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中学生が優柔不断な女性教師に恋をした -かわかみじゅんこ「中学聖日記」


■「ぼくのこと嫌いにならないでください」
黒岩晶、14歳。
”恋心”を未だ知らずの中学3年生。ここ最近、彼が目で追ってしまうのは新担任・末永聖、25歳。清純な雰囲気の女教師で、遠恋中の婚約者がいるという噂。彼女といると、他の誰にも感じたことのない感情が湧き上がる黒岩少年は、それが恋だとも分からずに何度も彼女を傷つけてしまう。
そして夏。聖への気持ちに自覚が芽生えた頃、2人にとって運命の夏休みが始まるー。
じれったいほどにときめく、11歳差の純情ラブストーリー。





 内容は冒頭でほぼ全て語られているので、補足で付け足すことは特にないです、はい。これだけ長く丁寧に書かれることってあんまりないのでありがたい。さて、本作「中学聖日記」の作者さんは、「パリパリ伝説」などを描かれているかわかみじゅんこ先生です。「パリパリ伝説」など……と書いていますが、正直かわかみじゅんこ先生って「パリパリ伝説」のイメージしかなくて、むしろ「普通の物語とか描いてたんだ!」ぐらいの勢いでございますよ。初出を見てみると、第1話は2013年の3月号で描かれているようで、年に大体4回程度掲載されて、ようやく単行本が出たようです。書き溜めて1巻2巻と連続刊行。このペースだと3巻はいつ頃に…。


 さて、かくして初めてかわかみじゅんこプレゼンツな”物語”に相対することになったのですが、こんな繊細だけれど力強いお話を描く人だったとは思わず、驚きました。ざっくり言うと、どちらも自分の行動原理をハッキリと理解できないままにぶつかり合う、優柔不断な大人と本能のままに動く子供の対峙みたいな。この組み合わせが絶妙であると共に、煮えきらない二人にイライラもする、そんな不思議な読後感のある作品です。


 主人公の黒岩晶は未だ恋心を知らない14歳。その年齢らしからぬ性格の持ち主で、あんまり浮かれない、流されない、落ち着いているけれど抜けている、そんな不思議な雰囲気を持った男の子です。一方の教師・末永聖は、見るからに美人で気弱そうな女性。遠距離恋愛中の婚約者がおり、夢だった教師にもなれて、まさに順風満帆というところですが、その頼りなげな雰囲気が教師としてはどうにも危なっかしく映り、その危うさは晶との邂逅によって決定的なものになります。


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生徒から好きだと伝えられて、「どうしたらよいかわからない」というこの優柔不断さこそがヒロイン・聖の魅力でもあり、危なっかしさでもあります。晶はここに無意識的につけこんでいくわけですが、その様子がなかなかイライラするのですよ(良い意味で)。


 最初は聖に対していらつきのような、なんとも言い表しがたい感情が湧いてくることを感じた晶ですが、紆余曲折ありそれが恋心であることを知ります。そこに至るまでの過程がなかなか過激というか、感情の赴くままに聖を引っ叩いてみたり、手を握ってみたり、「先生は教師に向いてない」と言ってみたり、もうやることが無茶苦茶なんですよ。けれどもそれらを、彼は狙ってやっているわけではなく、彼自信もわけがわからない中で行動してしまっているという危うさがあります。優柔不断で押し込まれ弱い聖はそれに大層困惑するワケですが、そんな混乱の中で思いを告げられると、なんだかどうにも気になってしまうという。描き方ひとつでトキメク場面にもなり得ると思うのですが、正直本作に限っていればむしろイラつき先行。お互い、相手のことも自分のことも考えないでいる、究極の”無防備”がどうにも心臓に悪いというか。しかしこれこそが純愛のあるべき形なのかもしれませんし、イライラしながらも、どうにも気になって目が離せないんですよね。


 メインキャラは2人ですが、脇を固めるキャラクター達もいい味出してるんです。すごい変わり者達なんですけれど、メイン2人がおかしなことになってるので、視点は極めて普通なところから話に関わってくれるので安心できるのです。そんな中、どうにも応援したくなるのが、晶のクラスメイトであり、彼にずっと想いを寄せている岩崎るな。気が強いクラスの中心人物のように見せて、大家族のお姉ちゃんというしっかり者。幾度と無く晶にそれとなく告白をするも、いつも跳ね返されてきました(しかも晶にはその自覚が無いのがもどかしい)。一番彼を好きでいるからこそ、彼の気持ちが自分に無いことはわかりきっています。けれども諦めることは出来ないし、どうにかして自分に振り向かせようとがんばる姿が、切なくいじらしいのです。だってこの子めちゃくちゃいい子なんだもの。1巻では正直ただの恋敗れる脇役ってだけのイメージだったんですけれども、2巻では物語の中心にしっかり絡みつつ、様々な想いを吐露してくるわけで、「もう晶はこの子にしちゃいなさい!」と思うと同時に「るなはこんな晶なんてひどい男やめなさい!」とも思うという、なんとも不思議な心持ちで作品を眺めることになるのでした。


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物語のキーパーソンになるであろう、るな。ほんといい子なんですよ。


 2巻までで、物語がいい形で一周した感があり、読まれるなら是非とも一気に2巻まで読んでもらいたいところ。1巻ではその得体のしれ無さばかりが印象に残りそうなのですが、2巻まで読めばようやくそれらもいい形で影を潜めるかな、と。相変わらず違和感めいた得体のしれ無さはあるのですけれど。3巻が出るまでしばらく掛かりそうな感じがありますが、楽しみに待ちたいと思います。あんまり自覚してなかったけど、年上の女性と中学生って組み合わせ、結構好きなんだな、と改めて自覚させられた作品でした。オススメです。



【感想まとめ】
1巻2巻合わせて読むのがオススメ。危うさともどかしさと言い知れぬ高揚感に溢れたエネルギー感じる一作です。



作品DATA
■著者:かわかみじゅんこ
■出版社:祥伝社
■レーベル:FC Swing
■掲載誌:フィールヤング
■既刊2巻



ためし読み

1 Comment

  1. いのうえ

    2016-11-03 at 14:34

    はじめまして。
    いつも読ませていただいています。
    中学聖日記、大変面白かったです。
    こちらの紹介文を読んで購入しようと思ったのですが、大正解でした。
    ありがとうございました。
    最近更新が少なくて寂しいです。
    また素敵なマンガの紹介お待ちしてます。

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