■1・2巻同時発売です。
半人半獣の希少種…亜人。彼らは人間に虐げられ、支配されていた。亜人の少女・藍月は男と偽り、第四皇子・天耀の”従獣”として皇宮に参内する。すべては弟の仇……天耀を暗殺するために。しかし藍月が見たのは、天耀の意外な素顔で……!美しき獣が世界に挑む、新幻想叙事詩、開幕!!





 『水神の生贄』『黎明のアルカナ』の藤間麗先生の新連載です。タイトルからもわかる通り、今回もがっつりファンタジーです。しかも今作は、『黎明のアルカナ』と世界観を受け継ぐ物語ということで、半人半獣の亜人が登場しますよ。


 亜人は様々な能力が人間より秀でており、また中にはアルカナという特殊能力を持つ者までもいたりするのですが、いかんせん数が少なく、人間から虐げられ、奴隷のように扱われています。そんな亜人にとって最大級の出世とも言えるのが、その能力を買われて、皇室の王子の”従獣”となって皇宮に参内すること。そんな中、第四皇子・天耀の従獣となったのが、本作の主人公・藍月。通常の従獣はアルカナを持っているものの、藍月はアルカナ持ちではない普通の亜人。しかしその圧倒的な戦闘能力を買われ、異例の抜擢で従獣となったのでした。


 藍月の目的は、かつて天耀の従獣として皇宮に連れていかれ無残に殺された弟の仇を討つこと。しかも性別を偽っているということで、それらの秘密が明らかになればその命はありません。まさに命を賭しての復讐。虎視眈々と天耀の命を狙っていたものの、ある日天耀が、何者かに従獣を殺されてしまったことを強く悔いていることを、知ります。思い描いていた人物とは異なり、心優しく、亜人に対しても分け隔てなく向き合う誠実さを持ち合わせる天耀に、やがて心許してゆく藍月ですが……というストーリー。





かたき討ちの相手の元に潜り込んだと思いきや、天耀もまた守るべき従獣を失ってしまった苦しみ・悲しみに苛まれていることを知り、かたき討ちはふりだしへと戻る。




 結構入り組んだ設定となっているのですが、『黎明のアルカナ』を読んでいればたぶんそんなに引っかかることなく受け入れられる内容になっていると思いますし、たぶん前提知識なくても大丈夫なレベル。ここまで1話~2話ぐらいに詰め込まれているのですが、まったく無理が無いし、スッと頭に入ってくるので、ストーリーに集中できるようになっています。たぶん、物語の背景をより受け入れやすくしてもらうための1巻2巻同時発売なんでしょうが、たぶん1巻だけでも大丈夫なんじゃないかな。ここまで分かりやすく、かつしっかりと練り込まれている作品ってそこまで多くないと思いますし、この辺はさすが藤間麗先生といったところ。


 物語ですが、人間を信用しきれない藍月と天耀とのつながりが深まっていくというところが一つの軸。2巻時点ではあくまで人間と亜人、主君と従者という関係の中で物語が進んでいきますが、もうちょっと進むと恋愛的な要素も出てくるのかもしれません(まあまずは自分が女であるということを明かさねばならない訳ですが)。そんな中、ふたりの関係に口出しをしてくるのが、天耀の護衛である太博。クールで生真面目な性格である彼も、大らかな天耀とはタイプは違えど、色々と藍月を気にかけており、疑いの目を向けつつもたぶんこれから愛だの恋だのしそうで良いですね。とりあえず仕事できそうなところとか、損な役回りさせられそうなところとか含めて、良いかませ犬ポジションになりそうです。





天耀は信頼に足る人間であると感じつつも、どうしても人間を信じることができない藍月。そんな藍月を、真っ直ぐに受け入れる天耀の心の広さたるや。戦闘能力では到底藍月に敵いませんが、心のレベルがあるとしたら、藍月は天耀の足元にも及びません。心の未熟さを、天耀が補うという、良い関係性が築かれていきます。




 これに加えてもう一つの軸になるのが、藍月の弟を殺した犯人捜しです。藍月の事情を知った天耀もそれに協力をするのですが、疑われるのはアルカナ持ちの亜人ということで、他の王子たちとその従獣を相手にしなければなりません。会うことすらなかなか難しい中で、天耀の手ほどきによって少しずつ他の王子たちの素性や背景を知っていくことになります。


 というわけで、人間ドラマあり、サスペンスあり、バトルあり、恋愛あり(の予定)と、様々な要素がたくさんに詰まった本格派ファンタジー。正直めちゃめちゃ面白いです。『黎明のアルカナ』も初めて読んだときはなかなか衝撃的だったのですが(Cheeseでファンタジーということで)、本作は純粋に物語として面白い。ファンタジーとしても、人間ドラマとしても、土台がしっかりしている感がひしひしと伝わってきて期待感が高まりまくりでございますよ。



【感想まとめ】
これは期待感しかない。全力でオススメしたい一作です。



作品DATA
■著者:藤間麗
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:Cheese!
■既刊2巻



ためし読み