、対話や食事を通して歩み寄っていく。互いに人付き合いに器用なタイプでなく頑固なので、そんな2人の一生懸命な妥協と歩み寄りというのが、とても血が通っていて心に響きます。

女王と子犬は2人暮らし -ヤマシタトモコ「違国日記」



5.鴨居まさね『にれこスケッチ』(既刊2巻)

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 3作連続でフィールヤングってのもどうかと思うんですが、面白いんだからしょうがないじゃない。28歳、独身で実家ぐらしのアラサー女子・にれこが主人公。幼い頃から大好きな傘職人・清田くんの工房でアルバイトをしているのですが、彼は既に既婚。正社員にするつもりも無いと通告され、人生手詰まりに。そんな中、祖母と母がやっているブラシ屋の跡継ぎに指名され……というお話。

 「ブラシ屋の職人修業物語」というと、一生懸命鍛錬して……みたいなイメージですが、全然そんなことはなく、むしろにれこはそんなにやる気無く、母親にケツを叩かれてようやく動く……みたいな感じ。ベースはご近所づきあい含めての、人間関係や世間話を中心したホームコメディ。ただただ店先で世間話をしているだけだったり、飲み屋で今日あった出来事を話しているだけなのに、それが驚くほど面白いんだから不思議。たぶん今回紹介するなかで、絵面が最も地味なのは本作だと思うんですが、笑えるぐらいの面白さでは圧倒的に本作が突き抜けていると思います。

28歳、恋も仕事も見込みゼロ。職人修業はじめます! -鴨居まさね「にれこスケッチ」1巻



6.餡蜜『高嶺の蘭さん』(既刊4巻)

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 別フレって、ポップで面白いんだけれども悪くいうと品が無い作品が多かったりするんですけれども、餡蜜先生の作品はなんというか、上品さと奥ゆかしさみたいなものが感じられて好きなんですよね。それが建築業の兄ちゃん相手だとしても、抜群にピュアに上品に仕上がる。(前の連載『カンナとでっち』の話です)

 で、本作『高嶺の蘭さん』は、文武両道才色兼備な高嶺の花な女の子が、花屋を手伝うクラスメイトの男の子に、はじめての恋をするという物語。餡蜜先生のピュアな作風と、ヒロイン・蘭のお嬢様感が良い形でマッチしており、さらにそこに別フレならではのポップな雰囲気が相まって、この上なく読みやすいラブストーリーに仕上がっています。何かぶっ飛んだ設定があるわけでも、特筆すべきキャラクターや展開があるわけでもないのですが、心地よく読める良作。ヒロイン・蘭の可愛らしさもさることながら、チャラそうに見えて優しくて真面目で、でもやっぱりちょっとだけチャラい相手役の晃がまたカッコ可愛いんですよ。

高嶺女子×お花屋男子のピュアラブストーリー -餡蜜「高嶺の蘭さん」



7.河内遙『リクエストをよろしく』(既刊4巻)

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 またもフィールヤングですね。昨年もピックアップして、「いよいよ動き出しそうな感じがあって期待大」といった感じだったのですが、見事にそれが形になったという4巻でした。

 売れないお笑い芸人が、元相方の放送作家に見出されてラジオパーソナリティとしての才能を発揮しはじめ、ひたむきに頑張る人気が下火になってきたアイドルとの組み合わせで、徐々に人気を掴んでいく。ともに順風満帆でなかった2人が、ジワジワと人気になっていくその過程が、3巻まで辛い側面が多く描かれた分、ものすごく感動的に映るんですよね。もちろんそれでめでたしめでたしでないところが、河内先生のニクいところ。思わぬピンチを迎えてどう切り抜けるのか、引き続き面白さのピークを保ちつつ、2019年を迎えます。

売れない芸人が歩み出す爽快ラジオ道! -河内遙「リクエストをよろしく」1巻



8.縞あさと『君は春に目を醒ます』(既刊2巻)

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 小学生の時の憧れの高校生のお兄ちゃんが、病気の治療のためにコールドスリープをすることに。時は流れて7年後、そのお兄ちゃんは目を醒まし、同い年となって再び姿を現して……というお話。

 「このマンガがすごい!2019」でも票を投じていて、かなり上位にランクインするんじゃないかと思っていたんですけれど、意外と伸び悩んだ印象でした。高校生の恋愛ものはなかなか上位に食い込めないのか。

 いやもう完全にコンセプト勝ちな作品なんですけれども、コンセプトに負けない魅力的なキャラ配置でしっかりと期待に応えてくれています。特に噛ませ犬ポジションの弥太郎が、圧倒的にチョロくて空回りしがちな、噛ませ犬らしい噛ませ犬で本当に可愛らしいんですよ。ヒロインのことを小学生時代ににいじめていたことを今更後悔していたり、その後どうやってアプローチしたら良いものかウジウジしたり、そしたら突然強力なライバルが出現して意気消沈したり、もうその全てが可愛らしい。「この噛ませ犬がすごい!」だったら個人的にTOP3は堅い、そんな作品です。(どんな作品だ)

年の差、同級生、どっちの恋もあなたとする。 -縞あさと「君は春に目を醒ます」



9.あきづき空太『赤髪の白雪姫』(既刊19巻)

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 「あ、ついていけない」ってなったら割とサクッと脱落してしまうので、惰性で続刊読み続けている作品って少ないんですけれど、『赤髪の白雪姫』はいかにも幸せで感動的なラストを迎えそうなので、この小難しい中盤を惰性で読み続けていました。でも2018年は、主要なキャラクターであるミツヒデと木々の関係にひとつの区切りがついたことで、一気に引き戻されて、思わず前のめりで読んじゃいました。

 うん、外交だとか、王家の問題だとかも読み応えがあって良いんだけど、やっぱり見たいのはメインキャラの恋模様なんですよね。ひとりの男女であるとともに、忠誠を誓った君主がいる家臣としての想いが混ざり合い、いかにも彼ららしい結論を出したところは大納得。この19巻だったら、多分何回か読み返して語りながらお酒飲めそうなぐらいです。

かけがえのない2人の、ひとつの区切り。 -あきづき空太『赤髪の白雪姫』19巻



10.和泉かねよし『コールドゲーム』(既刊2巻)

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 小国の王女・アルナは政略のため、他国へ嫁ぐことを命ぜられます。思うところあって侍女と入れ替わり、嫁ぎ先へ向かうと、そこにはなぜか王妃が自分の他に5人。結婚相手として認められるためには教会の許可が必要であるものの、候補達の誰もが許可を得られていない状況で、現在正妃の座を狙って候補たちが骨肉の争いを繰り広げていて……という、王宮を舞台にした女同士の壮絶なマウンティングストーリー。

 『女王の花』は中華風でしたが、今度は欧風。明確にモデルとなる国があるお話です。舞台は違えど、歴史を感じさせる設定で骨太な物語を繰り広げるところは変わっていません。相変わらず読み応えたっぷり。

 「マウンティング」と言ってしまえば簡単ですが、王宮が舞台ですから嵌め方がえげつなく、また失敗したら普通に反逆罪とかで死んだりするっていう。1巻にして早々に一人の首が落とされたりしますからね。そんなツワモノ揃いの世界で、従者に扮して必死に生き抜くヒロインの奮闘には、きっとあなたも手に汗握るはず。よしながふみ『大奥』の後釜と言っちゃうとちょっと荷が重いですが、その系統の中では抜きん出た読み応えの一作だと言えるでしょう。

6人の王妃による宮廷サバイバル! -和泉かねよし「コールドゲーム」



11.草川為『世界で一番悪い魔女』(既刊6巻)

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 同業殺しで悪名高い300歳の大魔女だが、実年齢は16歳と、謎が多い魔女・クインタ。悪名をさらに高めるため、研究成果を巡り魔法使いに狙われる若き天才教授のボディガードを引き受けることに。だが教授がクインタの秘密に興味を示し…という、力はあるけれど未熟な魔女と、クールで変人な研究者との恋と旅を描いた物語。

 草川為先生のファンタジー作品といえば、”バディ”という表現が似合う公私ともに相方となるようなカップリングですけれども、本作も例に漏れず。その物語のこなれ具合や、適度な脱力感、そして不意に訪れるドキッとさせる瞬間など、高いレベルで安定しすぎてて、上手いのに上手いって思わなくなっちゃう(当たり前って思っちゃう)現象に見舞われてます。必死に背伸びするヒロインも、変人だけどしっかりヒーローやってる教授も素敵なんですが、ここに来て黒幕ジュードとパメラのカップリングが悲しみ混じりで圧倒的にエモい。だのになんで次で完結なんですか!?なんならジュードとパメラのエピソードだけで5巻ぐらい行けますって!草川先生お願いします、次はこの2人のお話描いてください!

交じり合う偽りと欲深さと、好奇心。 -草川為「世界で一番悪い魔女」



12.岩下慶子『リビングの松永さん』(既刊5巻)

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 親の事情で、叔父さんの経営するシェアハウスで暮らすことになった女子高生・ミーコ。そこには大学生と社会人の男女が5人。全員年上で、ドキドキのミーコでしたが、みんな個性的だけれどいい人たちばかり。中でも一番年上の松永さんは、見た目は怖いけれど一番の世話焼きで……というお話。

 テラスハウスが出てきたあたりからシェアハウスものが一気に増えた印象がありますが、あちらがNetflixで今も根強い人気を誇っているのと同じく、女性向けマンガ界でもまだまだ元気です。中でも一番のお気に入りなのが本作『リビングの松永さん』。大学生や社会人じゃなくて、女子高生ってところが良い。

 いや、だって倫理的に現実じゃなかなか出来ないじゃないですか、女子高生を放り込むって。それに高校生が、普通に生活していたらなかなか触れ合うことができない大学生や社会人と蜜にコミュニケーションを取ることが出来て、そこから刺激を受けるって構図がなんかすごく良いんですよ。年上相手の背伸びした恋ってのもいとをかしなんですが、異なる世代との交流とそこでの成長という部分でもなんだかとても元気や感動をもらっちゃってる私はもう年取ってきたってことなんでしょうね。

ひとつ屋根の下、どきどきシェアハウスライフ -岩下慶子「リビングの松永さん」1巻



13.ろびこ『僕と君の大切な話』(既刊4巻)

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 『となりの怪物くん』からの反動がありすぎて、今ひとつピンと来ていなかったんですが、なんだかんだハマってる自分がいます。もうちょっと刊行ペース上がってくれたらなぁというのは、ワガママだってわかってます。5巻もうすぐ発売です。

 トークの面白さもあるんですが、やっぱりろびこ先生の魅力って、恋するあまり暴走して変な行動しちゃったりするその変化というか、変貌にあると思うんですよね。今回ヒロインの相沢さんって、スタート時点でそれが完成しちゃってたんで、その部分で若干退屈だったんですけれども、それを補って余りある部長の可愛らしさ。4巻も今か今かと登場を待ってました。加えて、だんだんと東くんも恋に自覚的になってきたので、彼にもどんどん暴走迷走してもらいたいところですね。

笑いとニヤニヤ止まらぬ新感覚トーキングラブコメ -ろびこ「僕と君の大切な話」
何はともあれ部長が可愛いという話 -ろびこ「僕と君の大切な話」3巻



14.藤沢もやし『御手洗家 炎上する』(既刊3巻)

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 地元有数の名家で、代々病院を経営する御手洗家。妻の火の不始末が原因で、家が全焼し、妻は離婚。家族は離散してしまった。その13年後、後妻・御手洗真希子の元に、山内しずかと名乗る家事代行がやってくる。その正体は、前妻の娘。正体を隠してこの家に潜入したのには、ある狙いがあったから……。嫉妬、羨望、野心、憎悪の全てが絡まりもつれ合う本格ホーム・サスペンス。

 復讐のために後妻の元に正体を隠して潜入するっていう、圧倒的昼ドラ感。なんていうか、ストーリーといい展開といい、ちょっとしたチープさはあるんですけれども、グイグイとひきこまれる力強さがあります。とにかく手に汗握る展開の連続で、気が休まる瞬間が無いんですよ。しかも一対一ではなくて、プレーヤーが多数いる中でそれぞれの思惑が渦巻いているというのが面白いところ。誰もが隠し事をしていて、互いに弱みを握り握られあって、もつれていくその様子が本当に面白い。スリリングな展開を楽しみたいという方にオススメの一作です。

手に汗握る本格ホームサスペンス! -藤沢もやし「御手洗家、炎上する」



15.末次由紀『ちはやふる』(既刊40巻)

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 40巻まで行ってる作品を今更取り上げるのもなんですけれども、2018年は太一にとっては最終回みたいな年だったのかな、と。かるたと本当に真剣に向き合って、周防名人の元でかるたの腕を磨き、遂には原田先生を撃破。そしていよいよ迎えた、新との対戦。最後は力尽きてしまいましたが、「まぁそうだよね」という妙な納得感が。というか、ここで勝ったら新の存在意義が無い。自分にとってこの戦いは「新が勝った」というよりは「太一が負けてしまった」と映った程度には、太一に肩入れしていたので、なんなら『ちはやふる』完結でも良いくらいなんですけれども(笑)恐らくクイーン戦で物語もクライマックスですかね。でもここに来て「クイーン戦は5回勝負」って、あからさまな引き伸ばしじゃないですか、やだー。まだしばらく『ちはやふる』を楽しめそうで、嬉しいかぎりです。




16.芦原妃名子『セクシー田中さん』(既刊1巻)

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 かつて『砂時計』を描いていた芦原妃名子先生は、パン焼きを経て、ベリーダンスにたどり着きました。未だに『Piece』が『砂時計』を超える超名作になる世界線を夢に見るし、『砂時計』級の切ない恋愛ものが再び世に産み落とされることを期待してもいます。で、これですよ。全くもって期待していたベクトルの話じゃないんですが、悔しいけど面白い。

 派遣OLの朱里は、”堅実”で”普通”の結婚をするために婚活中。高望みはしない、不幸にならなければよい……そんな手堅いビジョンを持っていた彼女が、ある日地味で独身のアラフォー・経理部の田中さんが、全くイメージが結びつかないベリーダンスを踊っていることを知ります。それをきっかけに、彼女の日々は少しずつ変わり始め……というストーリー。

 コメディかっつーとコメディではないんですよね。ベースラインは、中途半端な生き方をしていたヒロインが、田中さんというこれまでいなかったような人種に出会ったことで、その人生を変えていくというお話。ただそのその過程が奇妙でファンキーで、とにかく普通じゃない。で、面白い。出オチ一発ネタな物語なんかじゃ全然ないです。むしろめちゃめちゃ真っ当なヒューマンストーリーですよ。

40歳処女コミュ障超絶負け組……だけど、超セクシー!? -芦原妃名子「セクシー田中さん」



17.有賀リエ『パーフェクトワールド』(既刊8巻)

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 高校時代の同級生で、初恋の相手と偶然再会したところ、その相手は車椅子に乗る障害者になっていた……という車椅子生活者との恋を描いた物語。2018年は岩田剛典さんと杉崎花さん主演で映画化もされましたね。なんで同級生だったのを、わざわざつぐみを年下にしてまで映画にしたかったのかはよくわからんのですが、シネマライズされると原作もペースアップして見どころが増えたりするので、原作好きとしては難しいところですよね。

 ここまで「辛い」「しんどい」の連続だったのですが、そこに追い打ちをかけるように大地震という天災系の災難を落とし込んでくるハード仕様。自分たちの意思で選び取る辛さとは違って、不意に訪れる外的なアクシデントの場合は、それが良い方向へと決意を固めるきっかけにもなるわけで。長い時間をかけてようやく、明るい、前向きな決意による進展が見られた年でした。
何も知らずに恋心だけで飛び込んで、努力しつつ「そのまま適応」しちゃうよりも、一度ダメになって、その辛さや大変さをわかりながらも、それでも自分は一緒にいたいと、強い決意を持って進んだ方が、物語的にも現実的にも意味があるんだと、この展開を見て感じた次第です。(これ読んでる人にしかわからん感想だな)

映画化もしますが本編はなかなかヘビーです -有賀リエ『パーフェクトワールド』7巻



18.ヒナチなお『藤原くんはだいたい正しい』(既刊6巻)

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 恋愛対象になれない、マスコット系女子のヒツジが、ひょんなことから大人気生徒会長・藤原くんのいる生徒会のお手伝いをすることになるのですが、そこで「女子扱いされたいなら、そうされるように振る舞え」とキツイお説教を食らってしまい……という、正論系男子とマスコット系女子の織りなすドタバタラブコメディ。

 例年だとこの手の作品ってピックアップする感じにならないんですが、今年は15位以降は結構選びあぐねているというのが正直なところ。『藤原くんはだいたい正しい』もずっと楽しみに読んでいる作品なのですが、多分恋愛エピソードにおける盛り上がりではここが一番なんじゃないでしょうか。それまでどちらかというと、時折優しくも恋愛においては全くもって釣れなかった藤原くんが、明確なライバルの登場によっていきなりスイッチが入り、ついには修学旅行で暴走するっていう、人間的に全く正しくない行動をしているところが笑えます。いや、笑えるんですけれども、同時にそれぐらい藤原くんが乱れていることに快感を禁じ得ない。実写映画と相性良さそうなのですが、そろそろ話あっても良いんじゃないですかね。ダメですかね。

悟り系男子×マスコット系女子のLOVEレッスン -ヒナチなお「藤原くんはだいたい正しい」1巻



19.オザキアキラ『ふしぎの国の有栖川さん』(既刊6巻)

……
 お祖父さんに大切に育てられた有栖川鈴は、趣味は落語で門限6時。恋愛には超鈍感という古風な女の子に。鈴は電車の中で男女問わず人気のある野宮くんと出会い、はじめての恋をするという、和風ピュア女子×完全男子のやんごとなき恋物語。 

 主人公の有栖川さん、箱入り娘なんですけど、オザキアキラ的エッセンスが入るために、絶妙に上品にならないところが滑稽かつ親近感を覚えるところ。相手役の野宮くんがパーフェクトヒューマンすぎて、こと恋愛においては大した波乱も起きずに着々と仲を深めているのですが、それでも面白いのは、ガヤガヤしている脇役たちがものすごく場を盛り上げてくれるから。むしろ彼らで持っていると言っても過言ではないのではなかろうか。

 大きな山も谷も無く進行している中であえてピックアップをしたのは、脇役一番手で大好きなキャラである菅谷が不穏な動きを見せているから。個人的にはメインどころには絡まずにキャーキャーやっててほしいんですけれども、どうなることやら。どちらにせよ、彼に幸訪れる2019年であることを祈ります。

ドキドキしっぱなしの”箱入り娘の恋” -オザキアキラ「ふしぎの国の有栖川さん」1巻
オザキアキラ作品の魅力は”脇役”だよねって話 -オザキアキラ「不思議の国の有栖川さん」5巻



20.入江喜和『ゆりあ先生の赤い糸』(既刊2巻)

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 このマンガがすごい!でもランクインしていましたが、『たそがれたかこ』の入江喜和先生による新連載。主人公は50歳の伊沢ゆりあ。いくつかの仕事を経て、今のダンナと出会い、結婚してから今は刺繍教室を開いている。子供には恵まれなかったものの、ダンナとの関係は良好で、これまで平凡ながらも満足に暮らしてきた。ところが、ダンナがある日昏倒し、意識不明の重体に。さらにその流れから、ダンナに愛人がいたことが発覚。しかも相手は白皙の美青年で……という物語。

 『たそがれたかこ』も面白かったのですが、個人的にはこちらのほうがツボに入った感があり、とても印象に残っています。ダンナに愛人発覚というのはありきたりなのですが、その相手が美青年って時点でまず面白く、その後意識が戻らず大変だからといって、介護を手伝わせるというゆりあ先生も肝が座っていて見ていて痛快。しかも最初こそビクビクしていたのに、開き直ってゆりあ先生に全く臆せず、なんなら出し抜こうとすらする青年とのやりあいがまた、汚いながらも面白いんですよね。どんな展開になるのか全く読めないところ含めて、続きが楽しみな一作です。

50歳の平凡な女の数奇な人生 -入江喜和『ゆりあ先生の赤い糸』





 というわけで、以上20作品をピックアップしました。『このマンガがすごい!』勢で言うと、『メタモルフォーゼの縁側』は取り上げるレーベル的にちょっと違ったので取り上げていませんが、とてもおもしろい作品でしたし、個人的に1位になったのも納得しています。『ミステリと言う勿れ』は、どうしても『7SEEDS』『BASARA』とのギャップがあったので、選ぶほどじゃないな、と。『とらじ』も面白いけれど、ランキングで選ぶほどじゃないでしょ、という感覚に近いですかね。
 

 さて、その他入れようか迷って見送った作品としては『NとS』『とろける紬ちゃん』『私と師匠の影解きの旅』『カモナマイハウス』『ブラザートラップ』『マロニエ王国の七人の騎士』『僕のジョバンニ』『くちうつす』『世界で一番早い春』『中学聖日記』『ビューティフル・エブリデイ』『放課後恋した』『シュルスの魔女』などなど。


 昨年上位に選んでいた『ショートケーキケーキ』は、振り返ってなんか1年通して兄弟喧嘩(の修復)してたので、どうしてもトキメキ要素が薄かったので。『ふつうの恋子ちゃん』はやっぱりくっついちゃうと、くっつく前までのテンションの高さまではどうしても届かないかな、というところが。どれも引き続き楽しみに読んでいますので、別につまらなくなったってことではないです。選定の基準は、あくまで「どれだけ盛り上がったか」と「来年凄そうか」なので、あしからず。


 今年も更新頻度が落ちることが予想されますが、よろしくお願いいたします。