■独身、彼女なし、転職活動中の花田章(34歳)は、突如母親の経営する多肉植物専門店『PAPAS』を任された。あまりに頼りない店主に多肉植物たちのとった行動は……。タニク愛が止まらない、恋あり、笑いあり、発見ありのドタバタ多肉植物育成コメディ。





 多肉植物、育ててますか?私は大学時代、植物に関わる系統の学部にいたこともあって、ここ数年かなり家の植物の数が増えてきたのですが、その一部が多肉植物です。一口に多肉植物と言ってもその種類はかなり豊富で、見た目もその生態も様々。私はセンペルビュームやサボテンなど、鉢やマグカップなどに寄せ植えして楽しんでいます。多肉植物って、水は1月に1度あげる程度で、劇的に成長する瞬間もなく、なんとなく地味なんですけれども、いつもそこにちょこんといて癒やしてくれるんですよね。過去に撮った写真と見比べてみて、意外と成長していたりすることに驚いたり。本作はそんな多肉植物愛に溢れた作者さんによる、多肉植物コメディでございます。


 多肉植物専門店の店員さんの視点から、お店の日常を描いた作品なのかと思いきや、思いっきり多肉植物とコミュニケーションを取るタイプの話でした。「コミュニケーションってどうやって?」って話になるのですが、”お花の妖精さん”なる存在に魔法をかけられて、お店の多肉植物たちが人の言葉を話し出すという、なかなかぶっ飛んだ設定。転職活動も中断してプラプラしていた主人公・花田章は、母親に言われて店番をすることになった程度の、植物に対する意識の低い人間で、そんな男に適当に世話をされたらたまらんと、植物達はスパルタで多肉植物のあれこれを教えこんでいくというお話です。


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植物に対する知識はゼロに近いため、植物自らあれこれと知識を披露していきます。エピソードはなかなか多肉植物愛に溢れた内容で、読んでいて楽しいです。


 メインの多肉植物はふたつ(ふたり?)。ひとつはエケベリア。花言葉は「たくましい」「穏やか」とのことですが、穏やかとは無縁の勢いのあるツッコミ役というところ。主に章に指導をするのが彼女(?)です。いつもむっつり怒ったふうな雰囲気を漂わせているのは、地なのか章のせいなのか…。もう一方のセダムは、うるうる瞳がかわいらしい女の子で、ひょんなことから章に恋をしてしまうという変わり者。花言葉は「乙女心」なわけですが、それを地でいくようなキャラクターです。エケベリアからすると、章とセダムの2人のお世話をしないといけないので、見るからに大変そうという。


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フォーリンラブのセダムちゃん。100円ショップでもしばしば売っているのを見かけますね。


 主人公の章は、いきなり植物がしゃべりだしても驚かないという図太い神経の持ち主。「多肉植物って話すのか」と理解していたぐらいなので、もしかしたらただのバカなのかもしれません。もちろんお店もやる気なんて無かったのですが、度々綺麗な女性が店にやってくるものだから、ついつい調子に乗ってお店を続けてしまうという。恋多き男ですが、報われることは無く、恋敗れることも多い男。植物とのやりとりや、お店での人との出会いを通し、植物と共に生きる者として、少しずつ変化を見せていきます。


 物語はそんな騒がしい植物たちとの日常的なコメディや、訪れるお客さんとの出会いを植物でサポートしてあげることで生まれる「ちょっといい話」的要素が絡まって展開。正直これを読んだところで多肉植物に関する知識が強化されるかというとそんなことはなく、専門的なテーマで描く学習教材としての意味合いは殆どありません。割りきって、植物たちを交えたにぎやかなコメディと捉えて楽しみましょう。大きな物語の流れがあるというわけでもなく、1話ごとに肩肘張らずに読むことが出来るお話です。


 これを読み終わった後、お店などでちょっと多肉植物のコーナーを覗いてみたりしてくれたら嬉しいな、とそんな一作です。作中では多肉植物が結構高いと触れられているのですが、たとえば身近なところで言えば100円ショップにもあったりするので、案外手頃だったり。本を薦めているのか、多肉植物を薦めているのかわからなくなってますが、セットで興味を持ってもらえたらと思うのです。



【感想まとめ】
最近植物愛が高まっているがゆえにこの作品を紹介したという、それだけの動機なんですけれども。やや4コマっぽさもある読みやすいコメディです。



作品DATA
■著者:よねまる
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィール
■掲載誌:FEEL FREE
■全1巻



ためし読み