■9巻発売、完結しました。 あの日踏み出した一歩が、私をこんなにも変えてくれるなんて……。 受験科に進級した千歳と樹。厳しい授業を、2人は支えあって乗り越えていく!そして千歳は、進路面談をきっかけに金沢の美大を意識し始める。今まで「やりたいこと」がなかった樹も、千歳の影響で少しずつ変化が……。でも、そんな2人にはまだまだ色々なカベがあって……!?


 

 

ほぼ完璧な完結だったんじゃないでしょうか

 9巻にして完結しました。結構ラスト読んで「あー、こうきたか。こっちのがよかったな。」とか思うこともしばしばなんですが、本作に関してはほぼ思い描いていた通りというか、純粋に良かったなと思えるラストでした。変にひねることも無く、恐らく多くの人が思い描いていた過程・結末なんじゃないでしょうか。着地がきれいすぎて、特に書くこともないかなってぐらいなんですが(笑)




千歳のエピソードは地味になっちゃうよね

 物語的には、受験科に進級することを決意して、いよいよ美大お受験モードへと突入というフェーズ。キャンパス見学を経て、千歳は迷いなく行先を決めるも、合格には程遠い技術の壁に苦しみ、一方の樹は技術は申し分ないものの、自分のやりたいことで悩むという、互いに壁にぶち当たるという状況。最終巻の割には、千歳についてはそこまで大きな波乱というのは無くて、こうただただ頑張るだけっていう割とシンプルな壁となっていました。恋愛とかと違って、気持ち一つで劇的に変わったりするものではないので、どうしても絵的には地味になりがちなんですが、そこは致し方ないところ。  努力がなかなか報われないところもリアルでしたが、くじけそうになるところを、好きな人と一緒に乗り越えるというところはいかにも少女漫画的でした。美大受験というと、最近では『ブルーピリオド』で、ものすごい熱量で美大受験に立ち向かう姿が描かれていますが、本作に関してはそういう深い部分までの言及は無し。というか本作は美大受験漫画ではないので、あくまで恋愛漫画なので、このぐらいのバランス感で良いのですよ。むしろ『ブルーピリオド』でみられる努力の部分を、本作に補完する形で見ると、より味わい深さが増すんじゃないでしょうか。




樹のパフォーマンスは完結にふさわしいものだったと思います

 「とにかく頑張る」な千歳に対して、樹は自分がどういうものを創りたいのかというところで悩み、立ち止まってしまいます。そうして試行錯誤を重ねる中、学祭でのパフォーマンスでのアレですよ。ここもやっぱり少女漫画的といいますか。千歳側の地味さを補って余りある、激アマ案件。




自分やりたいことを手法として試すってところはもちろん、割と恥ずかしいことを避けてきたであろう樹が、ともすればいじられそうなパフォーマンスをぶつけてきたってのが意外でしたし、彼の劇的な変化が見て取れるシーンとなっていました。

  また物語的にも、単純に「愛する人の姿を描いた」って事実だけではなくて、これまで造りものの笑顔という仮面を被って生きてきた千歳の顔を、樹のターニングポイントとなるパフォーマンスの題材として用いたというところに、一種の象徴的なアイコンとしての意味合いを強く感じさせる一幕でもありました。物語的にはここで完結というか、出来上がった感がありましたね。




あと、この心情を素直に吐露する姿もかわいかった。確かに振り返ると、これまでこと美術に関しては強気というか、樹>千歳という関係性が明確で、それがここにきてようやく対等になったような印象。スキルでの差はあれど、互いに弱みは持っていて、支えあいながら乗り越えないといけないという形。



遠距離恋愛も甘く乗り越えそう

 さて、千歳が目指した金沢の美大・金沢美術工芸大学ですが、自分の中では東村アキコ先生のイメージしかないです。漫画アニメ業界でいうと、細田守さんとか出ているのですが、やはり『かくかくしかじか』のイメージが強い。あの中ではしょうもない(けれども愛すべき)学生生活が描かれていましたが、千歳がそんな中に身を投じて、きちんと進んでいくことができるのか少し不安になったのは、ここだけの話。  東京と金沢で、かなりの遠距離恋愛になりますが、今は北陸新幹線も通っていて、東京から一本で行けるんですもんね。良い時代です。まぁ大学生ですから、そうそう新幹線には乗れず、もっぱら夜行バスだったりするんでしょうが、駆けつけようと思えばすぐに飛んでいけるという安心感って大事。そういった時代背景も味方につけて、きっと明るい未来を切り開いていくんだろうなぁというのが、最後からも感じられてよかったです。きっとどこかで、大学生活を描いた読み切りとかが描かれて、なんかの単行本に収録されたりするんでしょうが、ガムシロ直接飲んでるような激甘な感じを期待したいところ。リア充っぷりに胸焼けするぐらいの、極上の幸せ模様を是非とも堪能したいところです。芥先生、待ってます。