■目覚めると17歳のあの夏に戻っていた。
高校の同窓会に参加した栗田たまきは初恋の人・巧海に再会する。高2の夏…「あの頃、たまきが好きだった」と言い出す巧海。「別の人と付き合ってたのに?」両想いだったふたりをすれ違わせたのはひとつの嘘。そして、酔ったたまきが目覚めると……。





 「これは恋のはなし」のチカ先生の新連載です。「浅見先生の秘密」を完結させて、ARIAでは3作目になりますね。「これは恋のはなし」は設定勝ちなところがありましたが、今作もなかなかの意欲作になっているのではないでしょうか。いわゆるタイムスリップものなのですが、一人だけでなくみんなでタイムスリップするというもの。


 物語は冒頭のあらましの通り、高校の同窓会から始まります。そこで久々の再会を果たした男女3人ずつの6人は、文化祭の実行委員だったこともあり、個別に2次会を開くことに。高校時代から大きく変わった者もいれば、母になった者、未だに思いを引きずる者など様々。話をするうちに、今まで知ることのなかった秘密や裏話などが飛び出します。たまきは、その時想いを寄せていた巧海と実は両想いだったことが明らかになるのですが、友人の嘘によって結局2人は結ばれることはありませんでした。それぞれがついた嘘や、抱えた秘密により、迎えたのは後悔の残るあの夏のあの日……。その後、朝目覚めると、何故かたまきは10年前に戻っていて……というお話。



中身は27歳で、状況も嬉しいものではないですが、ドキッとするときはドキッとしてしまう、そんなラブイベントもちょこちょこと挟み込まれます。身体が戻ったからなのか、高校生の夏というシチュエーションがそうさせるのか…。


 その後まもなく、10年前に戻されたのはたまきだけでなく、同窓会の2次会に行った6人全員であることがわかります。美人で気弱なヒロイン・たまきに、その友人でバツイチ子持ちの新城優華、地味で未来では教師をしている秋田萌、エリート商社マンの巧海、サッカー部のエースで明るい性格の野上太一、そして高校時代はいじめられっ子ながらIT企業の社長として成功した庄司慶と、その性格・ポジションは多彩。面白いのは、10年前と現在で、その境遇も去ることながら、人間関係も複雑であるということ。太一と優華は高校時代付き合っていたことがあったり、萌と慶は未来で付き合っていたり、一方で優華は高校時代に巧海を好きだった時期があったり、萌は同じ実行委員だった樽丘のことが好きだったり。どうして過去に戻ったのかわからないままに、彼らは思い思いの行動に移ります。あの時の青春を取り戻そうとするものもいれば、未来を変えたくないがために、過去と同じ行動を取ろうとするものもいたり、まあ足並みは揃いません。そもそもどうすれば戻れるのかもわからないので、どうしようも無いのですが。


 ここでキーになるのは、同じ実行委員だった樽丘。同窓会に姿を見せなかったのは、10年前に事故に遭ったため。それぞれの秘密や、嘘をついたことの後悔は、この事故に結びついているのです。明確な目的は無いものの、事故に遭うであろう樽丘を救いたいというのは、全員に共通した想い。過去を変えてはいけないという想いと、一方で樽丘を救いたいという想いの狭間で、当人たちは苦しむことになります。いわゆる「Orange」的な要素が含まれた物語と言えるのですが、あちらほど純粋で真っ直ぐな青春模様はありません。姿こそ高校生ですが、中身は酸いも甘いも知った27歳で、それぞれに単純ならぬ事情や想いを抱えています。そこに青春ならではのキラキラ感は無く、まあとりあえず受ける印象は「暗い」です(笑)



後悔をなくすために過去を変えようとする者もいれば、絶対に未来は変えまいと、頑なに同じルートを辿ろうとする者もいます。全く一枚岩でない実行委員の面々を待っているのは、果たしてどんな結末でしょうか。


 全員宛てに過去に戻ってきていることを知っているかのようなメールが一斉に届いたりと、何やら黒幕が居そうな雰囲気はプンプンしているのですが、2巻時点でその正体はハッキリせず。なんとなくこいつが怪しいというのは1巻読み終わりぐらいからわかってくるのですが、核心には迫らないんですよねぇ。6人を過去に戻しての展開ということでかなり難しい物語だと思うのですが、今のところ崩れること無く進んでおり、これからも楽しみ。前作「浅見先生の秘密」がそんなに好みでなかった分、期待感は大きいです。


 またおまけとして、1巻2巻ともに「これは恋のはなし」の後日談が収録されているのですが、今回はプロポーズ編ということで、前々作ファンも注目の内容となっております。



【感想まとめ】
正直着地点が見えないので信じきれないところがあるのですが(笑)、とても続きの気になる作品です。



作品DATA
■著者:チカ
■出版社:講談社
■レーベル:KC ARIA
■掲載誌:ARIA
■既刊2巻



ためし読み