■美術教室の講師・戸張有希が殺害された。犯人はその教室に通う”天使”と呼ばれる少年だった。それから5年後、あさひは有希の弟である伊月と出会う。「天使が犯人ではない」と信じるあさひと「姉の死」の理由を知りたいと願う伊月は、ふたりで事件の真相を探ることを誓う。




 「このマンガがすごい!2016」のオンナ編で5位に入った「宇宙を駆けるよだか」の川端志季先生の新連載になります。今度も別冊マーガレットというバリバリの少女漫画誌にあって、ミステリーという変わり種で攻めてくるあたり、一貫していますね。ではでは、内容をご紹介しましょう……。


 物語の主人公は、ごく普通の女子高生の瀬名あさひ。彼女が冒頭にある事件にどう関わっているかというと、彼女も美術教室の生徒であり、そして先生を殺したとされる少年”天使”の親友だったという。天使は少年院に送られ、それっきり。1日であさひは、大切な人を2人失いました。未だその事件に囚えられている彼女は、先生の命日に墓参りに訪れ、そこで先生の弟である伊月と出会います。「姉の死の真相」を探りたいという伊月と、「本当は天使は殺してはいないのではないか」と考えるあさひは、共に協力して事件の真相を探り始めるのですが……というお話。




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未だに姉が殺されたことを引きずり続け、感情を抑えきれない伊月。職業は大学講師で、穏やかな大人イケメンと、そのスペックや良し。




 純粋に事件の真相を明かしていく話かというと当たり前ですがそうではなく、様々な思惑や出来事が起こってきます。あさひは天使を信じており、いわば天使のために行動をするのですが、姉を殺された伊月は逆に天使に少なからず良からぬ感情を抱いており、単純に「死の真相を知りたい」という理由以外にも、彼を動かしているものがあるようです。そういった互いの思惑の違いや隠し事に加え、これまで全く姿を表わすことがなかった天使が現れ、あさひの行動を妨害しようとするなど、徐々に真相が明らかになりつつも、事態は混迷を深めてゆきます。

 

 一人の死をめぐってつながってゆくミステリーというところから連想されるのは、ベツコミで連載されていた芦原妃名子「Piece」でしょうか。あちらはかなり複雑な仕掛けを用意しており、かなりの期待感があったのですが、結局まとめきることが出来ずに不完全な形で着地してしまったのが印象的。ただでさえ恋愛至上主義とも言える少女漫画という土壌で、ミステリーを描くという大変さがあるわけですが、その中でメッセージを乗せてミステリーをきっちり仕上げるのがいかに難しいのかということを感じさせられました。真面目にミステリーをしようとすると退屈になるし、難しくし過ぎると読者はついてこれなくなるし、大好物の恋愛が乗ってくる余地も少なくなってくるので、こうして考えるとミステリーって少女漫画誌でやるのってかなり高いハードルなんじゃないだろうか。ちなみに作品紹介にあたっても、あまり語りすぎるとネタバレになって台無しという側面があったりするので、レビュアー泣かせでもあるかも(笑)




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天使のことが犯人でないと思えないのは、単に仲が良かったからだけではない。先生と天使の仲は、非常に良好だった。




 本作の場合は前作よりも、恋愛要素を薄め、ミステリー要素を強めた形になっており、果たしてこれがどこまで別マの読者に受け入れられるのか注目したいところ。あまり風呂敷を広げすぎると畳めなくなりますし、正直前作も若干その気配があったのでちょっと気になるところなのですが、1巻を読んだ限りではそこまで長くは続かずにコンパクトに纏まりそうな予感。ミステリーとしても終始緊張感を保ちつつ、読ませる内容になっています。また1巻ラストでは予想もしていない展開となっており、上手いなぁ、と。今時点でどうこう言うような作品でもないですが、とりあえず2巻は買いたいなと思いました。



【感想まとめ】
要注目の作品であることは間違いないですし、事実次が読みたくて仕方ないのですが、真にオススメすべきかは2巻を読んでからでも良いような気が。少なくとも1巻時点で大絶賛しているような人がいたとしたら、私はその人信用しないです。好き嫌いもあるかと思うので、まずはためしよみからしてみるのが良いかと思います。



作品DATA
■著者:川端志季
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻



ためし読み