■300歳とも噂される悪名高い大魔女・クインタだが、実年齢は16歳。研究成果を巡り魔法使いに狙われる、若き天才教授のボディーガードを引き受けることに。だが噂と違うクインタの秘密に教授が興味を示し……!?隠したいクインタと暴きたい教授。恋の駆け引き絡む2人の旅が始まる!!




 「八潮と三雲」や「龍の花わずらい」などを描かれている草川為先生の新連載です。4月に2巻が発売されているので全然新作でもないのですが、面白いのでご紹介です。あらすじは冒頭の通り、悪名高い大魔女・クインタと、魔法使いと共に行動をする魔角類(ホラントラー)を研究対象とする若き天才教授との旅路を描いたファンタジーラブストーリー。主人公のクインタは、世界にその名を轟かせる大魔女で、実際に超強力な魔法を使うことができるのですが、どういうわけか実年齢は16歳。無慈悲で残酷だという噂とは異なり、その中身はごく普通の女子という感じです(努めて大魔女のように振る舞おうとしますが)。そんな彼女の前に現れたのが、未発表の研究成果を狙われ魔法使いに囚われていた、若き天才教授のギルロイ。追っ手から逃げる最中、ボディーガードとして破格の報酬を提示されたクインタはその条件を呑み、共に行動することに。彼の研究成果を、国の中央にある図書館に登録しにゆくのが目的になりますが、その道中は彼を狙う敵がうじゃうじゃ…。さらには観察眼鋭いギルロイにより、クインタの秘密が徐々に明らかにされ、クインタは大慌て…というドタバタが楽しいお話です。


 落ち着いた配色の表紙に加えて、300歳の大魔女と教授なんて話もあったので、「大人な話が中心の地味めな作品なのかな…」なんて読む前は思っていたのですが、なんてことはありません、しっかりいつもの草川先生の作品でした。表紙とは対照的に、むしろ物語から受ける印象は魔法に彩られたカラフルな雰囲気。またヒロインのクインタは実年齢が16歳。一応大魔女っぽい言葉遣いなので、世に言う”ロリババア”的な雰囲気は若干あるのですが、教授がちょっと突っつけばすぐにボロが出るところなど完全に少女のそれで、まあ可愛らしいのです。結構いつも余裕が無い様子なのが素敵かわいいです。




世界で一番悪い魔女0002
なんとなくいつも余裕が無いように見えるクインタ。目元の星が特徴的です。




 一方の教授も、「教授」という肩書とは似つかわないような若い風貌。風貌だけでなく、年齢も実際にクインタに近かったり。教授というだけあって性格はかなり変わっており、「好き・嫌い」というか「興味の有・無」が非常にハッキリと出た青年です。研究者だけあってかなり鋭く、クインタのことを見抜きます。少なくともクインタに興味はあるようですが、それが果たして恋愛感情なのか、研究対象としてなのかは、そのクールな表情からはなかなか読み取ることができません。この人はクインタとは異なり常に余裕含みの表情で、焦ることなど一切無さそう。頼りになる反面、全て見透かされているような不気味さもあります。


 中央図書館に研究成果を登録するという明確なゴールが示されているため、物語はある種一直線のロールプレイングゲーム的道筋。そのシンプルさがあるからこそ、多数の脇役たちや、魔法世界ならではの設定を盛り込んでも無理なく消化できる構成になっています。様々な追っ手に加えて、行く先々で出会う人々、さらに数少ない味方……普通の人間に魔法使い、魔獣までその種類も様々で、バラエティーに富んでいます。




世界で一番悪い魔女0001
物語を彩る魔獣・ホラントラー。魔法使いのサポート的役割を果たし、魔法使いのレベルに応じてホラントラーの強さも変わってきます。クインタにつくフィーヨは最大級の大きさで、”死神の襲羽”の異名を持ちます。けれどもその強さゆえの余裕か、普段の性格は非常に穏やかで、体も小さく縮めていて可愛らしいです。鳴き声が「フィーヨ」だからフィーヨという極めて単純なネーミング。




 最終的な落とし所として、クインタと教授がくっつくという感じになると思うのですが、教授に対してはどうしても素直になれないクインタと、あんまり甘い姿は想像がつかない教授という組み合わせだけあって、甘々な関係はくっついたとしても見れなそうですね。そういえば前作の「八潮と三雲」も強い絆で結ばれつつも、その愛をあからさまに見せつけるようなことはありませんでした(三雲はちょっとあれですけど)。今回もビジネス的な関係でも信頼しあう、公私共に息のあったパートナー像を見せてくれそうで、楽しみです。また2巻の引きから、意外と大きな物語展開になる予感もしており、単純に二人の関係だけでない、話の大枠部分にも注目したいところ。ともあれ草川為先生らしい良作ファンタジーで、おすすめでございます。

 



【感想まとめ】
派手さは無くともきっちり安定して面白いファンタジー。こういう作品を読み続けられるって、幸せなことです。



作品DATA
■著者:草川為
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:LaLa
■既刊2巻