■おれ(アラサー警備員)の部屋に夜な夜な現れる女子高生(セーラー服美少女)。こんな状況、ラノベかはたまたAVか!?しかもよくよく見てみれば、彼女はおれの「はじめて」の—。妄想がありあまる表題作「もしくはルーズソックス」をはじめ、事故死した女子高生 ミーツ 赤鬼(イケメン)in 地獄な「それではみなさんよい旅を」。不死身の浮気性彼氏と恋の攻防「たぶんもうゾンビ」。ワケありおじさん・夜太郎とワケありOL・朝子が織りなす大人の同居物語「希望の王国の夜と朝」—。ショートから長編まで、実力派が描き上げる渾身の全4編を収録!!





 藤緒あい先生のフィールコミックスでの単行本になります。藤緒あいって名前、フィールじゃないところで見たことがあるぞ……と思ったら、普段は小学館のCheese!などで描かれている先生で、既に単行本も複数出ていました。これまで全く手を付けておらず、本作が初めてだったのですが、引き出しの多い漫画家さんなんですね。作品集となっていますが、収録されているのは全部で4作品。内容は冒頭に記載の通りで、これ以上の補足は特に必要ないでしょう。

 
 個人的にもっとも気に入ったのが、最後に収録されている「希望の王国の夜と朝」。冒頭の通り、ワケありOLとワケありおじさんの同居生活を描いたお話です。主人公の朝子はバリバリ働くOLさんで、一人で暮らすために思い切って1LDKのマンションを買い生活をしています。台風の夜、風に飛ばされそうになったところを通りすがりのおじさんに助けられ、「危ないから家まで送っていきますよ」→「タオル貸してください」→「お風呂貸してください」でしれっと部屋に上がり込み、そのままなし崩し的にその部屋に居着かれてしまい、今に至るという状況。もちろんヒロインの朝子も拒否していないわけではありません。けれどそんなこと物ともせずに、のらりくらりと交わしてしまうおじさん・夜太郎(これも本名かよくわからない)のヒモ力の高さがすごいんです。フィクションだから良いんですけど、ともすれば本当にいそうなところが怖い(笑)


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実に飄々としており、何を言っても何をやっても屈しないというか。いつしか諦めに変わり、だんだんと心の拠り所にすらなっていく。


 ヒモ男に寄生されてしまった悲しむべき状況で、本人もそれを自覚して出てって欲しいと再三お願いをするわけですが、それでも夜太郎は出て行かず。そんな中で、いい歳の女性で仕事もしていますから、色々と悩んだり辛くなったりすることもあるわけで。そんな心の弱り目に、夜太郎はうまくフィットしてきてくれるんですよね。これもヒモのやり口と言えばそうなのかもしれませんが、この不思議で不自然な関係は、時とともにだんだんと自然なものになっていきます。収録作のうち2作はファンタジーに寄った作品で、もう1作はかなり短く、生活感に溢れた現実ベースの話は実質的に本作のみ。その年齢なりの気だるさだとか、誰にも言えない心の傷が生み出す寂しさみたいなものが独特の空気感を生み出しており、何は起こらずとも読んでしまう魅力があります。匂いが感じられる…という例えが合っているのかはわかりませんが、そんな作品です。


 他では地獄に女子高生が落ちるという「それではみなさん良い旅を」も勢いに溢れていて良かった。その他の作品がどちらかというと静かめな主人公であったので、若さと勢いに任せて突っ走る(文字通り走るんです)様子がいとをかし。地獄という設定に、その先で出会う鬼のキャラクターとか、迸るオフビート感にジョージ朝倉的な匂いを感じてしまいましたが、そういうのがお好きな人は、本作を手にとってみると良いんじゃないかと思います。深い話なのか、勢いだけのエンターテイメントなのかも判別がつかないような物語なのですが、最後にピースしながら吸い込まれていく主人公が正直すぎて、なんだか無性に笑えてきました。
 



【感想まとめ】
おじさんが出てくるお話は結構好きなのですが、藤緒あい先生の他作品を見てみるとそういった系統のお話もありそうで、ちょっと色々と手を出してみたいなと思える作品集でした。



作品DATA
■著者:藤緒あい
■出版社:祥伝社
■レーベル:FC Swing
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻



ためし読み