■不良少年・大石わたる。暴力と反抗に青春の日々を浪費していた彼はある日、運命の出会いを果たす。画面に映る強く可憐な少女。それは女児向けアニメのアリス少女隊☆シャイニーハートであった…。「俺がそんなもんにハマるわけがねぇ!」と思いつつもその魅力にどんどん惹かれていき……!?アニメのヒロインが不良の心を動かす更生コメディ!





 ここ最近はさして珍しくもなくなった「大きなお友達」 。プリキュアなんかも大人気ですよね。そんな女児向けアニメに、あろうことか不良高校生がハマってしまったという一点突破の設定で突っ走るのが本作、「スーパーヒロインボーイ」でございます。


 主人公の大石わたるは暇と力とやり場のない不満を抱えた絵に描いたような不良で、タバコは吸うわ喧嘩はするわと手のつけられない状態。そんな彼がある日、なんの気なしにつけていたテレビでやっていたのが、大人気女児向けアニメ「アリス少女隊」。普段ならすぐにチャンネルを変えるなりテレビを消すなりしているのですが、その日はなぜか面倒でそのままに。可愛い見た目ながら的に立ち向かい倒すその強さや、仲間を想うその優しさに不意に心打たれ、無意識のうちに涙を流していたのでした。心では惹かれつつも、こんなものにハマる自分なんてありえないと、「つまらなかった」と言って聞かせるわたる。けれども気がつけばアリス少女隊のことを考えてしまい、ついつい翌週も放送を見てしまうのでした……。





自分がハマりつつあるということに対しては否定的。テンプレート的にはツンデレ的態度なんですが、ツンする相手がいないっていう。




 口では「つまらない」「くだらない」と言いつつも、あれこれ理由をつけては再放送までしっかりチェックし、食玩を集め、さらには近所で催されるショーに足を運んだりと、着々と大きなお友達への道をかけあがるわたる。どんどんどツボにハマっていく様子が面白いのです。一口にファンと言っても、今はあらゆる方面からグッズや情報が入手を促してくる状況。モノによって、その入手の難易度も変わってくるのです。放送を見るだけならばテレビ前で一人で居れば良いのですから簡単なもの。しかし一度映画ともなると、多数いる女児達に混ざって見なければいけません。一気にそのハードルは上がるのです。食玩を買うにしてもコンビニの店員を突破しないといけませんし、過去のシリーズを見るためにはレンタルショップの店員を突破せねばなりません。ネットで入手とか無いです。なぜから最も縁遠いところにいる不良だから。そういった知恵は働かないのですよ。


 一人でこそこそやっててもそれなりに面白いのですが、それだけだと話は広がっていきません。そこで投入されるのが、大きなお友だち勢。まずは彼の学校の教師でイケメンの内海。わたるに生活指導をしている中で、ポケットから映画の来場特典品が出てきたことで、彼が大きなお友だちであることが発覚。そしてそれにつけこもうとペラペラと知っている情報を話してしまったことで、わたるも自爆。以来、大きなお友達仲間として情報交換や感想の語り合い(内海が一方的に喋る)をするようになるのでした。こちらは筋金入りのオタクという感じで、初期シリーズからの古参ファン。不良と教師ということもあり、その作品の楽しみ方もわたるとは異なるのですが、内海からしたら数少ないオタク仲間ということもあり、よりディープな世界へと彼を引きずりこもうとするのです。





教師と二人で休日日中の映画館へ突撃。「クソダサすぎるから音源買うぜ」。気づけば音源買うことへの抵抗はなくなっているという。




 もう一人は同じく不良の南条。他校の不良で、喧嘩で倒して以来何かと突っかかってくるやつなのですが、妹がおりその子がアリス少女隊のファンという。妹思いの彼は、彼女のためにあれこれとグッズを買ったりしてあげているという。こちらはオタクとは異なり完全な一般人系のシスコン。アリス少女隊の知識に乏しく、間違えてグッズを買ってしまったところをわたるが「間違えてる」と指摘してあげたことをきっかけに仲良しに。なにかとアリス少女隊が絡むようになり、そのたびにわたるはボロを出しそうになるという流れ。


 完全に出オチの作品かと思いきや、意外とその設定一つで踏ん張っています。巻数まで付けて続けるという強気モードですが、その判断にも納得の面白さ。狭い世界で閉じているのではなく、人間関係を広げつつ物語が外に外に広がっているのが実に好印象です。正直終着点が見えませんが、更生して終わりでも良し、見た目はそのままにガチオタに倒れても良し、仲間たちとの絆エンドでも良し、向かう先や落とし所は如何ようにも出来そうですね。


 私も娘が生まれたばかりなのですが、将来的に一緒に映画を観に行ったりさせられるのでしょう。意外とハマってしまったらどうしようとか思っているのですが、こんなやり方があるのかと参考にさせてもらってます(なる気マンマン)。



【感想まとめ】
題材勝ちな感。不良が女児向けアニメにハマるというそれ以上でもそれ以下でもないのですが、その設定でしっかり面白くなってます。楽しく気軽に読めるコメディ。



作品DATA
■著者:ぱらり
■出版社:実業之日本社
■レーベル:コミックリュエル
■掲載誌:リュエル
■既刊1巻



ためし読み