■「マジで恋する」とか「マジで頑張る」とか、そんなのガラじゃない。幼馴染の真之介への想いもごまかして、人生も恋もイージーモードの花園佳代(高2)。そんな佳代の前に、未来から30歳の自分が現れた!?そして告げられたのは、”真之介が高校時代から付き合った子と結婚してしまう”ということと、”佳代は30歳過ぎても独身だ”という恐ろしい事実……。後悔しないために、未来を変えるには今しかない!!真之介の未来の嫁の座を奪還すべく、佳代と未来の佳代の奮闘の日々が始まる……!




 八寿子先生の新連載です。主人公の花園佳代は、見た目的には中の上というところ。ファッションやメイクで見た目を整え、モテテクも使いこなしてみたら、それなりに告白もされるようになったというチョイモテ女子です。夢中になるようなものや真面目に打ち込めるようなことも特に無く、このまま大学に行って、24~25歳ぐらいに結婚するのが妥当だろう…なんてイージーモードな将来を想像していたところ、未来からやってきたという30歳の自分から、「30歳でも独身」であるという衝撃の事実を告げられることになります。加えて「30歳にして未だ処女」であり、「今更ながら別の子と結婚した幼馴染への恋心を強く自覚した」という救いようの無さ。そんな将来を目の当たりにし、イケメンの幼馴染との距離を縮めようとしていくのですが……というドタバタコメディ。




こんな未来は聞いてない0001
 主人公の佳代はいかにも八寿子作品のヒロインというようなキャラクターで、必死に頑張れば普通に幸せになることが出来るポテンシャルを持っているのに、変な思い込みやこだわりやプライドが邪魔して、真面目に頑張る方向から逃げてしまい、挙句の果てにみじめな感じになってしまう……みたいな空回り系女子でございます。数ページ読んで「あぁ、八寿子作品だわ(ほっこり)」というような安心感が得られます。そしてひねくれていつつも変に素直なところがあるため、未来の自分からの衝撃の告白をきっかけに一生懸命行動するという。




 過去に未練を抱える未来の自分が、過去の自分の元にメッセージを……というのは昔から数多く描かれている内容で、最近では「orange」が映画化までされて話題になりましたね。あちらは「最愛の人の死」という事象に対しての極めてシリアスな物語が展開されましたが、こちらは完全にコメディに吹っ切れています。細かいことは気にせず、とにかく目の前の出来事に一生懸命になりましょうよ、というような、とにかく勢いの良い展開で読んでいてとても楽しい。ヒロインの佳代も、かなりリアクションが良いので、話が間延びせずによく転がるんですよね。


 さて、そんな佳代が挑む相手は幼馴染で正真正銘のイケメン・真之介。佳代もそこそこモテますが、こちらは文句なしにモテる男の子です。とにかくバスケが大好きで、真っ直ぐな心の持ち主。女子に優しく……みたいなプレイボーイ的な面はありませんが、ときおり優しくしてくれたり、認めるような発言をしてくれるところが素敵です。佳代は未来の自分に促されるままに、色々とアプローチをしてみると、その反応はまんざらでもなさそうだったりと、好意を明らかにせずとももう少しで手が届きそうなドキドキ感を味わうことが出来ます。こういうタイプには真正面から「好きだ」と言うのが良さそうですが、タイミングだったり恥ずかしさだったりで、なかなか好意を伝える事が出来ないのがもどかしいところ。


こんな未来は聞いてない0002
幼馴染だから気づいてくれることもある。これは好意があるからなのか、誰にもなのか。


 物語は単純に告白すれば良いというものでもなく、かなり手ごわいライバルが登場します。それがバスケ部のマネージャーなのですが、とにかく美しく広い心の持ち主で、器の小さな佳代はその聖なる光の前にやられっぱなし。自分の気持ちに素直になることと同時に、彼女との競争に勝たないといけないという、ヒロインは2つの山を超えなければいけません。特にこのマネージャー、互いがライバル関係にあると知っても決してそれが「競争」であるとは認識しない聖人っぷりで、だからこそやりにくいという。人間的に優れているのはマネージャーの方だと思うのですが、佳代の方が俄然親近感が沸きますし、実に人間臭いところが素敵。1巻にて物語は勢いよく転がり始めましたが、さてどんなところに着地するのか。しかし30歳の未来の佳代さん、こんなことせずに婚活に励んだ方が、自分自身の未来のために良いんじゃ…とか思っちゃだめですね、そうですね。



【感想まとめ】
何も考えずに気楽に楽しく読める良コメディ。恋愛要素はあるものの、トキメキ成分は現状薄め。この後話が転がると、よりそちらの要素が強くなってくるのでしょう。



作品DATA
■著者:八寿子
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ
■既刊1巻



ためし読み