■京都の美大に通う高寿は、通学電車で運命の一目惚れをした。高嶺の花に見えた女性、愛美に意を決して声をかけ、交際に至る。でも彼女には驚くべき秘密があって……。「10~20代女性が読んだ文庫本」第1位、待望のコミカライズ。





 「このマンガがすごい!」では、コミックスも出しているんですけれど、今回はじめて手にとってみました。近所の書店でかなりの数平積みされていたんですが、原作がすごい人気とかなのでしょうか。Amazonで見てみると、「な行の作者」というカテゴリでベストセラー1位になっているんですけれど、そのカテゴライズだと凄いのかどうなのかよくわからんという(笑)ただしレビュー数が200を超えているので、「読まれている」という触れ込みに関してはまず間違いは無いのだろうなと思います。よくよく調べたら、100万部超えているみたいですね、すごい。原作者の七月先生は「俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件」なども手がけられており、売れっ子作家さんです。またコミカライズを担当する大谷紀子先生も、金魚すくいマンガ「すくってごらん」が話題になるなど、最近よくその名前を目にする注目の漫画家さんです。


 物語の主人公は、京都の美大でカートゥーン(風刺画みたいなやつ)を学んでいる南山高寿。ある日、電車で偶然居合わせた女性に言い知れぬ胸の高鳴りを感じた高寿は、彼女を追いかけて途中下車し、意を決して声をかけるのでした。福寿愛美と名乗るその女性は、美容師の専門学校に通っているのだそう。彼女が向かおうとしていた宝ヶ池で少しの間話し、そのまま連絡先を聞くこともなく分かれるのでした。翌日、昨日の出来事を思い返しながら動物園でデッサンをしていると、なんとそこに福寿さんが。なんとわざわざ知り合いに聞いて、高寿に会いに来てくれたというのです。それをきっかけに、やがてデートから交際へと至り、幸せいっぱいの高寿でしたが……というお話。


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舞台は京都。実在する町並みが、繊細に描かれます。京都はあまり馴染みがないのでどの程度再現されているのかわからないのですが、色々な場所が登場しますよ。


 愛美にはとある秘密があるのですが、それが何なのか、1巻時点で明言されることはありません。ただし、時折挟み込まれるちょっとした違和感やエピソード、そして何よりこの作品のタイトル自体が、”秘密”が何であるかをよく表していると言えるでしょう。なんとなく「ベンジャミン・バトン」などを想起してしまいますが、根本的な設定は異なるため、また違った描かれ方となるのでしょう。私は原作も知らないので、この物語がどういった着地をするのかは今時点で想像がつかず、どう料理するのか楽しみに思います。


 1巻だけで言えば、京都の街で男女が出会い、互いに初々しさを垂れ流しつつ幸せいっぱいな日々を送るだけというだけなんですけれど(笑)、そんな幸せの中でしっかりと彼女の”秘密”が、輪郭を浮かび上がらせることなくとも静かに影を落としており、甘いだけ・楽しいだけになっていないのが上手いところ。この見せ方は原作からなのか、大谷先生の手腕なのかは分かりませんが、「上手いなぁ」と読みながら思わされました。


明日ボクは昨日のキミとデートする
主人公の高寿は創作意欲に溢れる若者で、いかにも童貞という雰囲気漂うキャラクターに親近感を覚えます。一方の愛美は狙ったかのように黒髪ロングの清楚な美少女で、京都の町並みによく馴染みます。


 内容的には完全に恋愛に隔たったものになっているため、恋愛ものが好きな人にこそ良さそう。ミステリーというかファンタジーめいた設定はありつつも、ザ・恋愛小説、恋愛漫画と捉えて差し支え無いでしょう。童貞感溢れる男性主人公であること、またいかにもな美少女ヒロインということからも、男性向けの匂いが強いのですが、ライトノベルの香りはそこまで感じず、男女共に楽しめるんじゃないでしょうか。


 なお本作はコミカライズのほか、映画化も決定しており、福士蒼汰くん主演、ヒロインには小松菜奈さんを据えて今年の12月にロードショーを予定しているようです。キャスティングに、若干意味深で長めのタイトル、そして物語の内容からも、手堅くヒットしそうな予感がビンビンしますね。なんだか誘われて観に行くことになりそうな予感……。



【感想まとめ】
正直そこまで期待していなかったのですが、良かったです。女性向け作品というカテゴライズが正しいのかはわかりませんが、大谷紀子先生ですし。オススメです。



作品DATA
■著者:七月隆文/大谷紀子
■出版社:宝島社
■レーベル:このマンガがすごいコミックス
■掲載誌:このマンガがすごい!Web
■既刊1巻



ためし読み