■高校2年生の桜木莉乃は、中学からの仲良しグループの男子・桐谷蓮が好き。モテる桐谷に、自分の性格にも身体にもコンプレックスがある莉乃は、気後れしてばかり。女友達のままでいいんだ、本当の私を知って、嫌われたくないし……。そうやって諦めようとしても、桐谷が「かわいい」「オレのことどう思ってる?」と思わせぶりなことばかり言うから……やっぱりこの恋、止められない!好きな人には、本当の自分を知ってほしい。けど好きな人だから、一番勇気がほしい。……そう思ってたあの頃。恋に全力な私はまだ、知らない。この身体が、病に侵されていることを……。




 「僕達は知ってしまった」「あかいいと」の宮坂香帆先生の新連載です。タイトルは「10万分の1」ということですが、これは病気の発症確率を指しています。あらまし紹介にもある通り、本作は難病に冒された少女の恋を描いた物語なのですが、その病気は最近だいぶ認知度も上がってきました、筋委縮性側索硬化症……通称「ALS」。ALSというと、この病気が題材となった「僕がいた時間」なんてドラマが放送されたり、「アイスバケツチャレンジ」が世界的な現象になるなどしましたね。思考や意識ははっきりと残り続けるものの、身体は段々と動かなくなってゆくという難病です。


 ヒロインの桜木莉乃は、絵に描いたような普通の女子高生。剣道部のマネージャーをしており、同じ部活のイケメン・桐谷くんに想いを寄せています。部活が同じで、さらに仲良しグループも同じなので接触する機会は多いのですが、コンプレックスからその想いを伝えることは出来ないまま。ところが桐谷くんは、そんな莉乃のことをどう思っているのか、事あるごとに脈ありげな言葉を伝えてきて……というはじまり。自分に自信のないヒロインが、イケメン男子に見初められドキドキという、定番の少女マンガ的ストーリーを進みます。




10万分の10002
なんだか突然距離が近くなったり、見つめられたり。理由もわからず、ただドキドキする莉乃。


 1巻では病気の描写は無し。その兆候は見せつつも、ごくごく普通の高校生の恋模様が描かれます。ちょっともっさりした地味ヒロインが、変な行動をして笑われたり落ち込んだりというコメディチックな展開は、「僕達は知ってしまった」でも見られたもので安心感あり。しかしながら病気という行く先が冒頭に提示されているため、光景そのものは微笑ましくも、最後に差し込まれるモノローグは切なげです。


 相手役の桐谷くんですが、剣道部で2年生ながら主将を務める実力派。短髪黒髪で爽やかさがある一方で、泣きぼくろがあるので見た目から受ける印象はどこか中性的。イケメンで女子からの人気も高いのですが、その生活は剣道中心で、家に帰ってからは道場で素振りをするという硬派な男の子です。ただ「剣道バカ」というわけではなく、好意を寄せる女子には優しく時ににこやかに接する余裕があります。このへんはまさに少女マンガのヒーローという感じですな。


10万分の10001
こういう宮坂香帆作品らしい笑えるシーン多数。今後こういう明るい描写がどうなっていくのかはわからず。


 ちなみに本作は、「あかいいと」のスピンオフになります。前作を読んでいた方は、キャラクターたちに馴染みがあることでしょう。前作を読んでおらずとも全く問題ありませんが、脇役達の背景含め知りたいという方はそちらを読むと良いのではないのかと思います。スピンオフで難病モノというと、青木琴美先生の「僕は妹に恋をする」からの「僕の初恋をキミに捧ぐ」が思い起こされますが、同じ小学館Sho-comiの流れを継ぐcheese!ですから、二匹目のドジョウ狙い感がひしひしと……。「僕君」は映画化されましたが、果たして本作はどうなるでしょうか。


【感想まとめ】
実際に病気がわかってからが勝負だと思うので、1巻時点ではフラットな状態。どんな雰囲気で描かれるのか気になります。



作品DATA
■著者:宮坂香帆
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!
■既刊1巻



ためし読み