■高校生の高木美枝子(♀)と妹尾槇雄(♂)は、同じ中学から進学した仲良し同士。一緒に始めたアルバイト先で、二人は大学生・福長永慈(♂)と出会い、三人でつるむようになる。ある日、永慈が妹尾のことを「めちゃくちゃ意識してまうねん」と言い出して……?
 あの青春の日々は、ときにやさしく、ときにせつなく、いつもはかなく輝いている……。




 スピカは休刊となりましたが、幻冬舎のスピカコレクションのレーベルは残っており、今も刊行され続けています。本作はスピカで連載が開始され、休刊と共にバーズに移ったようです。物語は男女3人の青春の日々を描いた三角関係の物語。それでは内容についてご紹介しましょう。


 主人公は表紙でも中心に描かれている女子・高木美枝子。その見た目からか誤解されがちな美枝子は、ひょんなことから、小さくて人懐っこくてけれどもどこか大人びている同級生の男の子・妹尾槙雄(マッキー)と仲良くなります。つかず離れず、中学から同じ高校へと進学した二人は、一緒に居酒屋でバイトを始めることに。そこで出会った大学生の永慈とも仲良くなり、3人はいつも一緒に楽しく過ごしていました。変わることなんてないと思っていた日々に、変化が訪れたのは、永慈からのとある告白から。ゲイだという永慈が、マッキーのことを突然気になりだしたらしく……!?



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大学生と一人年上だけれど、高校生の2人と馴染む永慈。いじられキャラっぽさとか、素直に優しいとか、とにかく愛され要素たっぷりのかわいい男子です。

 「いびつに尖ったサンカク関係フラグメンツ」という説明から、てっきり美枝子を中心とした三角関係が形成されるのかと思いきや、男が男を想うという一風変わった関係性を描き出します。美枝子はマッキーに対して恋心は抱いていないものの、居心地の良さやかけがえのなさみたいなものは感じており、また女子達から人気のマッキーと最も近いところにいるという、ちょっとした優越感みたいなものも感じていたかもしれません。一方のマッキーは、人懐っこくもなかなか自分の深い所は他人に見せないくせ者で、心がなかなか見えてきません。仲が良いと言いつつも、つかず離れず、平行線を保ち続けます。そこに風穴を開けるのが永慈なのですが、彼も心優しく可愛らしい男の子で、無理に関係に変化をもたらそうとはしません。けれどもずっと同じ関係でいるのは難しい話で、静かに、けれども確実にその均衡は崩れていきます。

 帯には「名作『IN THE APARTMENT』の前日譚」との記載が。「え、そんな作品知らないぞ?」と思ったらそれもそのはず、大洋図書から出ているBL作品でした。という背景を知ると、自ずと結末が見えてきてしまう気がするのですが、それはそれで、美枝子の想いというか関係性について、どう落としどころをつけるのか興味深いところ。なお『IN THE APARTMENT』は本作の“その後”という位置づけとなるため、読んでおく必要は無いというか、むしろ作者さんのあとがきからは「大いなるネタバレがあるから読まない方が良い」とまで言われていますので、未読の方は素直にこちらから手に取っておきましょう。


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こんな思わせぶりなセリフも出つつも、終始平行線。

 いわゆる「可愛らしい雰囲気で楽しむ」というタイプのBLが元であることが手に取るようにわかる作品。1巻では恋愛要素が少ないことも相まって、ちょっと動きに乏しく薄味な感がありますが、こういう雰囲気がお好きな方はドツボでしょう。真のBL読者ではない自分のような者からすると、このぐらいの距離感でBLに触れているぐらいがちょうど良かったりします。なおBL作品に登場する女性キャラは、“男女”という枠組みではなく“人間”として、男性カップルの近くにいれる理由・事情があることが多いので、魅力的に映るんですよね。だから総じて好き。美枝子もチラチラと心の奥底に沈む傷が見え隠れし、ついつい気になってしまいます。恐らく物語の着地点もそういう方面にもっていくのではないでしょうか。


 そういえばタイトルになっているモアザンワーズというと、ロックバンドのEXTREMEの名曲を思い出します。大好きな曲でiPodにも入っているのですが、この作品……というかヒロインの美枝子の雰囲気に良く合っていますね。






【感想まとめ】
動きの乏しさから、ちょいと退屈に感じる人もいるのかもしれませんが、その雰囲気やよし。最終的にどう落とすのかがとにかく気になります。「IN THE APARTMENT」読んじゃいたいけどなぁ…悩ましい。



作品DATA
■著者:絵津鼓
■出版社:幻冬舎
■レーベル:スピカコレクション
■掲載誌:バーズ
■既刊1巻



ためし読み