■夏休み直前。葉月は名前も知らない男子からラブレターをもらいます。彼の名前は泉周平くん。初めてのことに戸惑った葉月はその告白を断ってしまい……。「友達なら…」そんな関係で始まった夏休み。でも葉月の目は泉くんを追ってしまい……。





 増田里穂先生の初連載作です。単行本としては3冊目になるでしょうか。なんとも爽やかでオシャレな雰囲気の表紙となっていますが、中身も負けず劣らず爽やかで、めっちゃめちゃ青春の匂いがしてくる物語となっています。


 二人の出会いは、一通のラブレターから始まります。夏休み直前に、名前も知らない男の子からラブレターを貰った葉月は、当然知らない人と付き合えるわけもなく、すぐにその彼・泉くんに断りの返事をするのでした。しかしそれがきっかけとなり顔見知りになった二人は、ちょっとしたきっかけもあって「友達」になることに。友達となったことで見えてきたのは、彼の誠実さだったり、優しさであったり、その爽やかな笑顔であったり、まだ自分を好きでいるという気持ちであったり……。気づけば彼のことをなんとなく意識してしまっている葉月でしたが……という、ボーイミーツガールな青春ストーリー。





ラブレターをきっかけに彼と話すように。知らなかった面が見えてきて、いつしか自分の方が相手を想うように。




 ヒロインの葉月は、勉強よりも運動が得意という、見た目どおりの元気っ子。ただ恋愛に対しては奥手で、期待はありつつも今ひとつピンと来ていない様子です。そんな彼女になぜだか恋をした泉くんは、サッカー部に所属する男の子。優しく朗らかで、爽やか笑顔な彼は、クラスでもいじられ役の愛されキャラ。女子からの人気もそこそこあります。突然告白して葉月を困らせてしまったことを気にしているようで、友達としての付き合いを自ら提案するわけですが、葉月を好きだという気持ちを隠しきれていないところが可愛らしいです。


 葉月もそんな彼の優しさに触れ、恋心を募らせていくわけですが、全然付き合うまで行かないんですよこれが。互いに自分の気持には気づいていて、葉月に至っては相手の気持ちにだって気づいているんです。けれどもその一歩が踏み出せない。それはタイミングの問題であったり、自分の気持の問題であったり。高校生の時とか、今思えばめちゃくちゃ小さいこととかで悩んだり落ち込んだりしていたわけですが、その時を生きている当人たちからすればソレは重大な問題で。そういう感じがとても良く伝わってくるんですよね。


 本作の雰囲気を表すならば、とにかく瑞々しくて爽やかという一言に尽きます。細かい説明をせずとも、「この表紙を見てピンと来たなら大丈夫。そのまんまだから。」と自信を持って言える一作。イベント展開だけで見れば実に少女マンガ然としているのですが、どうにも他の作品とは一線を画しているような感じがあるのです。その一つが、時間の流れに対しての進展の遅さ。本作は1巻完結なんですけれど、そこには学生ならではのイベントが盛り沢山。夏休みに部活、花火大会、体育祭、図書館でのテスト勉強、文化祭……読み終わった後に振り返ってみると、これだけのイベントを1冊に詰め込むってめちゃめちゃ贅沢だなぁ、と。そしてそれだけのイベントを経ても、付き合うまでに至らない二人の歯がゆい関係。うん、素晴らしい。





個人的な瞬間最大風速は図書館でのシーン。ドキドキ感が半端なかったです。この雰囲気は流れの中で目の当たりにしないと味わえまい。なのでぜひ読んで下さい。




 どストライクな作品だったので、1巻完結というのが信じられないのですが、変に引き伸ばすぐらいであれば1冊にきっちり収まった終わってくれたほうが良いとプラスに捉えることにします。読み切り作品が収録されているわけでもなく、純粋に表題作のみをまるまる1冊楽しむことが出来るというのも良いですよね。これが初連載ということで、これから登場してくるであろう作品が非常に楽しみ。増田里穂先生を知らない人は、この機会に是非手にとって貰いたいところです。



【感想まとめ】
高校生の時、夏休みの夜に感じていた匂いが、ページから香ってくるような感覚すらありました。初めてのデートとか、懐かしいなぁ。ついこの間のような感覚でありながら、今となっては10年以上も前のこと。夢中で読み終わった後、改めて「もうあの頃には戻れないんだなぁ。貴い時間だったんだなぁ。」とセンチメンタルな気分にさせられました。



作品DATA
■著者:増田里穂
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■全1巻



ためし読み