■文化の中心は、バスで30分のショッピングモール。そんな田舎から東京の大学に進学した林田は、単館系のマイナー映画をこよなく愛するサブカル女子。東京で趣味を満喫している彼女だったが、ある日、SNSで知り合った文化系おじさんに襲われそうになってしまう。その危機を救ったのは、アパートの隣人の江戸川だった。自意識過剰女子とサブカル無関心男子、ふたりの向かう先は……?





 「そこをなんとか」や「路地恋花」の麻生みこと先生のKISSでの連載作です。麻生みこと先生というだけで期待大だったのですが、期待に違わぬ面白さでした。今回主人公として描かれるのは、サブカルクソ女…というと乱暴な表現かもしれませんが、マイナー映画をこよなく愛するサブカル系女子でございます。


 田舎育ちの主人公・林田。彼女を形作ったのは、イオンモールの片隅にある、あの「遊べる本屋」。大学進学と共に東京に出てきて早1年、単館系の映画館に不自由せず、SNSでは同じ趣味の人たちとつながれる都会での大学生活に、そこそこ満足しているのでした。そんなある日、SNSで出会った文化系おじさんと話弾んで会うことに。話は合う、けれどなんだろうこの話していて疲れる感じ……気づけば泥酔、さらには家に上がられそうになったところを颯爽と助けてくれたのは、隣の部屋に住む同い年ぐらいの男子・江戸川。助けてもらったのも束の間、浴びせられたのは怒涛の説教。あげくサブカル(笑)なんて笑われる羽目に。そんな林田とは正反対な彼・江戸川。互いに毛嫌いし合うような人種同士ですが、いつしか林田は彼のバイト先のバーに入り浸るようになり……というお話。





林田と江戸川。相容れないが、なんだかんだ会話は弾む。
大学のサブカル界隈とか軽く地獄な印象があるのですが、サークラだったり、知識をひけらかしてのマウンティングだったり、そしてそんな人達に冷ややかな視線を送るリア充だったりと、そこには我々が思い描くサブカル大学生の世界が期待を裏切ること無く広がっています…。素晴らしい。



 麻生みこと先生がサブカル女子を描くとは思いもしませんでした。「そこをなんとか」では楽天的で奔放なお気楽弁護士を描き、「海月と私」はサブカルとは縁遠そうな小ざっぱりしたヒロインで、「路地恋花」もカルチャーに寄ってはいますが世にいう”サブカル女子”とはちょっと異なる人々を描いている印象で。なんとなく勝手に、サブカル女子って麻生みことの描くキャラとは対極にいるようなイメージがあったんですよね。だからこのチョイスはとても意外だったのですが、蓋を開けてみれば、それでもやっぱり麻生みこと感をひしひしと感じることの出来る、軽妙なラブコメになっているわけですよ。個人的には「小路花唄」よりもこちらの方が面白く感じたぐらい。


 サブカル女子がヒロインになっていますが、サブカル女子の痛さを嗤うというような作品ではありません。メインは、サブカル女子とは相容れなそうな手厳しい大学生との恋模様にあります。いかにして林田が彼がバイトするバーに通うようになったかという話ですが、フードメニューが意外と充実していることに加えて、日々感じるストレスややるせなさみたいなものを、なんだかんだ江戸川は聞いてくれるから。江戸川からすれば、普段まず接することがないであろう面白い人種の観察ができる、格好のウォッチ対象という。まあ麻生みこと作品においてはお約束ですが、最初は恋愛のれの字もないような状況です。でもなんだか居心地が良くて、楽っていう(ただ大きな隔たりは変わらずある)。


 ヒロインの林田は、ちゃんとサブカル女子ならではの痛さが落とし込まれていて、絶妙なんですよ。そのスタイルを誇っている感は無いのですが(そういう人っているじゃないですか)、コミュニティに溶け込もうと自ら擦り寄っていくような姿勢もありません。これがサブカル女子(笑)と言われる一因にもなっているんじゃないかと思うのですが、「好きなものは好き!」という真っ直ぐな信念を持つ彼女にはそんなこと関係ありません。変えられないものは変えられないのだから。





同調とかしない。ブレない林田。




 危ない目に遭っても、江戸川のようなイケメンと近しい関係になっても、その姿勢は一貫しています。それがちょっとムカついたりするわけですが、その趣味に対する思い入れの強さは認めたい。伊達なファッションサブカル女子とは違うのですよ、こっちは筋金入りの真性です。大学にこういう子いたなぁ…似てるなぁとか思い出したわけですが、そうかあのスタイルは典型的なサブカルスタイル=量産型だったのかと今更気づくという。


 正直なところ、双方ともに相手方に擦り寄っていく風にも見えないので、そこそこ近づいたところで平行線を辿りそう。一方で長期連載って雰囲気でも無いので、どこかでガツっとターニングポイントが訪れるのでしょう(というか、1巻ラストですでにあった)。絡みさえあればいくらでも出来事が起こりそうな組合せって時点で勝ち。やあー、オススメです。



【感想まとめ】
無防備すぎる感想ですが、面白かったです。肩肘張らずに笑いながら楽しんで読めるラブコメ。



作品DATA
■著者:麻生みこと
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻



ためし読み