■昔住んでいた空き家に通う陽向は、ある日、新しい住人でゲームクリエイターの樹と出会う。樹は、誘拐犯だと勘違いされたくなくて、もう来るなと陽向に伝えるけど……。そんな樹の言葉を聞かず、また家に行く陽向。そこは彼女にとって、断ち切ることのできない大切な場所だったのです……。





 南波あつこ先生の新連載です。タイトルを見た時に「Hey!Say!JUMP……?」と思ったのは私だけでしょうか。ちなみにHey!Say!JUMPとは全く関係がありません。いや、もしかしたら万が一でも関係あるんじゃないかと思って歌詞見てみたんですけど、びっくりするぐらい中身が無かったので(それでこそジャニーズの曲です)、やっぱり関係無かったです。一安心。ちなみにタイトルでAmazon検索すると同名のBL作品も出てきます。


 さて、今回のお話ですが、なんとも珍しいゲームクリエイターがお相手の恋物語となっています。そもそも別フレにおいては社会人相手もやや珍しかったりするのですが、あっても教師、エリート会社員(ゆくゆくは経営者)とか、職人系とかそういうライン。最近は時代の流れか、社会人がターゲット層の掲載誌では、システムエンジニアもちらほらと出てきているのですが、ゲームクリエイターってのはあんまり見た記憶がありません。確かにソシャゲ全盛の時代において、日本が誇るメジャーな職業の一つではあるんですよね。けれども、まずもって女子高生と接点を作れない。だから登場できるはずがないんです。しかし南波メソッド(?)をもってすれば、それさえも可能にできちゃうんです。すごい。


 物語の主人公は、父を早くに亡くし母と二人暮らしをしている女子高生・陽向。家庭を支えるため、母は仕事で不在がち。その寂しさを紛らわすように、幼い頃に一緒に過ごしていたおばあちゃんの家を訪れては、庭に組んだかまどで料理をしていました。そんなある日、いつものようにおばあちゃんの家のかまどでとうもろこしを焼いていると、そこには見知らぬ若い男が。驚く陽向に対し、その若い男も驚いている様子。それもそのはず、その男・樹はその家を新たに借りた正真正銘の住人。陽向の事情を聞くも、面倒は避けたいということで、彼女を追い払う樹。しかしどうしても思い出の場所を諦めきれない陽向は、樹の忠告を無視して、彼の家に向かうのでした。陽向の頑なな態度に根負けした樹は、陽向が来ることを受け入れるようになり、だんだんと仲良くなって……という展開。



陽向が庭に自作した竈がきっかけで、仲良くなる。てか竈自作するJKってヤバくないですか(色々な意味で)。


 自分ちの庭に女子高生が出現するって、伝説のポケモンばりにお目にかかれないものかと思うのですが、それをさらっとやってしまう南波先生の凄さよ。「根負けした」と書いたのですが、どちらかというと彼女の寂しさを察してあげたという方が近いかもしれません。年下の女子に泣き落とされたらそりゃあ折れますし、加えて陽向の上手いところは、彼の作るゲームに興味を持って、実際にプレイしてハマっちゃうところ(彼女はそれを無意識に無邪気にやっちゃう)。無邪気に自分の作ったゲームを楽しむ姿にほだされて、樹はついつい受け入れてしまうという。


 ただ単にゲームクリエイターってだけでもいいんですが、そこは少女漫画ですから、相手役もハイスペックな方が良いわけです。けれども樹は見た感じ普通の青年ですし、古臭い借家に住んでいるところを見ても、なんとなくモサい。それにともすればゲームクリエイターってオタクっぽくもあるわけで、なかなか色を付けるのが難しい。でも大丈夫、この樹さん、ウィキペディアに項目があるくらいの、業界ではかなりの有名人でファンも多い人なんです。これをゲーム業界やゲームファンが見たら、「ものすごく上の人」と感じてしまうのでしょうが、そういう方面に疎い陽向からすると、「もしかして、なんか凄い人なの?」ぐらいのイメージで、その肩書や実績の割に、そう気後れすることなく対峙するので、結構良い距離感を保てています。



通ってもいいけど、家の中には入れません。庭はOK。ウッドデッキまでなら。一応、そういうゆるいルールでつながっています。


 普通に過ごしていれば絶対に交わることのない二人ですし、基本的に陽向が出向かない限り、進展することのない、いわば物理的に一方通行な関係性ということで、面白さはあるものの、同時に展開の難しさも垣間見える設定。ただでさえ、社会人と学生ですからね。ここまではガチっと心掴まれていますが、今後どのように展開していくのか、注目です。

 



【感想まとめ】
『青夏』はそこまでピンと来なかったのですが、こっちは奇抜で良いですね。設定負けしていない面白さもあると思います。続きが楽しみ。オススメ。



作品DATA
■著者:南波あつこ
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■既刊1巻



ためし読み