■恋愛に全く興味が無い理奈は家の隣に引っ越してきた匠から、ストーカーに追われているから彼女のフリをしてほしいと頼まれます。引き受けた理奈はいきなりキスをされて激怒!ふたりは犬猿の仲になってしまいます。マイナスからスタートしたふたりの関係は!?





 「オオカミ少女と黒王子」の八田鮎子先生の新連載です。「オオカミ少女と黒王子」は実に16巻まで刊行され、実写映画化までされるという、八田鮎子先生にとってはまさに大出世作となりました。まさかここまでヒットするとは思ってもみなかったので、本当にびっくりです。そして満を持しての新作がこちら。


 主人公は花の女子高生でありながら、恋愛に興味が全くないサバサバ系女子の理奈。恋バナに花咲かせる友達たちを尻目に「恋愛なんてどーでもいい」と我が道を行っています。そんな理奈の家のお隣に引っ越してきたのが、学校でもイケメンとして人気の匠。人気者ゆえか、ストーカーチックな女の子に追われていた彼は、理奈にお願いして彼女のフリをしてもらうことに。「フリぐらいなら大した手間じゃない」と引き受けた理奈ですが、あろうことか匠は理奈にキスをしてきて、理奈は思わずビンタ!かくして最悪の出会いを果たした二人ですが、お隣同士というのもあり、その後もなんだかんだと絡むようになって…というお話。





ヒロインの理奈は、恋愛に興味が無いというよりは、好きな人が今まで出来たことがなく、ピンと来ていないという感じ。好きな人がいて当たり前という友達たちの様子を目の当たりにして、好きな人が一向に出来ずに同じ感覚を共有できないことで、コンプレックスを感じているのでした。感じるよりもまず考えてしまうようなタイプで、そんな彼女が感情のままに走り出すような時が来るのか……。




そんなところに、自信満々ガサツ勘違い系のイケメンにいきなりキスをされて、ショック療法的に恋に目覚め……るわけはありません。抱いたのはトキメキではなく怒り。とはいえそれで逆に、お互いなんでも言い合えるような関係にもなったという(あたりはキツイですが)。


 相手役となる匠は、その見た目の良さから女の子にモテまくり。キスをしたのも「俺にキスされて怒る女なんていないと思ってた」と宣う始末で、相当の自信家さんであることが窺えます。この発言もそうですが、謙遜とかそういうのとは無縁。割りと歯に衣着せぬ物言いをする気持ちのいいキャラで、意外と面倒見も良かったりします。なんというか、付き合ってみると意外と良い奴みたいなタイプで、序盤こそ険悪なムードが漂っていますが、気づけばそんなわだかまりも消えていたり。





この清々しさ。ムカつく発言は多いけれど、彼に悪気は全くないのです。




 彼の知らなかった面を知っていくことで、恋心を抱く…なんて方向に進みそうなのですが、1巻ではびっくりするぐらい進展がありません。マイナスが、1巻終わることには多少プラスになっていても良いものですが、せいぜいゼロに戻ったぐらいの感。少なくとも、ヒーローとしてトキめくことが出来るような描写は無いですし、今ひとつ魅力に乏しい。一方で、理奈は別の男性に恋心を抱き始めており、まずはそちらのルートをしばしの間進んでゆくことになりそうです。詰まるところ、長期連載を見据えてのジックリとした物語展開であり、本格的に話が動き始めるのはまだまだ先ということ。実績を残した漫画家さんゆえにこういうことができるのであり、その分しっかり練られているはずで、今後も安心して楽しめそうです。


 そのため1巻だけではいかんとも判断し難いものの、「オオカミ少女と黒王子」でもあった、相手役男子のSっぽさみたいなものはこの中でもちゃんとエッセンスとして落とし込まれており、しっかりと八田鮎子節を感じることが出来ます。既存ファンをガッチリ掴む作りだなぁと感心させられると共に、新規読者はこの1巻だけでは掴みきれないんじゃないかとも思ったり。個人的には前作同様そこまでピンとは来ておらず、ともあれ2巻を読まないことには始まらなそうなので、続きはひとまず買いというスタンスです。



【感想まとめ】
黒王子を読んだ時とさほど変わらず、個人的にはそこまでピンと来ていないというのが正直なところですが、それは同時に「前作面白かったと感じた人は今作も大丈夫」ってことだとも。とりあえず色々練られていそうなので、続き読んでみたいです。



作品DATA
■著者:八田鮎子
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻



ためし読み