■ある地方都市に“新婚夫婦”として引っ越してきた、圭一と晃。
ふたりの陰には、大きな「秘密」があった……。




最近新刊が続々と出ているit comicsから、「さらば、佳き日」のご紹介です。表紙側の帯に書かれている言葉を読めば、どんな物語なのかすぐにわかります。


「僕の妻は 妹でした」


 本作で描かれるのは、とある都市に越してきた兄と妹の日常。兄の圭一は絵本の出版社で働いており、どこか抜けた性格で頼りない…良く言えば放っておけない可愛さのある人です。一方、妹の晃は兄とはまるで正反対のしっかり者。淡々と家事をこなすショートカットのクールビューティで、保母さんをしています。親にだまって家を出て、誰にも伝えることなく二人だけではじめた同居生活を、静かでゆったりとした流れで描きだしていきます。




さらば、佳き日0001
洗濯物を干しながらの一幕。こういう生活風景と会話が中心。




 こういったシチュエーションでまず連想されるのが、「禁断の恋」というフレーズ。二人とも社会人ともなれば、肉体関係も絡めて背徳感が前面に出た描かれ方をするのが定番かと思います。そしてそれを期待する人も多いはず。けれども本作は、全くそういった方向には進みません。肉体関係はおろか、キスも冒頭におふざけで一回したのみ。以降はそれこそ肌と肌が触れることすらも殆どない状態で、受ける印象は極めてプラトニックです。


 二人の関係を見ていると、夫婦でありつつも、時に兄妹である場面も垣間見ることができます。身体的接触が描かれないからこそ、「夫婦・恋人」と「兄妹」という関係を行き来出来るとでも言いましょうか、どんな言葉にも当てはめにくい、唯一無二の絆のようなものを感じ取ることが出来ます。この不思議な感覚は、読んでみて味わってもらった方が良いかもしれません。


 物語は過去回想を絡めつつ、二人の愛しき日常が淡々と描かれていきます(というか1巻は過去回想がメインか)。大きな事件や、感情を発露させてのラブロマンスもありません。本当に何の変哲もない日常が描かれるだけなんです。けれどそんな普通の光景も、決して普通ではない関係の二人が過ごすと、少し色が違って見えてきます。




さらば、佳き日0002
過去回想は幼少期から学生時代まで、当人たちの視点に限らず様々入り乱れます。晃がかわいい。




 二人は兄妹で、親には所在を知らせていないというところまでは分かるのですが、その他の情報はあまり描かれておらず、背景はまだまだ秘密が多いです。この辺りも、物語が進むとともに明らかになってくるのでしょう。もしかしたら今後、恋愛色が一層強くなり、悲恋の色をより濃くしてくるかもしれません(そもそもタイトルから、どうしても明るい結末は想像しにくいですし)。一方で、このまま日常が淡々と描かれ続けるのも、それはそれで切なそうで。決して未来の無い関係を、ずっと繰り返し続けるだけって、穏やかで幸せに見えつつも、かなり残酷じゃないですか。ともあれ結末の気になるお話でございます。


【感想まとめ】
切なさを予感させる雰囲気の良い物語って、ど真ん中で好きなジャンルでして。もう手放しでオススメです。



作品DATA
■著者:茜田千
■出版社:KADOKAWA
■レーベル:it comics
■掲載誌:コミックit
■既刊1巻



ためし読み