■美羽ちゃんが西条先輩と付き合い始めて、正直私はホッとした。これで蒼介を私だけのものにできると思ったから。なのに蒼介は相変わらずで、何度身体を重ねても私の名前は呼んでくれない。蒼介はいつも、誰の事を見てるの……




 神寺千寿先生によるティーンズラブ作品。男性向けの成年作品(エロ漫画)も描くし、女性向けの成年作品も描く神寺先生、最近ではバナー広告なんかでも見かけるようになりましたね。本作は女性向け18禁作品も手がけている松文館からの刊行になりますが、全年齢向けのティーンズラブ作品ということで、エロ要素は少なめ(あくまで18禁比ですけれど)。個人的には3巻が出るという噂があったり無かったりな「妹と恋なんかしたくない」の続きが読みたくて仕方なかったりするのですが、それは置いておいて、本作のご紹介をしましょう。

 

 タイトルからも分かる通り、神寺千寿先生安定の姉弟モノで、現在2巻まで刊行されています。神寺作品というとイコールでロリヒロインという印象があるのですが、本作はちょっと毛色を変えて、ちょっと気だるさをたたえたクールなお姉さん(見た目はロリっぽい)をヒロインに据えています。物語はそんな姉・美羽と、弟・蒼介を中心に、切ない四角関係が描かれます。




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美羽と蒼介。お姉さんだけあって、あまり動じずしっかり者で真面目な性格。蒼介は生意気で、ちょっと反抗的。




 美羽は高校3年生で、メインキャラ達の中では1番の年上。割りと面倒見の良いしっかり者の女性で、あまりはしゃぐこともなく落ち着いており、雰囲気的には可愛いというよりもカッコいいという感じでしょうか。そんな彼女と付き合っているのが、2年生の壱也。学年こそ2年生ですが、心臓に病気を持っており長らく入院していた関係から1年遅れで学校に通っているため、年齢的には美羽と一緒。美羽の弟である蒼介とは親友で、また売れっ子小説家という一面も持っています。とある出来事をきっかけに壱也が美羽に惚れ込み、蒼介に頼んで紹介してもらったという馴れ初めがあります。そんな二人を見て複雑な表情を浮かべるのが、蒼介。実は美羽と蒼介は連れ子同士で、血のつながりがありません。蒼介はずっと美羽に恋心を抱いており、それを明かせぬまま弟として長らく生活をしてきました。壱也を紹介しつつも後悔を抱えるというなかなか複雑な胸中。そしてそんな蒼介に想いを寄せるのが、美羽と蒼介のお隣さんで幼なじみの1年生・百華。蒼介の気が自分に無いことを知りつつも、寄っていけば受け入れてくれる蒼介に甘え、身体を重ねる日々。……こう俯瞰して見ても、なかなか複雑でドロドロな関係であることがわかるかと思います。


 明確な好意を明らかにしているのは、壱也と百華で、当の美羽と蒼介はとにかく煮えきらないというのが基本的な構図。蒼介はこれまでその想いを隠し続けてきましたが、壱也が美羽の彼氏となったことでその想いが一気に強くなり、だんだんと二人の関係性は不安定になっていきます。ふざけたふりをしてキスをしてみたり、美羽が寝ているところで身体を触ったり、果ては突っ込んでみたり(文字通り)……となかなか大胆なことまでしてみます。けれども決定打の「好き」という言葉はなかなか言えず、美羽は気持ちに気づきつつも、関係を壊さぬために頑なに気づかぬふりをするという。


 寝ているところを襲ったりするシーンなどはティーンズラブゆえのエロネタ投入という一面もあるのかもしれません。ただ普通のティーンズラブ作品からすると、エロさはかなり控えめで、あくまで各キャラクターの心情・関係を描き出すことに重きが置かれています。ゆえにかなりシリアスで重たげな雰囲気となっており、また背徳感からくる快感みたいなものも殆ど無し。ティーンズラブ作品でありながら、軽く読めないというか、なかなか気力を持っていかれる内容でございます。


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モノローグもそこそこ挿入されます。神寺千寿先生の細やかで可愛らしい絵柄がどうにも好きで、こういうページ1枚使っての大ゴマとかも、ついつい見入ってしまいます。


 頑なに蒼介を拒否する美羽ですが、その内心は明らか。けれども気持ちに素直になれないのは、単純に姉と弟だからという倫理観から来ているのではありません。美羽にとっては何よりも「家族」が大事で、再婚という背景があることからも、「もう大切な人を失うのは嫌だ」という強い想いがあります。また自分を想ってくれている壱也は、重い心臓の病を抱えており、常に死の影がちらついている状況。そんな中、彼にとっての生きる希望になっているのが美羽であるため、ここで弟に走ったら決定的な裏切りとなってしまうという、断ち切り難い楔がそこに。そういったことは考えずに気持ち優先で動く蒼介に対し、それぞれを慮って苦悩する美羽の方が、個人的には好きだし彼女視点で物語を追ってしまいます。



 

 また外の2人も、好きという想いは負けませんから、色々と一生懸命食い下がるんですよね。その真剣さがまた切ないんですよ。特に百華なんかは、一番年下なのに全然報われなくてですね…。単に「好き」「きらい」というだけでどうにか出来ない状況下で苦しみもがく、4人の関係。誰も悪くないんですけれど、関係は極めて不健全という。2巻になっても、光は見えないどころかむしろ状況は悪化しているような感すらある中で、それぞれがどのような道を選ぶのか、辛いけど続きがめちゃくちゃ気になる、そんな作品でございます。



【感想まとめ】
あんまり救いの無いお話なのですが、それゆえのシリアスさや重たさを存分に味わうことが出来る、読み応えある一作。「あーあー」言いつつ、ついついページをめくってしまいます。



作品DATA
■著者:神寺千寿
■出版社:松文館
■レーベル:ガールズポップコレクション
■掲載誌:危険恋愛
■既刊2巻