■お祖父さんに大切に育てられた有栖川鈴は、趣味は落語で門限6時。恋愛には超鈍感という古風な女の子に。鈴は電車の中で男女問わず人気のある野宮くんと出会います。いつもやさしく接してくれる野宮くんに終始アタフタ気味の鈴。ずっと見ていたいふたりの物語をお楽しみあれ。





 「ハルキヨ」を完結させたオザキアキラ先生の新連載。改名(カタカナ表記に変えた)甲斐あって、ついに人気作家の仲間入りを果たしたオザキアキラ先生ですが、本作でその人気を確固たるものとして欲しいところですね。前作はビッグな女子とちんまい男子という色モノコンビの凸凹ラブでしたが、今回のヒロインも一風変わった色モノヒロインでございます。


 主人公の有栖川鈴は、箱入りも箱入りな娘さん。過保護な祖父の溺愛により、男の子からは距離を置かれて育ちました。学校も中等部から女子校で、門限は衝撃の18時。もちろん学校の友達の話は恋バナが中心。それゆえに恋愛というものはあることは知っていますが、当の本人は「男女の仲は清く正しくあるべき。恋愛は20歳ぐらいになってから。」という、実にお堅い感覚を持っています。そんな彼女がある日出会ったのが、となり町の男子校の生徒・野宮くん。イケメンで男女問わず人気の彼は、何を思ってか鈴に優しく思わせぶりな行動を取ってきて、鈴の心は……というラブコメ。


ヒロインの鈴は箱入り娘という設定であるのですが、「心底品の良いお嬢様」という感じではなく、どちらかというと真面目にお堅く育った委員長タイプという雰囲気があります。そのために、とっても親しみやすいです。そしてそんな彼女の相手役となる野宮くんですが、前作と異なり正統派イケメンというタイプ。





こんなことサラッと言っちゃう。でも下心が見え隠れするわけでは無いんですよねぇ。




 普通とはちょっと異なった感覚を持つ鈴に興味を持ち、積極的に鈴に近づいていくのですが、男子高校生らしからぬ落ち着きっぷりで、全然がっついてない。それでいてきっちり優しくフォローしたり、思わせぶりな行動を取ってくるものだから、なんとも掴みづらい。


 饒舌ではなくどちらかというと静かなのですが、纏う雰囲気は穏やかで優しく、クール系には分類されません。全く動じず、言うなれば常にリラックスして自然体という感じで。かといって、大人ゆえの落ち着きという感じはなく、ちゃんと同年代を感じさせるあたり。この独特の落ち着きは、見た目こそ全く違いますが、「素敵な彼氏」の桐山くんに通ずるものがあるように感じます。こっちはちょっと天然入ってますけどね。もしかしたらこれから、こういうタイプのヒーローが人気となる流れが来るのかもしれません。


 リラックス系男子とカタブツ女子の恋、しかも別の学校ということで、放っておいたら一向に話が進まなそうな組合せ。実際作中でも、数多訪れるフラグを華麗に無視するわけですが、そこは二人の脇を固める個性的な友達たちが華麗にフォローをして、推進力を生み出していきます。一旦会ってしまえば、「お前らもう付き合っちゃえよ!」てな感じにすらなる二人。そんな二人を脇役のガヤ軍団がニヤニヤ見守るという構図で、なんというか実に幸せな世界。





オザキアキラ的ガヤ軍団。このうるささ、クドさが素晴らしい。




 バックアップ体制もこんな感じなので、1巻にしてすでに盤石の関係という雰囲気すらあります。そんな中で障壁となりそうのは、双方ともに「付き合おう」みたいな発想に至らなそうなところぐらいでしょうか。もちろんこれからライバルが登場したり色々ありそうですが、当人たち独特の雰囲気だとか、友達たちのバックアップ体制だとかを考えると、もうラスボスとなるであろうお祖父ちゃんさえ突破しちゃえばいいんじゃないかと(それが一番高くて厚い壁っぽいですが)。


 まずは恋に無自覚な鈴が、どう恋を自覚して、その上でどんな様子になるのかが見所でしょうか。ただでさえ恋愛にアレルギーのある彼女が、自らの気持ちを自覚したときに、どんな反応を見せるのか、あれこれ想像が膨らんで楽しいです。落ち込むのか、慌てふためくのか、むしろ意外と素直に受け入れてしまうのか……少なくともポジティブな反応は見せなそうですよね。友達として過ごすだけでも彼女からしたら大きく譲歩したわけで、恋人までの道のりはとても遠そうです。



【感想まとめ】
メイン二人の組合せがとてもほほえましくニヤニヤ度が高いので、好き。脇役たちも良い働きをしており、読んでいて楽しく幸せな気分になれます。オススメ。



作品DATA
■著者:オザキアキラ
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻



ためし読み