一人で、母を看取った。
「私の死を、ロンドンの友人に伝えて」
そう書かれた遺書に従い、大学3年生の夏、大空は久しぶりに再会した兄と共に、イギリスへ渡ることになった。
初めて訪れた異国の地で、母の若き日、兄の秘密、そして“家族”の真実に出逢うとは知らずに……。
たらちねジョンが鮮やかに描き出す、ファミリールーツジャーニー第1巻。





 

お久しぶりです。ぼちぼち復帰していきます。しばらくエントリーを書いていない間に、ITコミックスなんてレーベルが新たにKADOKAWAから刊行されていました。10月に一気に5タイトルが発売となっているのですが、その中で気に入った「グッドナイト、アイラブユー」をご紹介したいと思います。これ、表紙がすごい凝ってるんですよ。画像で見るより、実際に書店で手に取ってその質感とかを感じていただきたい。


 物語は一人の青年の海外旅を描きます。主人公の大空は、つい先日、たった一人で病気の母親を看取ったばかりの大学生。父の記憶は無く、兄も大空が幼いころに海外へと出て行ってしまいました。そんな最愛の母が残してくれたのが、遺言。そこには、海外に住む母の友人に自分が死んだことを伝えてほしいという言葉が記されていました。向かう先はロンドン。しばらく疎遠だった兄と共に飛行機に乗り込むも、気まずくてどう距離を取って良いかわからない。海外も初めてで、とっても不安。母の手紙に導かれ、孤独を抱えた大空の、ひと夏の旅がはじまるのですが、、、というお話。



グッドナイト、アイラブユー0001
初めての海外旅行。右も左もわからずおどおどします。不本意ながら、海外に海外に暮らす兄に頼らざるを得ない。


 

経験未熟な大学生が海外旅行で様々な経験をし、自分を見つめ成長する……分類としては間違いなく「自分探しの旅」になるでしょう。けれどもその旅は、能動的なものではなく、亡き母から贈られたもの。それこそが本作のミソであり、主人公のネガティブでこもりがちな気質というのが見て取れるかと思います。姿も知らない父に、すぐに家を出てしまった兄への反発心もあってか、自分の感情を押し込めつついつでも母の近くにいた彼は、自分の感情を上手いこと発露させることのできない、少しひねくれた青年へと育ちました。


 ただでさえ、ウチに向きがちな大学生って難しいじゃないですか。プライドは人一倍高くて失敗を恐れたり。わからないことを人に聞くのも嫌がるとか。でもどうしたって経験がないから失敗するわけですよ。それが初めての海外旅行なんて言ったら、そりゃあもう次から次へと。でもそれが、成長への糧となるんですよね。その様子は、不恰好でも前に進まんとする必死さとか力強さが感じられて本当に素敵。だから「自分探しの旅」というジャンルは大好きなんです。


 こんな性格の彼のことを案じてか、母はこの旅を画策。ロンドンだけかと思ったら、行った先で次の行き先を告げられるという茶目っ気たっぷりかつ壮大な仕掛けであることが明らかになります。病気が見つかった時は既に手遅れで、余命4ヶ月であったことを考えると、このイベントに残りの時間をすべて懸けたと言っても過言ではないでしょう。母からの、大きな大きな愛のプレゼントなわけですよ。そして行く先々で見えてくる、母の在りし日の姿。



グッドナイト、アイラブユー0002
母の死や、ぎくしゃくしていた兄との関係など、彼の心に絡まっていたものが、旅を通じて徐々にほどけていきます。これは自分探しの旅であると同時に、家族探しの旅でもあるわけですね。

 巻き込まれた形とはいえ、つくりは割とベタな自分探しの旅なんですよね。自分探しはベタでなんぼだと思っているので個人的には非常に満足度の高い一作。外国を巡るからといってヘンに洒落込んでもいないですし、絵柄的にややホモっぽさを感じる(実際にゲイも登場しますが)ことを除けば、割と間口広く多くの人が楽しめる作品となっているのではないかと思います。





【感想まとめ】

面白かったです。新レーベルということで割とひねった作品が来るかと思ったのですが、家族愛だとか自分探しだとか、そういったテーマを正面から投げ込んできたのにびっくり。続きが楽しみです。



作品DATA
■著者:たらちねジョン
■出版社:KADOKAWA
■レーベル:it Comics
■掲載誌:COMIC it
■既刊1巻



ためし読み