子供の頃に憧れた「美少女戦士」。彼女たちって、歳をとったらどうなるの……??そんな少女たちが大人になった、その後を描く引退美少女戦士の裏方コメディ!
「ギャルジャポン」や「セーラーズエンジェル」を描かれているシタラマサコ先生のプリンセスGOLDでの連載作。「ギャルジャポン」に加えて、あの「おそ松さん」のコミカライズを手がけ、本作と合わせて3冊同時発売というなかなか見られない集中刊行の様相を呈しています。ギャグ作品って単行本発売のペースがすごく遅いので、こうして発売タイミングを合わせて……というのはとっても珍しいな、と。
で、肝心の中身なんですが、引退した美少女戦士のその後を描いたコメディ。街中に普通に怪人が現れる世界で、それらを退治する仕事をしている美少女戦士。一見単独で行動しているように映るのですが、実はその裏には、彼女の戦いを支える組織と、その組織で働く裏方たちがたくさんいるのです。15歳から20歳まで美少女戦士・キューティシャインとして活躍した一ノ瀬ひかりは、年齢により引退をすることになり、その後の進路として裏方の職を司令官に斡旋されます。「現役の時に支えてもらった分、今度は私が……!」と息巻いて仕事に取り掛かるも、指導係としてついたのは、30歳にして独身をこじらせている元美少女戦士の先輩……。勢いに飲まれるがまま、リボンを引きちぎられて、気づけば地味な制服姿に。新しい武器の開発テストや、引退したパートナー(動物)の世話、現役美少女戦士のお世話と、昨日までのきらびやかな世界がウソのような、地味で辛い仕事の連続に、ひかりは悪戦苦闘し……というお話。
クレーム処理も裏方の仕事。
主人公は表紙にも描かれている一ノ瀬ひかりなんですけれど、話が進むごとにむしろ中心で描かれるのは元美少女戦士の先輩・満島さんへと変わっていきます。元美少女戦士ながら、気づけば30歳で独身。お局っぽい雰囲気も纏いつつ、ひかりを厳しく指導します。クレーム処理だの書類のコピーだのするわけですが、その内容は完全にOLのそれ。仕事終わりに呑みに行き、新入りの戦士のことを愚痴る姿なんかは、社会人ならではの悲哀に溢れていて、親近感を覚えます。美少女戦士という素材ではあるんですけれども、描かれるのは完全にOLもののギャグ漫画という感じで、ターゲット層は完全にアラサーど真ん中。今もプリキュアが人気ですが、そもそも「美少女戦士」というワードで連想されるのはセーラームーンで、それに触れていた人たち向けに描かれているのかな、と思わせます。
裏方ゆえに理不尽の連続という、ギャグを生み出すには事欠かない環境であるのに加え、美少女戦士の組織という正直どうにでも出来そうな自由度の高い舞台であるため、物語は本当に好き勝手な方向に転がる印象。自由で素晴らしいです。笑いを生み出す要素は様々ありますが、後任の美少女戦士が塩対応ならぬ塩戦闘でやる気無さげで手を焼いたり、元パートナーの喋れる動物達との引退したからこそのあけっぴろげな本音トークであったり、さらにはタキシード仮面的な人に再開して恋に燃えるも空回りしたりと、まあ色々引き出しはあります。そしてその殆どが、満島さん起点でのネタってのが。完全にヒロインが食われているんですが、まあそれだけ魅力的なキャラクターだということでしょう。元美少女戦士だけあって美人なだけに、残念さが際立つんですよね。私も大好きです。
ジェネレーションギャップ的ネタ。言ってもひかりは20歳なので、30歳の満島さんとは相応に世代ギャップがあるのです。
巻数がついていないので、1巻完結なんでしょうかね。帯には「大人気連載中」の文字があるのでわからないのですが、個人的にはもっと読みたいなぁという思いが強いです。出オチ的なギャグ漫画は後半息切れしがちなのですが、良いタイミングで新キャラを投入するなど、本作については全く勢いが落ちる印象がありませんでした。ネタが自分に直撃だったというのもあるのですが、「セーラーズエンジェル」や「ギャルジャポン」より本作の方が好みかも。もし2巻が出るようであれば嬉しいですね。
【感想まとめ】
好き放題やってるんですが、どれもツボで面白かったです。気張らず読める、アラサーな方におすすめしたいギャグコメディです。おすすめ。
作品DATA
■著者:シタラマサコ
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセス
■掲載誌:プリンセスGOLD
■既刊1巻
2016-06-09 at 10:53
初巻に番号振らないのは秋田書店の常套手段です。売り上げ良ければ次が出ます。悪ければ出ません。