■恋を始める2人のもとにクリスマスがやってくる。
ふつうの恋を目指す恋子。その平穏を破ったのは学校一のモテ男・剣。その行動は恋子の事を好きなんじゃと思うことばかり。「それを恋というのでは?」と聞く恋子。おでこにキスされて平気じゃない恋子に「それって恋じゃ?」と聞く剣。恋の疑いをかけあう2人に冬がやってくる。




真夏だけど真冬

 2巻が発売されました。8月刊行ですけれど、物語は冬真っ盛り。クリスマスに大晦日からお正月と、真逆の季節がずっと描かれます。次出るときにはもう少し追いつく感じになるでしょうか(12月下旬発売)。寒い寒い冬ですが、2人の気持ちは静かに高まるばかり。冬の寒さも感じないくらい、心は火照っているようでした。発端は剣くんの不意のおでこキス。まあこんなことされて取り乱さない人なんていないわけですが、「ふつうであれ」「剣とは恋愛しない」と固く心に決めている恋子は、余計に意識をしてしまってドツボにハマるというスパイラル。彼女からしたら悪夢のような展開なのですが、読んでいるこちらとしてはニヤニヤが止まらない天国のような状況。まさか2巻の段階でここまでニヤつけるとは思っていなかったので、ありがたい限りでした。

ツンツンな恋子ちゃんとキマらない剣くんがかわいい

 自分のペースに持っていけずにドツボにハマる恋子。意識の中で剣くんが占める割合が段々と多くなっていくことを、自分自身もしっかりと自覚をしているのでした。だから剣くんと相対すると必然的にツンツンに。全編にわたってツンツンしていてとにかく可愛らしかったのですが、クリスマス一緒に過ごすことも約束していないのに、別に付き合ってもいないのに、プレゼント買っちゃうとか、かなり重症です。


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「お手頃価格で重たすぎない」とか「万人受けしそうで無難」という所に、なんとなく”普通魂”が感じられると共に、結構本気でアイテムをチョイスしているという感じがありありと伝わってきて本当に素敵。もちろん「アイツに似合いそう」という自分自身の気持ちや感性も込められており、なかなかポイントの高いプレゼントに。


 この他、いちいちラインのやりとりやスタンプのチョイスに悩むところなんかも完全に恋する乙女ですし、頭ポンポンで赤面しちゃうところとかも完全に恋する乙女ですし、無いと思いつつもお姉ちゃんと話をしている様子に軽い嫉妬心を覚えるところなんかも完全に恋する乙女ですし、とにかくその全てが恋する乙女なわけですよ。


 ここまで恋子の心を乱せるのは、剣くんの無邪気さのなせる技で、終始彼のペースで進むのですが、いざ自分のペースに持ち込んで初詣デートに行ってみたら……


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失敗の連続


 急に「いや、お前どうした?」とでも言いたくなるような、レベルダウン感。格好良くエスコートなんて出来ないし、むしろ恋子の歩くペースを把握できずに置いていってしまうという初歩的なミスまでしてしまいます。想像とは違い、そこまで頼りにならない感じが逆に身近に感じられて可愛かった。男視点からすると、むしろ安心感すらあったのですが(笑)、女性からしたらどうなんでしょうかね。なんか1巻では異様にクールな感じがありましたが、あの剣くんは何処へやら。引退した格闘家のような柔和な表情の連続で、こちらも完全に恋にやられている感じがあります。


 つまるところ、相手を探りあうような「相手の好意を感じつつも確信は持てない」という付き合う直前の状態。この状況が一番好きなんて人もいますが、その気持ちめちゃくちゃわかります。もうニヤニヤが止まらないんですもん。この勢いであれば3巻で早々に付き合ってしまいそうですが、どうにも素直じゃない恋子のことですから、きっと付き合った後もツンツンし続けること請け合いでしょう。もし付き合ったとしても、この微笑ましい関係性はそう簡単に変わることはない気がします=まだまだ楽しめる。

普通でいられない恋子ちゃんが何より普通という逆説的状況

 お母さんにそそのかされたとはいえ、着物を着て行っちゃうあたりなんかは、もう普通という一線を完全に超えていることを示していて、自分で制御が効かなくなっているなぁというところを強く印象付けられました。夏祭りで浴衣を着ていくよりも、もうちょっとハードルが高い印象がありますよね、着物って。もちろんお母さんはお店で着物を着ているわけですけれど、何より普通を求める恋子が、自分ち基準で物事を判断するわけないですから。


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 こうして普通でいられなくなっている恋子ですが、恋によって心乱され、まるで自分が自分じゃないようになってしまうって、よく考えるととっても普通なこととも言えるんですよね。むしろふつうにこだわりすぎて自分自身を制御していた方がふつうで無いわけで、逆説的ではありますが、結果的に普通になりつつあるという。剣くんも、一見パーフェクトヒューマンのように見せておいて、実際にデートをしてみたら格好悪いこともいっぱいある、ちょっと見た目の良い普通の男の子でしたし。彼女自身は気づいていませんが、着々と普通への道を歩んでいるのかもしれません。


 さて、この後の展開を「少女漫画の普通」に照らすと、ハイスペックなライバル登場とかあるわけですが、果たしてこの2人はどうなることやら。先にも書いたとおり、付き合っても付き合わなくても、二人のバランス感はそんなに崩れること無く進みそうで、しばらくはニヤニヤな状態を楽しめそうです。